1,800円以上の注文で送料無料

ゴーストランド の商品レビュー

3.7

5件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/09/13

全米各地の幽霊話を、霊の実在を問うのではなく、何故そこにそのような物語が成立したのか、という観点から掘り下げていくという内容が面白かった。“言い伝え”と“事実”は恐ろしい程に乖離するのだということを知る。日本各地の都市伝説も、同じようにアプローチしてみたら、これも面白い結果になる...

全米各地の幽霊話を、霊の実在を問うのではなく、何故そこにそのような物語が成立したのか、という観点から掘り下げていくという内容が面白かった。“言い伝え”と“事実”は恐ろしい程に乖離するのだということを知る。日本各地の都市伝説も、同じようにアプローチしてみたら、これも面白い結果になるのではなかろうか。

Posted byブクログ

2023/06/12

アメリカの幽霊と心霊現象の「背後」「側面」に迫った一冊。幽霊の実在を問うのではなく「どうしてそこに幽霊がいる・心霊現象が起きる(もしくは起きていない)といわれるのか?」に切り込み、そこに(副題にある)「アメリカ史」を見る…という視点はとても面白かった。 なぜ幽霊屋敷は誕生するのか...

アメリカの幽霊と心霊現象の「背後」「側面」に迫った一冊。幽霊の実在を問うのではなく「どうしてそこに幽霊がいる・心霊現象が起きる(もしくは起きていない)といわれるのか?」に切り込み、そこに(副題にある)「アメリカ史」を見る…という視点はとても面白かった。 なぜ幽霊屋敷は誕生するのか、先住民と土地にまつわる噂、奴隷制度の悲惨な歴史と幽霊が「出ない」理由、ゴーストツアーに群がる人々、幽霊話と犠牲者とその遺族、精神病院・墓地の変遷と幽霊がうまれるタイミング、人種差別に利用される心霊、IT時代・自動化時代の新しい幽霊観…。 「火のないところに煙は立たぬ」。 単に「廃墟だから」「事故物件だから」「なんか出そうだから」で止まらず、社会全体の根深い理由が染み付いている、それを解きほぐす・俯瞰する。 このアプローチは勉強になったし、なにより面白い! アメリカ史を学んでいる人ならまたより詳しく、違った視点で楽しめるのかな?

Posted byブクログ

2022/09/06

「幽霊」とは何か、あるいは幽霊譚、取り憑かれた場所はなぜ生まれるのか。そこには光の当たるその土地の「正史」に隠された、しかし忘れ去られることをよしとしない陰の歴史が眠っている。類稀なる着眼点でもってアメリカ各地の幽霊出没地をめぐり、その陰に語り継がれる物語を紡ぎ出す。 大変興味深...

「幽霊」とは何か、あるいは幽霊譚、取り憑かれた場所はなぜ生まれるのか。そこには光の当たるその土地の「正史」に隠された、しかし忘れ去られることをよしとしない陰の歴史が眠っている。類稀なる着眼点でもってアメリカ各地の幽霊出没地をめぐり、その陰に語り継がれる物語を紡ぎ出す。 大変興味深い一冊。 ただまあ難を言うとちょっとレトリックが多すぎる気はしたのでそこは文体の好みが分かれるかなあ。

Posted byブクログ

2022/03/16

アメリカ各地から集めた幽霊譚集。ただし単に怪談を集めた というだけではなく、その真偽やバックボーンまで綿密に 取材し、幽霊譚の背後にある文化史やアメリカという国の あり方にまで視線を向けている。よく「アメリカには歴史が ない」と言うが、この本を読むと人が暮らしている以上、 そこに...

アメリカ各地から集めた幽霊譚集。ただし単に怪談を集めた というだけではなく、その真偽やバックボーンまで綿密に 取材し、幽霊譚の背後にある文化史やアメリカという国の あり方にまで視線を向けている。よく「アメリカには歴史が ない」と言うが、この本を読むと人が暮らしている以上、 そこには何らかの蓄積があるということがよくわかる。 これで各幽霊スポットの写真が収められていればなお良いの だが、せめて検索しやすいように初言及時点で英語のスペル を併記していれば、と思う。

Posted byブクログ

2021/12/23

「これは、幽霊に関する主張の真偽について語る本ではない」という宣言に始まる、アメリカ各地に伝わる幽霊話を通してアメリカ人の深層意識に迫ろうという試み。約340ページ。 調査対象となっている主な場所は、家(屋敷)、ホテル、売春宿、刑務所、精神病院、墓地、公園、都市などの全17章。...

「これは、幽霊に関する主張の真偽について語る本ではない」という宣言に始まる、アメリカ各地に伝わる幽霊話を通してアメリカ人の深層意識に迫ろうという試み。約340ページ。 調査対象となっている主な場所は、家(屋敷)、ホテル、売春宿、刑務所、精神病院、墓地、公園、都市などの全17章。第一部から第四部にかけて、私的空間である家から、都市という公的空間へと、調査の対象を徐々に広げながら進行する。幽霊話の背景として立ち現れるのは、魔女裁判、先住民虐殺、西部開拓、黒人奴隷、南北戦争、心霊主義と女性参政権、工業地帯の盛衰と、アメリカ各地の幽霊話を追う調査の旅はまさしくアメリカの歴史と重なる。 文献やインタビューによって各地のさまざまな幽霊話を検証した結果として浮かび上がるのは、「でっち上げ」「歪曲」「誇張」の多さだ。例えば日本でも知る人の多いであろう「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」(行き止まりの階段やドアだけの部屋を含む、奇妙で広大な屋敷)は、ウィンチェスター銃で殺された人々の怨念を避けるために、裕福の夫人が亡くなるまで延々と増築が続けられたとされているが、過去の記録や証言からそのような事実は伺えないことが明らかとなる。つまり、銃で財を成した富豪が霊に取り憑かれていたという噂は、周囲の人々の願望でしかなかったというのだ。また、現実的な目標のためにでっち上げられた幽霊話の少なくない数にも驚かされる。 このように、あらかじめ幽霊の存在は問わないとしながらも、著者の立場は本書全体を通して霊の存在に対してはかなり懐疑的にみえる。あわせて、本書によって暴かれる幽霊話の虚像の数々をみるにつけ、テレビのような影響力のあるメディアも含めて、まことしやかに人々の口から語られる話の信頼性を過信してはいけないという戒めにも注意を向けさせられる。 「幽霊の話はたいてい罪と罰を中心に展開する」。過去への後悔の念をはじめ、幽霊話は人々のある種の望みを形に変えたものともいえるだろう。幽霊話は多くの人々によって共有される公共的な"夢"に近い存在かもしれない。そこには人々の恐怖や欲望の本質をつかむヒントが隠されている。だからこそ、テクノロジーが進歩しても幽霊話に心惹かれる人々が消え去ることはなさそうだ。 ところで本書内で一番引っかかった箇所は、第6章の「悪夢のような場所」に代表される、黒人奴隷にまつわる幽霊話の意外なまでの少なさだ。リッチモンドのショッコー・ボトム地区には、黒人の男女及び子どもたちが農園主や投機家に売られ、何百体分もの遺骨が近くで発見された<悪魔の半エーカー>があるにもかかわらず、当地で伝えられる幽霊話のほとんどは白人の物語だという。(第2章で語られる、クロエという名の奴隷の幽霊話も単なる黒人奴隷ではなく、妾としての立場あってこそ伝えられたものと思える。)あってしかるべきなのに物語られることの少ない黒人奴隷の幽霊話は、アメリカ人の深層意識の何を意味するのだろう。

Posted byブクログ