人間晩年図巻 2004-07年 の商品レビュー
「人間晩年図巻」は、その年に亡くなった人たちを回想するシリーズである。本巻であれば、2004年から2007年の間に亡くなった方を対象としている。もちろん、山田風太郎の「人間臨終図巻」に倣ったものである。「人間臨終図巻」が、「死亡時の年齢」で分類しているのに対して、本書は「死亡時の...
「人間晩年図巻」は、その年に亡くなった人たちを回想するシリーズである。本巻であれば、2004年から2007年の間に亡くなった方を対象としている。もちろん、山田風太郎の「人間臨終図巻」に倣ったものである。「人間臨終図巻」が、「死亡時の年齢」で分類しているのに対して、本書は「死亡時の西暦」で分類しているところが異なる。「何が面白いの?」と問われると少し困る。その人がその年に亡くなった事実自体に意味はなく、その人の人生を回顧している、その内容に味があるところが面白いのだろう。 本巻では、貴ノ花(初代)、仰木彬、吉村昭、青島幸男、小田実、真部一男、等が比較的知っている人たちで興味深く読んだ人たちだ。 2007年10月30日、将棋順位戦の一番下のリーグ、C級2組の手合いで、真部一男8段は、33手で投了した。異例の短手数での投了だった。真部8段は末期のガンで余命短いことを既に告げられている状態であり、実際に本局が最後の対戦となった。特に不利な局面でもない中での投了の理由を問われた真部は、「4二角と打とうと思ったが、そうすると相手が粘るであろうから、こちらの身体がもたない」と答えたそうである。その4二角は、なかなかの手であり、死後、真部はこの手で表彰を受けている。 将棋界らしいのは、ここからで、11月の全く別の対局で、真部が投了した局と全く同じ形で進行した局があり、後手をもっていた大内9段は、真部が打とうとしていた4二角を指した。残念ながら、この局に大内は負ける。真部のことを知っていたのかと聞かれた大内は「まったく知らなかったよ、そんなことがあったんだ。残念だな」と言った後、「勝ってやらなきゃいけなかったな」と続けたそうである。 将棋界らしい、良い話だと思う。
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網野義彦、ロナルド・レーガン、マーロン・ブランド、フランソワーズ・サガン、本田靖春、星ルイス、阪田寛夫、岡田史子、ロック岩崎、貴ノ花、杉浦日向子、仰木彬、茨木のり子、宮川泰、今村昌平、吉村昭、ジョゼフ・オツオリ、青島幸男、宮本邦彦、石立鉄男、向坂ゆい、ミケランジェロ・アントニオー...
網野義彦、ロナルド・レーガン、マーロン・ブランド、フランソワーズ・サガン、本田靖春、星ルイス、阪田寛夫、岡田史子、ロック岩崎、貴ノ花、杉浦日向子、仰木彬、茨木のり子、宮川泰、今村昌平、吉村昭、ジョゼフ・オツオリ、青島幸男、宮本邦彦、石立鉄男、向坂ゆい、ミケランジェロ・アントニオーニ、イングマール・ベルイマン、小田実、谷口千吉、真部一男の晩年が語られる。有名、無名の人物の時に意外な、時に凄惨な生き様。愛読した岡田史子の死は、特に痛ましい。阪田寛夫の詩が心に残る。「熊にまたがり屁をこけば/りんどうの花散りゆけり 熊にまたがり空見れば/おれはアホかと思わるる」
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人物を通して時代を描く感じ。関川夏央らしい軽妙な読みやすさ。山田風太郎ほどピリッとはしてないが、これはこれであり。エッセイに近い。 知らない人も多いが、どういう基準で選んだのかよくわからん。
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この「2004−07年」だけ貸出中で返却を待つ。読む順序が狂ってしまった。 何と岡田史子が扱われている。真っ先に読む。「週刊誌にヌードを撮らせたのは」とある。ホント? 検索で画像を拝む。恐ろしい目ヂカラだ。 他に杉浦日向子など、山田風太郎『人間臨終図巻』なら選に漏れたかもし...
この「2004−07年」だけ貸出中で返却を待つ。読む順序が狂ってしまった。 何と岡田史子が扱われている。真っ先に読む。「週刊誌にヌードを撮らせたのは」とある。ホント? 検索で画像を拝む。恐ろしい目ヂカラだ。 他に杉浦日向子など、山田風太郎『人間臨終図巻』なら選に漏れたかもしれない。山田版は物故小説家の比重が大きいように思う。 「26人を収録」と謳いつつ、本田靖春なら金嬉老、青島幸男なら大橋巨泉といった具合に関連人物に触れてくれるので、実際の読み心地は50人以上だ。 『人間晩年図巻』の名に恥じず、晩節を汚した著名人にも容赦ない。この巻では小田実への舌鋒が鋭い。
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ある意味では悪趣味な企画ではある。が、読んでいて不思議とすんなり読めるのはこの書き手の持つ品性故か。死を観念的に弄ぶでもなく、感傷的になるでもなくひとりの人間の生き様・生活に肉薄し、そこから彼や彼女の生きた証を探り出す。人生はロングショットで捉えると喜劇になる、と言ったのは誰だっ...
ある意味では悪趣味な企画ではある。が、読んでいて不思議とすんなり読めるのはこの書き手の持つ品性故か。死を観念的に弄ぶでもなく、感傷的になるでもなくひとりの人間の生き様・生活に肉薄し、そこから彼や彼女の生きた証を探り出す。人生はロングショットで捉えると喜劇になる、と言ったのは誰だったか。著者の筆致にかかれば人生を俯瞰して捉える視点が確保され、そこから同じようにロングショットで見た死生が連ねられる。喜劇的でもあるが、その喜劇が(くどいが)こちらにもどこか爽やかとも言える後味を残す。なかなか侮れない企画だと思う
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