蚕の王 の商品レビュー
戦後憲法に禁止されている警察の拷問による自白を合理的推理による操作手法と煙に巻き、それらしき犯人をでっち上げ、証拠も調書も捏造し、犯人に仕立てる警察、それに追随する検察や裁判官。 今も係争中の袴田事件、その有力証拠が事件発生から一年二ヶ月も経って発見された血痕の付いたみそタンクか...
戦後憲法に禁止されている警察の拷問による自白を合理的推理による操作手法と煙に巻き、それらしき犯人をでっち上げ、証拠も調書も捏造し、犯人に仕立てる警察、それに追随する検察や裁判官。 今も係争中の袴田事件、その有力証拠が事件発生から一年二ヶ月も経って発見された血痕の付いたみそタンクから見つかった衣類。 そんなあり得ない証拠で50年強も死刑囚として扱われている事実。 過去の冤罪事件で無実を勝ち取っても断罪されない警察。 今の警察にもその名残りが残っているのではないかと思うと本当に恐ろしい。 権力には、どこにでも悲劇を起こす可能性、必然性があると自戒すべきだ。 また、著者は、真犯人として特定の人物の名を上げているが、一作家の立場でこんな記述が許されるのだろうかと思う。
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現実にあった冤罪事件をもとにした小説。舞台は70年ほど前の静岡県。このモデルになった事件は、二俣事件といわれるが、静岡では、この二股事件の他に、島田事件、幸浦事件と冤罪事件が相次いで起こっている。 なぜ全国的に有名かというと、いずれも死刑判決を受けたあと、最高裁、再審請求で無罪に...
現実にあった冤罪事件をもとにした小説。舞台は70年ほど前の静岡県。このモデルになった事件は、二俣事件といわれるが、静岡では、この二股事件の他に、島田事件、幸浦事件と冤罪事件が相次いで起こっている。 なぜ全国的に有名かというと、いずれも死刑判決を受けたあと、最高裁、再審請求で無罪にひっくり返ったから。 なぜ、狭い静岡でこれほどまでに冤罪事件が相次いだのか。 その謎を解く鍵は、拷問王と呼ばれた悪名高い一人の警察官がいた。 現役時代に何百回も表彰を受けたというこの警察官は、犯人を逮捕するためなら、手段を選ばない。 拷問による自白、証拠の捏造、まさにやりたい放題めちゃくちゃな捜査をやって、犯罪者をでっち上げていた。 真犯人から賄賂を受け取っていたなど黒い噂もつきまとう。 いくら現代とは時代背景が違うと言え、こんなことがまかり通っていたのかと驚愕する。 そして、この警察官は、犯人逮捕のためなら何をやっても構わないという、負の遺産を静岡県警に残し、やがて袴田事件を生む温床となる。 難解事件を解決に導いたということで、一時は称賛されていたこの警察官も、後に無罪判決が相次いだことで左遷される。 これら冤罪事件の悔やむべきことは、無実の人間の人生が破壊されたこともそうだが、真犯人を取り逃がしていること。 この小説では、真犯人について推測を述べているが、どこまで真相に迫っているか疑問である。 いずれにしても、既に時効が成立しているため、責任を追求することはできない。
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袴田事件の再審開始が決定した上、検察当局は静岡地裁の再審公判で有罪立証を見送る方針だそうだ。これをきっかけに図書館で借り出した。 袴田事件より前の1950年、4人が殺害された二俣事件。静岡出身の著者が、この地に冤罪事件が集中していることに関心を持って取材、刑事の手記をもとに書いた...
袴田事件の再審開始が決定した上、検察当局は静岡地裁の再審公判で有罪立証を見送る方針だそうだ。これをきっかけに図書館で借り出した。 袴田事件より前の1950年、4人が殺害された二俣事件。静岡出身の著者が、この地に冤罪事件が集中していることに関心を持って取材、刑事の手記をもとに書いたのがこの小説。多くの記述が事実に則しているという。 この二俣事件も、同時に公判が進行していた幸浦事件も、袴田事件同様冤罪で、その後幸いにも無罪を勝ち取っている。当時の静岡県警警部補を中心に行われた拷問による自白強要、その自白を証拠採用する裁判。時間をかけて真犯人がある程度特定できたにもかかわらず、すでに“犯人”を逮捕してしまっている、という警察の面子が事態をそのまま進行させてしまう。真犯人によるその後の犯罪を未然に防ぐため、監視はしたものの、公判は維持。無辜の被告に死刑まで求刑している。 無罪を勝ち取ったのは、清瀬一郎弁護士。5.15で青年将校側の弁護についたり、大政翼賛会の重鎮で東条英機の主任弁護人という経歴が災いし、国家主義的と思われてはいたものの、左翼的と思う人もいるほど保守とリベラル双方に揺れる複雑怪奇な政治家。手弁当だが“人類愛”で弁護を引き受け、清廉一筋、金権政治を嫌った大物。彼だから勝ち取れた無罪かもしれない。 戦後間もない混乱の中、帰還兵、在日朝鮮人や障がい者に対する今以上の理不尽な差別意識、生活苦の庶民など、現在とは異なるさまざまな要因が散らばっている。刑事訴訟法で拷問が禁止されていたとはいえ、自白に大きく心証を左右される裁判も今とは随分異なっていたのだろう。 こうして公に問題視され争われた冤罪の向こう側に、どれだけ多くの冤罪があったのか想像に難くない。社会の秩序を維持することはもちろん大切だが、そのためにさまざまな法を整備しても、人を裁く、ということの難しさは今も変わらないのだろうと思う。少なくとも、自身の功を目的に人を貶めるような国家権力側の人間が生まれないような法整備にも、常に心を向けねばならない。
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すごい取材力、構成力。作家が故郷で起こった過去の冤罪事件の関係者を取材して小説にまとめる、というルポ形式で話が進む。昭和二十年代の3つの凄惨な事件に共通して担当した刑事の捜査手法は驚くべきものだった。これが「拷問王」である。次々に容疑者を黒にして、褒賞まで受けている。法廷劇の部分...
すごい取材力、構成力。作家が故郷で起こった過去の冤罪事件の関係者を取材して小説にまとめる、というルポ形式で話が進む。昭和二十年代の3つの凄惨な事件に共通して担当した刑事の捜査手法は驚くべきものだった。これが「拷問王」である。次々に容疑者を黒にして、褒賞まで受けている。法廷劇の部分も圧巻。戦後は混乱していて酷かったね?ではすまない。つい最近でも冤罪はあった。取り調べの可視化もされていない。ラストも驚愕だった。恐ろしくて戦慄である。犯人は作られるらしい。今でも。
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戦後の警察による拷問冤罪事件を繙くほぼノンフィクションの骨太作品。 筆者本人のルポルタージュ風現在視点と神の過去視点から描かれていて、緊迫感とリアリティが凄まじい。
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昭和25年、静岡県で起きた一家殺害事件。通称「二俣事件」。犯人は逮捕されたが、実際は警察の自白強要によって事実を捻じ曲げられた。無実を訴えるも、結果死刑判決が下された。しかし、その後弁護士軍団の頑張りにより、無罪となる。これは日本史上初の冤罪事件として取り上げられた。 当時のこと...
昭和25年、静岡県で起きた一家殺害事件。通称「二俣事件」。犯人は逮捕されたが、実際は警察の自白強要によって事実を捻じ曲げられた。無実を訴えるも、結果死刑判決が下された。しかし、その後弁護士軍団の頑張りにより、無罪となる。これは日本史上初の冤罪事件として取り上げられた。 当時のことを調べようとする安東は、これを小説化し、独自の解釈で、本当の犯人は誰だったのか、調べていく。 実際に起きた冤罪事件「二俣事件」。 wikiで調べてみると、事件の概要が載せられていて、その詳細を仮名を交えて描かれています。 今ではあり得ないような警察の強引なやり方、印象操作に怒りを感じずにはいられませんでした。 正直この事件をあまり知らなかったのですが、ザ・昔といいましょうか、昔ならではの横暴さ、強引さが際立っていました。 それでも真実に迫るある刑事には、様々な生き様を感じました。警察組織に刃向いながらも、本当の真実を追おうとする姿に世の中捨てたもんじゃないなと思いました。 刑事だけでなく、警察に対抗する弁護士軍団の長きにわたる活躍にも感動しました。 きちんとした説得力で、法廷にもっていく弁護士の姿には、清々しく感じました。 小説なので、後半あたりからは独自の解釈で、真犯人を当てています。実際の事件にそれが当てはまるかはわかりませんが、執念に追う刑事や弁護士の活躍に頭が下がるばかりでした。 第三者の立場として、あまり知ることのなかった多くの冤罪事件に自分はどう向き合っていけばいいのか。 なかなか関係者ではないので、報道による情報に頼らざるをえません。 事実はともかく、曖昧な部分はあくまでも推察でしかありません。全てを信じずにいられる冷静な判断が問われるなと思いました。
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昭和二十五年、静岡県で発生した一家殺害事件、二俣事件。警察と司法が組んで行われた犯人捏造の実態とは? 事実に基づく衝撃作。
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