3.11に学ぶ の商品レビュー
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タイトルや装丁は一般書の態だがおそらく一般人には理解は困難。著者は技術史研究者、とのことである。 技術を芸術に連ねる捉え方はなるほどと思った。 コラムという形で挟まれている「空気の研究」と川柳に著者の複雑な思いが込められているようである。空気に支配された決定がなされるとき、当事者を批判するのは当たらない。現場の当事者一人一人はいたって誠実で真摯に仕事に取り組んでいることを著者は実感しているからだろう。そこが空気の空気たるゆえんだというのは確かにそうだ。 P11 科学によって証明される自然の法則を、我々が実生活に有用なものとして活用するのが技術であるといえよう。この有用性が、現代では経済合理性として技術に「より良いものをより安く」と要求している。もちろん技術の中でも芸術の域まで高められたものは、安ければよいというわけではないから、その時代の味わいを残して古典的な存在になりうる。しかし「生産的実践」に適用される技術は、常に革新が求められている。 P123 なるべく自然の地形を変えずに行う開発が「ローインパクトディベロップメント」である。 P208 「例えば系統運用面に力を入れて設備にあまり金をかけない考え方、逆に金をかけてもしっかりした設備を作り、あまり器用な系統運用は避けるという考え方など、どの考えがよい、どの考えが悪いと言えない。【中略】最終的には中心となる人のものの考え方の移管によって決められる。その意味で「系統技術は芸術とも言うべきものである」(関根泰次氏) こうして電力系統構成の中に見られる特異性と共通性を分析する中から、自然災害を含む二十一世紀の新たな状況に対応する柔軟なシステムが作り出され、現在の混迷と大敗という矛盾が止揚されるであろう。これが芸術を含む技術によって二十一世紀を人類絶滅の始まりとしないための方策である。
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