ネット社会と民主主義 の商品レビュー

辻大介(編者)

2023/07/26

■■評価■■
★★✬☆☆

■■概要・感想■■
○現代政治学の研究論文をまとめてある本。一般的にそうかなと思われていることをモデル化して、因果関係の仮説を立てて、調査アンケートから相関の有無を明らかにして、その仮説が正しいかを判断する。アンケートでは仮説に関係あるだろうこと、例えばネットでどんなコンテンツに触れているか、から、性別年齢年収生活の貧富などの、分類可能な観点から考察が進められている。

○何かを吸収するために読む本というよりは、現代政治学を、自分の観念だけでなく、相対化するために見る本という面が強いかと思った。真面目にデータを追って見るのは専門家のすることで、一般人たる我々はそのデータの取り扱いより、自分の感覚と照らし合わせてどう解釈するのか、というような読み方が良いのかなと感じた。

2022/05/12

インターネットが8割を超えて普及するいま、世論の分断や党派対立はますます激しくなったかのように見える。
しかし、そこで生じている「分断」とは、本当はどのようなものなのだろうか。
本書では、本来描かれるべきその姿を、社会学・社会心理学におけるネット研究の第一人者たちが、蓄積されたデータを通して描き出す。
複数年にわたって行われたネット研究が示す、ネット社会と民主主義のゆくえとは

2022/03/19

インターネットが政治意識に影響し、選挙結果として政治の結果にも及んでいる、また意識の分断化が進んでいると米国の社会の分断化の深刻化が報じられることが多い。また日本においても安倍政権はそれを利用して安倍一強といわれる長期政権を築いたと言われる。それが実際にはデータで検証できるのかとの問題意識からのアンケート調査結果の詳細な分析、実にタイムリーな興味深い著作である。章別には②政治的意見・情報を実際に見たいものだけを見るように作用しているか、③ニュース接触のメディア類型別の活発さの影響、④自民党支持に及ぼす影響、⑤憲法改正賛否への影響、⑥若者の安倍首相好感度への影響、⑦他者への信頼度への影響。⑧異見への寛容性、⑨政権支持・争点の二極分化させているか、などを論証していく。
検証してみて実際には常識とかなり異なる結果も出てきているように著者も感じていた。
いわゆるネット右翼はかなりの頻度で書き込んでいるが、読んでいる人は意外と冷静！ネット右翼は男性、そして中高年層に多いという結果も成程というものであった。新聞各紙の購読者の政治意識との相関関係は「やはり」と思う中で、読売新聞の社説が共産党的と判定される割合が一番高かった！（P73）とは実に興味深い結果だった。朝日新聞批判は反左であるだけでなく、反上が影響しているというのは、日本の社会の特徴を示していると感じた。安倍首相への若者層の好感度は実は高くも低くもなく、「０」に近いのが現実であり、それが自民党支持に及んでいるという考え方、ネット利用は争点によっては賛否を右寄りに傾ける効果を持つが、左右に分極化させることはないとの主張（P198）は、本当にそう思った。

2022/01/26

1月26日新着図書：【ネットで自分と似た考え、見たい意見ばかりに接することによりますます激しくなったように見える世論の分断など、分極化に向かう現代日本を検証します。】
タイトル：ネット社会と民主主義 : 「分断」問題を調査データから検証する
請求記号：312:Ts
URL：https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28196029