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田辺聖子 十八歳の日の記録 の商品レビュー

4.2

9件のお客様レビュー

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2023/12/18

戦時中の女学生の日々を淡々と綴られている点がよい。 学校生活、家族の話、戦況について、ひとりの人間が見ていたものをそのまま書かれている。田辺聖子は自身の女学生時代を振り返り「軍国少女」だといっていたが、日記を読んでいると共感できる部分もおおいにあり、当時の人々に少し親近感を覚えた...

戦時中の女学生の日々を淡々と綴られている点がよい。 学校生活、家族の話、戦況について、ひとりの人間が見ていたものをそのまま書かれている。田辺聖子は自身の女学生時代を振り返り「軍国少女」だといっていたが、日記を読んでいると共感できる部分もおおいにあり、当時の人々に少し親近感を覚えた。 ミリタリズムとは分かり合えないと感じていたところ、元々人の生活の上にある思想が重なるのであり、まったく話の通じない存在ではないんだと感じる。 ほか、国防にあたっていた内地の搭乗員の話と合致するできごとがあり、軍人側の状況と市井の人の状況を知ることができた。

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2022/12/11

実はぱらぱら見て、これから返却するところ。面白いとか興味深いの前に、これは、田辺さんの文学を研究するにあたっての、貴重な資料として、大変価値がある。ヒット作も多く、重厚な古典文学論から、今読んでも色あせない恋愛小説まで、とにかく文学というのは、読まれなくては意味がない。面白くて、...

実はぱらぱら見て、これから返却するところ。面白いとか興味深いの前に、これは、田辺さんの文学を研究するにあたっての、貴重な資料として、大変価値がある。ヒット作も多く、重厚な古典文学論から、今読んでも色あせない恋愛小説まで、とにかく文学というのは、読まれなくては意味がない。面白くて、その先に滋味がなくては、といった感じだった作家さんだが、若き日からこんなにもよく『ものを考える』人だったのかと、その早熟さに驚いてしまった。若書きの少女の日記、というのとは、ぜんぜん違う。時代の生活記録としても面白いし、集中して読みたい。気分的にこちらが、のどかな週末の読書を求めていたものだから、今ではないな、ということで中断した。

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2022/09/28

第二次世界大戦の渦中の中での日記であり、どのように戦争が市民の中に存在し、一般の人がどんな思いをしていたのかの一面がとらえられる貴重な本だと思う。今でこそヒトラーの行動が正当化されることはないが、この当時は日本との同盟国であったドイツの君主として好意的な捉え方が読み取れ、かえって...

第二次世界大戦の渦中の中での日記であり、どのように戦争が市民の中に存在し、一般の人がどんな思いをしていたのかの一面がとらえられる貴重な本だと思う。今でこそヒトラーの行動が正当化されることはないが、この当時は日本との同盟国であったドイツの君主として好意的な捉え方が読み取れ、かえって当時はどれだけの真実の情報を知ることができていたのだろうかと思った。この本を読んだことがきっかけで日本の近代史や、当時生きていた人の思いなどにも関心が深くなった。

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2022/09/07

当時18歳の少女が書いたとは思えない、とんでもない文章力! クラスでも1番をめざし、小説家になるという情熱を感じることごできた。 日記で、生き生きとした学校生活をえがいており、自分も聖子さんの学友でその場にいるかのように感じた。 個性がある学友の描写も見事で、日記とは思えない。巻...

当時18歳の少女が書いたとは思えない、とんでもない文章力! クラスでも1番をめざし、小説家になるという情熱を感じることごできた。 日記で、生き生きとした学校生活をえがいており、自分も聖子さんの学友でその場にいるかのように感じた。 個性がある学友の描写も見事で、日記とは思えない。巻末にある、短編も当時書かれたとのことで、未完で気になるのもありました。

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2022/04/14

2022年3月 何気ない日々で暢気な調子の部分もある。若者らしい理想や苛立ちもある。 普通の日記ではあるけれど、当時から小説家を目指していた18歳の田辺聖子の文章力はすごい。 あと普通の日記だから戦争の被害が日常に登場する生々しさを感じた。土の中から空襲で亡くなった人の死体が出て...

2022年3月 何気ない日々で暢気な調子の部分もある。若者らしい理想や苛立ちもある。 普通の日記ではあるけれど、当時から小説家を目指していた18歳の田辺聖子の文章力はすごい。 あと普通の日記だから戦争の被害が日常に登場する生々しさを感じた。土の中から空襲で亡くなった人の死体が出てきたとか。

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2022/04/03

向学心に燃えている若いお聖さん。 英語やドイツ語も学ぼうと意欲的。 ロマンチックで、外国の少女文学も好きで、綺麗なものが好きで。。。 重苦しい戦争のことはアンネの日記を思い出した。 アンネもお聖さんも将来は物書きになりたいってのが共通点。 2人とも死後の発表だったよね。 お聖さ...

向学心に燃えている若いお聖さん。 英語やドイツ語も学ぼうと意欲的。 ロマンチックで、外国の少女文学も好きで、綺麗なものが好きで。。。 重苦しい戦争のことはアンネの日記を思い出した。 アンネもお聖さんも将来は物書きになりたいってのが共通点。 2人とも死後の発表だったよね。 お聖さんって、この日記をみつけられて、だされたことはどう思うんだろう、なんて思ったり。。。 私は明るい作品が好みなので、これは飛ばし読みしてしまった。

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2022/01/31

田辺聖子の戦中日記が見つかったと発表されたのは、2021年6月のこと。遺族が田辺の家の片づけをしているときに発見された。日記は田辺が17歳になったばかりの1945年4月1日から始まり、樟蔭女子専門学校を卒業する47年3月10日までの日々を綴る。日記の一部は、その年、文藝春秋の7月...

田辺聖子の戦中日記が見つかったと発表されたのは、2021年6月のこと。遺族が田辺の家の片づけをしているときに発見された。日記は田辺が17歳になったばかりの1945年4月1日から始まり、樟蔭女子専門学校を卒業する47年3月10日までの日々を綴る。日記の一部は、その年、文藝春秋の7月号で公開された。日記中に記載された未発表短編・中編小説とともに、日記全文を書籍化したのが本書である。 樟蔭は美しい学校だったという。だが、田辺が意気揚々と入学したその校舎で勉強できたのは1年足らず。1年生の正月明けには学徒動員が始まり、郡是(現グンゼ)の工場で飛行機の部品を作る作業に従事することになる。やがて大阪は大規模な空襲にたびたび見舞われ、6月、写真館であった田辺の家も焼かれる。そして8月の終戦。ハイカラで鷹揚だった父は、戦時中のストレスもあったのか、病に倒れ、その年の暮れに亡くなる。住まいを転々とし、食べる物も満足にない中、一家は必死に暮らしをつなぎ、田辺はなんとか卒業まで漕ぎつける。その後は、文学への夢を抱きつつ、ひとまず、家のため、事務員として就職するのだ。 そんな日々である。 非常に大変だっただろうとは思うのだが、日記は全体としては闊達で若さを感じさせる。 学校でのちょっとした出来事、父や母への思春期らしい反発や不満、親戚や近所の人への冷静な観察眼、そして若者らしいまっすぐな希望とその裏返しの不安。 当時、田辺が通った国文科というのは花形で、優等生が行く学科だったらしい。国文学を学ぶことへの強い自負心が滲む。田辺は相当に努力家かつ優秀であり、クラスの首席になったことも綴られる。そのうれしさを記すと同時に、それを喜ぶ自分を外から冷ややかに見ているもう1人も自分もいて、後に作家となる「目」はもう宿っていたのだなと思わせる。 この箇所だけではなく、全体に観察眼の鋭さをうかがわせる記述は多く、疎開させた荷物や食料を勝手に使ったり消費したりしてしまう親戚への辛辣さはなかなかのものだ。思春期の潔癖さに留まらない洞察を感じさせる。 屈託もあり、懊悩もある。少女は、自分は小説家になれるだろうかとまだ見ぬ未来を憂う。 しかし、彼女は決めるのだ。勉強を続けて小説を書こうと。 あらゆる真実と誠意と純情をこめて、私は果てしれぬあこがれへ、心を飛揚させる。何かしら漠々とした、とりとめのない楽しさが待っていそうな翌、二十歳の年・・・・・・。 若さが持つ、この輝かしさ! 日々の細々とした出来事も興味深いが、とりわけ印象的なのは、家が焼けたその日、終戦の日、父が亡くなった日である。 空襲の日、田辺は学校にいた。普段は鉄道で通っていたが、空襲のためにあちこち不通となっている。仕方なく途中からは歩いて帰る。 第百生命は全滅だ。きれに中が抜けている。閉じたガラス窓からプゥーと黒煙がふき出している。 電柱が燃えきれず、さながら花火のごとく火花を散らしている。 熱気のため、かげろうのようなものがゆらゆらと焼けあとにこめている 焼けたところばかりではなく、まったく安全で空襲を受けた様子もない地区もある。不安と安堵を行ったり来たりしながら、歩を進める。だが田辺の家は燃えていた。迎えた父と母の様子。自分の受け答え。周囲の有様。 自身、大きなショックを受けながらも、観察眼は曇ることはなかったのだ。 終戦の日の記述はいささか仰々しい。 他の箇所とは文体も異なり、漢語が多用され、悲憤慷慨いかばかりといった風である。敗戦を嘆く短歌が十数首並ぶ。 軍国少女だったというその片鱗が窺える。しかし、その心情に嘘はなかったのだろうが、それが生来の気質なのかというと、少々違うような印象を受ける。いや、生まれつきの軍国少女ってどんなのだよ、と聞かれるとよくわからないのだが、やはり元から神国日本等と思っていたというより、周囲の空気に流されているように見えるのだ。まっすぐで純な若さを絡めとってしまう「空気」って何なのだろうなと考えさせられる。 日記に含まれていた小説の中では、無題の中編(未完)が抜群におもしろい。学園物の群像劇で、田辺の級友たち(自身を含む)がモデルとなっているのだろうが、人物が描き分けられ、それぞれ生き生きと作中を跳ね回っている。実体験を再構成したようなエピソードも起伏に富んでおもしろい。 日記の中では、国文学をもっと研究したいというような記述もあるのだが、やはりこの人は生活者の視点からの小説を書く天性の才があったのではないか。 全体に丁寧な編集。適宜、文中に編集者による注が入り、時代背景への理解を深める。梯久美子の解説付き。年譜もおもしろく読んだが、古典に関する著作への言及がもう少しあってもよいのではないかと思った。

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2022/01/06

2019年の6月6日に亡くなった田辺聖子さんのご遺族が、遺品を整理している時に発見したという、聖子さんの昭和20年4月1日から、昭和22年3月4日までの日記。 樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大学)在学中の満十七歳から、卒業までである。 学徒動員で工場にて飛行機の部品を作り、...

2019年の6月6日に亡くなった田辺聖子さんのご遺族が、遺品を整理している時に発見したという、聖子さんの昭和20年4月1日から、昭和22年3月4日までの日記。 樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大学)在学中の満十七歳から、卒業までである。 学徒動員で工場にて飛行機の部品を作り、大阪大空襲では家を焼かれた。 終戦の年には父を病で亡くしている。 激動の青春時代だった。 勉学への熱情と、国に尽くしたい気持ちの間で揺れ、戦争の中で青春が費やされていくことに焦燥し。 かなりの軍国少女でもあった。 勇ましいことも書かれており、終戦の日には悲憤慷慨している。 価値観が180度、変わってしまった瞬間だったろう。 昭和21年の暮れにはもう、デパートが賑わっているという描写があり、復興の早さ、人々の気持ちの逞しさに驚く。 進路を決める年でもあった聖子さんは、作家になりたいという情熱を持って小説を書き続けつつも、本当は歴史学者になりたいのだ、と書いてみたり、女医になって立ちたい、と書いてみたり。 しかし、終戦の翌年の大晦日には、自分には作家の道しかない、と心に決めている。 未発表の日記だったが、解説によれば、戦時中のことを書く時には常に、原本として下敷きにしていただろうという事。 後からの脚色を加えず、当時の目で書かれた文章をほとんどそのまま使っている箇所がいくつもあるという事だ。 それだけ、生の記録であるということ。 そして、とても読みやすいのは、梯久美子さんの解説にある通り、十八歳にしてすでに「田辺聖子」という作家が出来上がっていた、という事だろう。

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2021/11/18

【75年の時を超えて発見された奇跡の日記文学――田辺聖子版「アンネの日記」】月刊「文藝春秋」に掲載され、話題となった、田辺文学の源泉にして時代の証言。

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