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未来の科学者たちへ の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2024/06/28

ノーベル生理学・医学賞受賞者である大隅良典氏と、京都大学名誉教授で歌人としても活躍する永田和宏氏の共著。科学研究の魅力と、研究者としての喜びや挑戦について語られる。若い研究者たちへのアドバイス、前向きな論説が多く、学生には非常に有意義な一冊になると思う。 かつて大企業はどこも中...

ノーベル生理学・医学賞受賞者である大隅良典氏と、京都大学名誉教授で歌人としても活躍する永田和宏氏の共著。科学研究の魅力と、研究者としての喜びや挑戦について語られる。若い研究者たちへのアドバイス、前向きな論説が多く、学生には非常に有意義な一冊になると思う。 かつて大企業はどこも中央研究所というのがあり、大学の先生に匹敵する位の実力のある研究者がいた。会社の利益に直結することだけでなく、様々な基礎価格の研究を行っていた。ところが、どの企業も中央研究所をつぶしてしまった。今もう残している企業はほとんどない。科学に対する「実益」志向がそうさせた。企業に関してはそれでも良いと思うが、大学はそうであってはならない。「利用価値」を先に設定してしまう事で既定路線に沿ったアプローチから逸脱できぬようになることは、損失ですらあるのだろう。 ー ほとんどの人にとって、教科書で習った事は本棚に収めておくべき知識で生活の中で引き出される対象ではないようだ。例えば、肌の張りを保つ効果のあるとされるコラーゲンのエピソードは、科学の知識が生活に密着していないことを如実に示している。摂取したコラーゲンは必ず肉などの他のタンパク質と同様に胃や腸でアミノ酸やペプチドという物質に分解されて吸収される。食べ物としてタンパク質を取るのは体に必要な新たなタンパク質を構成する材料としてのアミノ酸が必要だからである。すべてのタンパク質は遺伝情報に従って、アミノ酸を1個1個つなげることによって構成される。したがって、コラーゲンを飲んだり食べたりしても摂取したコラーゲンがそのまま肌や骨に含まれるコラーゲンに置き換わる事は決してない。 上記は、日常に科学思考が浸透していない事を示す文だ。残念ながら、その通りだと思う。反知性主義とまでは言わないが、ロジカルな理解を放棄すれば、人間は印象論のみで右に倣えとなる。それは極めて危うい事であり、マス操作の源泉ともなる群集心理とも言える。個人としての愚考権は許容しても、集団における最低限の教育ラインは重要だという事だ。対人的な意味だけでは無く、真実に対し、誤ったリンチをしてしまう恐れがある。 ー 何かを知るため、理解するために費やす時間やその長さが大切だと思っている。すぐにわからなければその疑問はずっと頭の片隅に残る。わからない間、想像力が働く。インターネットはすぐに答えを得られるので便利な反面、想像力が働く場面がない。 重要なのは、検索結果ではなく、想像力や結晶化である。刺さる言葉だった。

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2022/07/29

大隅さんは、東大卒、オートファジーの仕組みの解明でノーベル生理学・医学賞受賞。永田さんは、京大卒。やはり京大出身の永田さんは、「おもしろい」を大事にしている。 ・ディスカッションに喜びを見出す。 ・迷ったら「おもしろい」ほうを選ぶ。 ・流行の研究を追わないと決めていた。 ・一番乗...

大隅さんは、東大卒、オートファジーの仕組みの解明でノーベル生理学・医学賞受賞。永田さんは、京大卒。やはり京大出身の永田さんは、「おもしろい」を大事にしている。 ・ディスカッションに喜びを見出す。 ・迷ったら「おもしろい」ほうを選ぶ。 ・流行の研究を追わないと決めていた。 ・一番乗りを目指すのではなくて、人のやらないことをやる。 ・「役に立つかどうか」を気にしすぎる傾向がある。科学は技術と結び付けられてしまっているが、科学を文化にしたい。スポーツ選手の活躍は、「何の役に立つのか」という突っ込みがはいらない。それは文化になっているから。科学もそうなるといい。

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2022/05/30

この本を読んで、大学で若者が豊かな学びができるような、自分が本当に面白いと思えることが研究できるような、そんな環境を整えてあげたいと思った。 著者である二人の研究者は、今の若者に「もっとこうあれ!」とエールを贈る。 一方で、今の教育システム、研究者を取り巻く環境に危機感を抱き警...

この本を読んで、大学で若者が豊かな学びができるような、自分が本当に面白いと思えることが研究できるような、そんな環境を整えてあげたいと思った。 著者である二人の研究者は、今の若者に「もっとこうあれ!」とエールを贈る。 一方で、今の教育システム、研究者を取り巻く環境に危機感を抱き警鐘を鳴らす。 現実には、みんな、毎日を生きるために必死で、今日一日のことで精一杯である。 ずっと先じゃなくて、我が子や孫が大人になる、少し先のことを考えることさえ難しい。 それでも、考えないとダメだと思う。考えて行動を起こさないと。 日本の政治家や官僚は何もしてくれないだろう。未来の日本に向けて舵取りしていくはずの人たち、あなた達はちゃんと進路が見えていますか? 一市民に出来ることはほとんどないかもしれない。でも、考えることは、考え続けることは出来る。 そして機会があれば、小さなことでいい、何か一つ、自分の思い描く未来につながることをやってみよう。 私のアクションはただ終わるかもしれないが、誰かのアクションは大きな動きになるかもしれない。 だから、みんな、考えることを続けよう!

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2022/04/30

科学を文化に。この言葉に全てが込められている。憤せずんば啓せず、悱せずんば発せず。こんなに知らなかった自分を知る。

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2022/03/04

2人の生命科学者が考える、科学者のあり方、今の科学者の現状、若い科学者へのメッセージなどが、わかりやすい言葉で語られている一冊。 経済を最優先とするかのような社会の動きを反映してか、科学者の世界でも、経済性が優先されている現状。 もともと「好奇心」を原動力に発展してきた科学は、...

2人の生命科学者が考える、科学者のあり方、今の科学者の現状、若い科学者へのメッセージなどが、わかりやすい言葉で語られている一冊。 経済を最優先とするかのような社会の動きを反映してか、科学者の世界でも、経済性が優先されている現状。 もともと「好奇心」を原動力に発展してきた科学は、「役に立つこと」を目的とはしていなかったが、経済性が過度に優先されるようになった結果、「すぐに役に立つこと」を求められるようになり、基礎研究はおざなりにされ、科学者の研究対象は、小粒で、つまらないものになってきている。 この点に関して、自分は科学者ではないですが、同じ課題意識を持っています。 企業にいても、似たような時代の流れを感じるので。 このことに対し、自分ができることは多くないと思いますが、少しでも科学者の状況の改善に貢献できるよう、考えることだけはしています。 いずれは、何か一つぐらい実現したい。

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2022/01/05

こんなに楽しい職業はない: サイエンスの世界にようこそ 科学は人の営み 日本のサイエンスのいま 最初から専門を決めなくてOK サイエンスは社会的な存在である 研究者の醍醐味-世界で自分だけが知っている 研究は「おもろい」から: 選択はおもしろいほうを やはり研究者になろう ワン...

こんなに楽しい職業はない: サイエンスの世界にようこそ 科学は人の営み 日本のサイエンスのいま 最初から専門を決めなくてOK サイエンスは社会的な存在である 研究者の醍醐味-世界で自分だけが知っている 研究は「おもろい」から: 選択はおもしろいほうを やはり研究者になろう ワンオブゼムではおもしろくない 種を蒔こうとするスタンスが基礎研究 研究現場は大股で歩け ゼロから始めることで得る喜び 科学者は楽観主義であれ おもしろさを追求できる自由 驚きと感動をこそ大切にしたい 一番乗りよりも誰もやっていない新しいことを: 終戦の年に生まれて、自然の中で 分子生物学との出会い 渡米、ニューヨークでの留学生活 人のやらないことをやろう 間違いなくおもしろい現象に出会った! オートファジーに関わる遺伝子を特定 次々に明らかになる事実で世界を独走 その折々にベストを尽くす 効率化し高速化した現代で 待つことが苦手になった私たち: 知るために費やす時間 非効率な時間が興味を膨らませる 「思いがけない」が失われている 乗り遅れ症候群 与えられる知から、欲する知へ 〈知へのリスペクト〉 プロセスにこそ喜びはある パラダイムを示してくれる人との出会い 素晴らしき「ヘンな奴ら」 安全志向の殻を破る: 好きなことができていい? 研究者は何が楽しい? 研究とお金 科学者には多様性が必要だ 得意なことではなく苦手なことで決められる進路 研究者を育てる環境 議論する日常、閉じこもる日常 若者の特権と安全志向 失敗を恐れる必要はない 未知の世界は先が見えないからこそ楽しい 「役に立つ」の呪縛から飛び立とう 「解く」ではなく「問う」を: 答えられるより問えることが大切 いかに問えるか 答えの先に新たなる問い すぐに納得しないで 孔子の過激な教育観 非効率な体験が想定外の対応力を養う 失敗へのチャレンジ 自分の仕事と同じように人の仕事をおもしろがれるか 科学を文化に: 科学を身近に感じるために 終わりのない仮説と検証のサイクル 現代における科学の役割 まずは科学とは何かを考えてみよう 科学や技術の評価には時間がかかる 国に依存しない基礎科学研究の支援 先が見えない不安 大学の専門学校化 いい失敗と悪い失敗 ゲノム編集や再生医療 役に立たなくてもサイエンスには喜びがある 大隅財団という社会実験

Posted byブクログ