楽園の殺人 の商品レビュー
小笠原諸島の南端にある「東硫黄島」。かつて一時期、人が滞在した形跡はあったものの、ほぼ手付かずの状態だった。過去に島の調査が行われた結果、独自の生態系があることを発見した。以降、島は厳しく制限されていた。 そして、15年ぶりに調査するということで、厳重な準備を整えた上で、博物館の...
小笠原諸島の南端にある「東硫黄島」。かつて一時期、人が滞在した形跡はあったものの、ほぼ手付かずの状態だった。過去に島の調査が行われた結果、独自の生態系があることを発見した。以降、島は厳しく制限されていた。 そして、15年ぶりに調査するということで、厳重な準備を整えた上で、博物館の研究員などが上陸した。 研究・調査をしていたが、しばらくすると調査団の一人が殺された。外部との連絡が途絶えたり、ボートが使用不能になったりと疑心暗鬼な状態が続く。犯人はこの中にいる⁉︎ そんな中、新たな殺人が起きる。 クローズドサークルモノで、今まで色々な設定がされてきましたが、この作品の特徴は、外来種問題が加えられていることです。島にいるはずのない動植物がいることにより、島での生態系が崩れていきます。 他にも人間が島に入ることによって影響される環境破壊などの問題も取り扱っていて、ミステリーだけでなく、動植物の生態系や外来種問題についての知識も学べましたので、色んな意味で楽しめました。 表紙を見る限りでは、オドロオドロしい描写や「惨劇」といった言葉にホラー的な雰囲気を感じたのですが、読んでみると、マイルドだなと思いました。 たしかに遺体の口には、悍ましいものが詰め込まれている描写はあったのですが、文章にしてみると、あっさり感があり、逆に読みやすさはありました。 孤島の中で起きる殺人事件。外部と閉ざされた中で、どう助けを求めていくのか?研究員らが知恵を駆使して奔走する描写は、「へー」と感心する場面もあり、面白かったです。 一番の見所である事件解決への推理劇ですが、正直微妙かなと思いました。犯人がわかったものの、余韻もないまま、すぐに言ったりするので、読者としては唐突感がありました。 また、殺人のトリックも、普通といいましょうか、あまり動植物には触れずに犯行を行ったりしています。そう考えると、遺体の口にあるモノは別に特別な外来種じゃなくても良かったのでは?という疑問が沸きました。 犯行動機も含めて、なんやかんや結局は、生態系を壊すのは人間なんだなと思いました。側からみると、それが悲しくもありました。 自然は自然のままが良い。人間が都合よく手を加えることは後に破壊へと繋がっていくのではと思います。 人間と自然がどう共存していけばいいのか。改めて考えないといけないなと思いました。
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