サウジアラビア の商品レビュー
サウジアラビアという国の多面性、可能性の広さ、オリジナリティが概略的にわかりやすく説明されている。また同国の抱える葛藤や課題にも触れられており、サウジアラビアを少しわかったような気にさせてくれる。
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イスラムの盟主を自任するサウジアラビアが、なぜアメリカ、イスラエルに擦り寄っていくのか?それを知ろうとこの本を手に取った。 部族長のイブンサウードと偶像廃止を謳うアブドルワッハーブの盟約にはじまる一次王国から現在の3次王国までの歴史を知った後、ガラパゴス化していたサウジはイスラム...
イスラムの盟主を自任するサウジアラビアが、なぜアメリカ、イスラエルに擦り寄っていくのか?それを知ろうとこの本を手に取った。 部族長のイブンサウードと偶像廃止を謳うアブドルワッハーブの盟約にはじまる一次王国から現在の3次王国までの歴史を知った後、ガラパゴス化していたサウジはイスラムの盟主を確立するため、それまでの強国のエジプトや、シーア派のイランとの対決の過程で、防衛の協力と経済的な観点からアメリカに近づいていく。 今まで北朝鮮のような内実不明な不気味な国の印象が、多少あったが、今のサウジは脱宗教化に舵を切り試行錯誤している血の通った国の姿が見えてきた。
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イスラームの教義に基づく王国として成立したサウジアラビア。 イスラーム世界の盟主とはつまるところ、アラブに限らず、「イスラーム」が関与するあらゆる分野の盟主と言うことで、極めれば、全世界のトップに立つと言うことを意味する。 極めて宗教色が強いが、しかし、少なくとも、国際社会の...
イスラームの教義に基づく王国として成立したサウジアラビア。 イスラーム世界の盟主とはつまるところ、アラブに限らず、「イスラーム」が関与するあらゆる分野の盟主と言うことで、極めれば、全世界のトップに立つと言うことを意味する。 極めて宗教色が強いが、しかし、少なくとも、国際社会の中でそれなりの規模の国家を維持し、関係を持っていくためには、教義全面に押し出せば、いわゆるイスラム過激派に陥るのは明白で、ここのさじ具合に苦労しているのだと読んだ。 世俗主義というのか、宗教の官僚化というか、多分、本来の教義を、中庸とか寛容という、国際社会との折り合いをつけるためにぶっちゃけ国が国家の権威で、都合よく解釈してる。 それが盟主である以上、国際社会にとっては都合がいいわけだ。 歪みが来なきゃいいけどな。 歪みが、主流にならなきゃいいけどな。
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新幹線往復で読める内容、とのことで、サウジへの飛行機の中で読了。 名前の記憶が容易でないので記憶定着は困難であるが(こっちの問題)、本としては最新の問題までコンパクトに整理されていて、非常にいい本だった。なにかあればまず参照したい本。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
サウジアラビアの政治構造、特に内部構造の理解が深まった。これからサウジアラビア渡航を予定する者は読まれたい。 ▶︎王族は多数おり、その中のバランスに苦労する国王 ▶︎政治と宗教の分権 ▶︎観光政策による国境開放 あたりがポイントになる
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おもしろかった。本書は、イスラームの盟主として、石油産油国の長としてのサウジアラビアの実情を描くものです。 構成は、序章、終章を含めて8章 序章 イスラームの世界観 ・ヒジュラ暦がなぜ、ムハマンドが天啓を得た年でなくメディナに向かった622年を元年にしているのか ・イスラームの...
おもしろかった。本書は、イスラームの盟主として、石油産油国の長としてのサウジアラビアの実情を描くものです。 構成は、序章、終章を含めて8章 序章 イスラームの世界観 ・ヒジュラ暦がなぜ、ムハマンドが天啓を得た年でなくメディナに向かった622年を元年にしているのか ・イスラームの教えは、聖典クルアーン(コーラン)と、伝承集ハーディス、法学フィクフの3つからなる ・イスラームとは宗教だけでなく、政治、経済、社会など人間生活のあらゆる面を包含する 第1章 サウジアラビアの歴史 ・サウジの王国は、1744年第1次、1824年第2次を経て、1932年第3次にて成立している ・サウジアラビアは、メッカとメディナを支配してきたウマイヤ朝からオスマン朝の歴代王朝から連続性をもたない後進地域の新興国家 第2章 国家を支える宗教界 ・政治がサウド家であれば、それを支える宗教権威はシャイフ家で、血縁によって密接に絡んでいる ・サウド家の国王の施策を宗教的に裏付ける、ウラマー(学者)集団であるシャイフ家。「正しいイスラーム」の宗教的裏付け 第3章 王室と権力 ・国王になれるのは、第1次王国の初代王の子孫のみ ・国王はまさに政治の中心、地方の長もすべて王族が独占 ・GCC(湾岸協力会議)はイスラームの王たちの互助組織、アラブの春などに対抗 第4章 石油がもたらしたもの ・中東戦争の盟主シリア・エジプトはイスラエルと和解、対して、イスラーム世界の盟主として対峙する石油の利権でとってかわったサウジ ・石油相は、サルマーン王子がやるまでは、王家の不平等をさけること、実力主義にてサウド家以外からの任命 ・サウジの労働者の3分の1は公務員、しかも労働者の半数は外国人 第5章 過激主義の潮流 ・スンニ派のサウジの中に根づく、シーア派の存在 ・聖モスク占拠事件が発生した1977年がサウジの過激化が始まった年 ・ウサーマビンラーディンの印象を払拭するために、アメリカに協力したことが過激組織イスラーム国の生み出す原因に 第6章 変革に向かう社会 ・女性の地位の向上、サウジのイメージアップのために、王家が主導 ・観光 後進的なサウジのイメージを観光政策によって向上 ・幸福 脱宗教色、若年層の失業対策と、穏健なイスラームへ 終章 イスラーム社会としての過去、現在、未来 ・イスラーム世界に残る、盟主サウド家がアメリカに協力したという裏切りの代償 ・サウジにも押し寄せる、近代化、政俗化、グローバル化という、「西洋化」
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中東とお付き合いをしながら、これまで圧倒的に情報量が不足していたサウジアラビアの輪郭がさっと理解できた。 あとがきにも「新幹線で東京から新大阪に行く間に読める」と書かれているとおり、この国の過去・現在・未来が、程よい知識量・情報量でまとめられている。その意味では非常に良書である。...
中東とお付き合いをしながら、これまで圧倒的に情報量が不足していたサウジアラビアの輪郭がさっと理解できた。 あとがきにも「新幹線で東京から新大阪に行く間に読める」と書かれているとおり、この国の過去・現在・未来が、程よい知識量・情報量でまとめられている。その意味では非常に良書である。 また、ビン・ラーディンが批判した対象を、「アメリカを中心とする国際秩序に進んで組み込まれる」サウード家としている部分は、非常に興味深かった。 だが、本文と写真のキャプションにずれがある箇所があったり、章のタイトルから話がそれすぎたりする箇所があったりと、もし重版があったら直してほしいところも散見された。
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現代のサウジアラビアを概括的に知るために書かれている。 ページ数も200ほどと短い。 さっと読んでしまえる程度の内容。深く考えるには次の本を手に取る必要がある。 サウジの歴史やイスラム教もに触れているが浅い、より現在のサウジアラビアという国の状況に焦点を当てたもの
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「イスラーム世界の盟主という立場に注目してサウジアラビアの実像を描く」ことを掲げる新書、200ページ弱。「歴史」「宗教界」「王室」「石油」「過激派」「近年の変革」の六章にわけてサウジアラビアのさまざまな側面を通して全体像を描きだす。 国の成り立ちからして、政治権威と宗教権威が厳...
「イスラーム世界の盟主という立場に注目してサウジアラビアの実像を描く」ことを掲げる新書、200ページ弱。「歴史」「宗教界」「王室」「石油」「過激派」「近年の変革」の六章にわけてサウジアラビアのさまざまな側面を通して全体像を描きだす。 国の成り立ちからして、政治権威と宗教権威が厳密に分けられるとともに相互に依存する一蓮托生の関係で、「政教一致」の「宗教国家」といっても、単純なものではないことがわかる。現在ではイスラーム世界を代表する国家であるサウジアラビアが、もともとはアラビア半島中部が植民地政策の版図外でヨーロッパの制度・慣習が流入しなかったからこそ、ガラパゴス国家として独自の誕生・進化をした経緯も意外で面白い。また、過激派への対応が現在のサウジアラビアという国家のスタンスを鮮明にさせられているという事実も興味深い。近年の変革については、女性の扱いや観光の開放について国民の反応が好意的だという事実も新鮮だった。 「王室」「宗教」「石油」といったサウジアラビアのもつ主要な性質にひととおり触れている本書で、宗教よりも政治がつねにイニシアティブを握っている印象が強く残った。そして、社会改革や過激派への対応において、国際社会に配慮した「寛容」な姿勢が、近年のサウジアラビアとしての傾向として顕著なものと感じられる。王室が政治を支配しているとはいえ、このような動きも比較的高い幸福度を示している大多数の国民の賛同が得られてのものだろう。「イスラームの戒律が厳しい国」のイメージが強い同国が、宗教に関する規制を緩めて国際世論に同調する流れに、世界の潮流の一端を垣間見た思いがする。
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高尾賢一郎(1978年~)氏は、龍谷大学国際文化学部卒、同志社大学大学院神学研究科博士後期課程単位取得満期退学、博士(神学)取得、在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、上智大学アジア文化研究所客員所員等を経て、津田塾大学非常勤講師、東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア...
高尾賢一郎(1978年~)氏は、龍谷大学国際文化学部卒、同志社大学大学院神学研究科博士後期課程単位取得満期退学、博士(神学)取得、在サウジアラビア日本国大使館専門調査員、上智大学アジア文化研究所客員所員等を経て、津田塾大学非常勤講師、東京外大アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー、中東調査会研究員。専門は現代イスラーム思想・社会史。 サウジアラビアは、言うまでもなく、メッカとメディナという二大聖地を有するイスラーム世界の盟主、かつ、世界第2位の原油埋蔵量を誇る(1位は米国)中東の大国であり、更に、日本にとっては、原油輸入量の3割を占める深い関係を持つ国である。だがその一方で、一部の王族が巨額の富を独占し、イスラームの教えに厳格で、観光ビザでの入国ができず(2019年に一応解禁された)、挙句の果てには、9.11米国同時多発テロを引き起こしたアル・カーイダを支援していたとも噂される、極めて情報量が少なく、ヴェールに包まれた国である。 本書は、そのようなサウジアラビアについて、以下の章立てで、実像を明らかにしていく。 序章:イスラームの世界観 第1章:サウジアラビアの歴史(政教依存国家の誕生/ワッハーブ主義/中東のガラパゴス) 第2章:国家を支える宗教界(シャイフ家/職業権威としてのウラマー/人々を取り締まる宗教警察) 第3章:王室と権力(王室内のヒエラルキー/王権と宗教/王室の地域外交) 第4章:石油がもたらしたもの(中東戦争とテクノクラート/「資源の呪い」/内なる他者) 第5章:過激主義の潮流(背教者の汚名/中庸・穏健のイスラーム/「イスラーム国」の持ちえた意味) 第6章:変革に向かう社会(女性/観光/幸福) 終章:イスラーム社会としての過去、現在、未来 これまで40ほどの国を訪れてきた私にとって、サウジアラビアは、機会があれば行ってみたい国の最上位の一つであると同時に、得体の知れなさ・不気味さも最上位の国の一つであった(西洋的常識が通じないという意味では、一種北朝鮮と似ている)が、本書により、その距離は幾分か縮まったように思う。ただ一方で、様々な面でこれだけ複雑な(ある部分においては矛盾さえ抱える)構造に拠っているこの国が、それを今後も中長期的に維持できるのか、延いては中東地域・イスラーム世界のバランスはどうなるのだろうかという疑問が湧いてきたのも事実である。 サウジアラビアの多面的な実像をコンパクトにまとめた一冊といえる。(説明・分析が少々表面的には見えるが、新書200頁の分量ではこれが限界か) (2021年11月了)
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