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或る中世写本の旅路 の商品レビュー

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2022/01/30

タイトルが気になり図書館から借りた一冊。内容的には『イバルの書』という本の伝播状況から、イブン・ハルドゥーンという政治家・研究家の思想の広がりや受け取られ方を考察したものとなっています。 正直学問的なところや文化的なところは評価できないけれど、写本の広がりや時代背景を考察して、...

タイトルが気になり図書館から借りた一冊。内容的には『イバルの書』という本の伝播状況から、イブン・ハルドゥーンという政治家・研究家の思想の広がりや受け取られ方を考察したものとなっています。 正直学問的なところや文化的なところは評価できないけれど、写本の広がりや時代背景を考察して、思想がどう受け止められてきたか、を考察するという方法はとても興味深かった。 写本の伝播をどのように調べるかという具体的な方法も面白い。どの王朝に本が贈られたかで写本を系統付けて行ったり、寄贈記録や所有記録、地域ごとの図書館の所蔵記録から、どの地域、どの時代において、その本(思想や知識)が必要とされたかを考察したりと、本の伝播をみることで、そうしたことが分かるのか、とちょっと感心しました。 本というのはある意味時代や地域を映す鏡かもしれない。各時代ごとのベストセラーを見れば当時の世相もある程度分かるだろうし、地域ごとで売れ筋が違うなら、そこを考察するのも面白いかもしれない。 『イバルの書』が必要とされた時代も、当時イスラム圏が西欧と接近せざるを得ない時代と被る部分があるらしく、『イバルの書』が様々な地域や民族の歴史についても触れられていたことが、本が写本され広く渡った理由ではないか、と推察されているところがありました。 いつの時代、どんな地域であっても、本は社会を映すものなのかもしれません。

Posted byブクログ