政治神学 の商品レビュー
「主権者とは、例外状態について決定を下す者のことである。」 非常に印象的な一文から本書は始まる。「例外状況とは、現行の法律では規定されていない状況であり、極端な緊急状況とか、国家の存立が危ぶまれる状況などとして示すことができるだけであ」る(14頁)として、正にそのような例外状...
「主権者とは、例外状態について決定を下す者のことである。」 非常に印象的な一文から本書は始まる。「例外状況とは、現行の法律では規定されていない状況であり、極端な緊急状況とか、国家の存立が危ぶまれる状況などとして示すことができるだけであ」る(14頁)として、正にそのような例外状況に国家の本質が示されるとして、以下、主権の問題について、これまでの主要学説を紹介しながら論じていく。 ケルゼンくらいは主要著作を何冊か読んだことはあるのだが、ケルゼンのほか、クラッベ、ヴォルツェンドルフ、カウフマン、メルクルなどの説とそれに対する著者の考えが説かれている第二章「法の形式および決定の問題としての主権の問題」のところは、一読したくらいでは十分理解ができなかった。 第三章「政治神学」は、「現代の国家論の重要な概念は、すべて世俗化された神学概念である」という、これまた印象的な文章で始まり、神の概念と君主の概念、さらに主権者の概念の関係について論じられ、第四章「反革命の国家哲学について」に続いていく。 各章の叙述は何とか追いかけていったのだが、本書の構成、展開の意味合いが良く分からなかったので、消化不良の状態で終わってしまったのが残念。 付録の「中性化と脱政治化の時代」では、次のような考察がなされる。我々の精神生活において、中心領域の交替が起こってきたこと、すなわち神学(16世紀)→形而上学(17世紀)→道徳(18世紀)→経済(19世紀)という段階を経て、様々な領域の中性化が進んできた。そして現在はさらに、もっと中性度の高い技術(20世紀)の段階になってきているが、果たしてそれにより脱政治化(対立がなく、協調が進み平和となること)となるのか、とシュミットは問う。 シュミットはナチとの関係により毀誉褒貶が激しいが、危機の時代について真剣に考えた人間であったことは、本書を読んでも感得できた。
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