歪んだ波紋 の商品レビュー
リテラシーという言葉はもうすっかり浸透していて、たびたび見かける。マスコミが、インパクトのある事柄を追い、激しい言葉で煽り、少々の誤りはスルーする。それがまかり通るのは読者にも責任があると私は思う。著者は元新聞社勤務だったそうなので、ジャーナリズムに関して関心のある人なら面白く読...
リテラシーという言葉はもうすっかり浸透していて、たびたび見かける。マスコミが、インパクトのある事柄を追い、激しい言葉で煽り、少々の誤りはスルーする。それがまかり通るのは読者にも責任があると私は思う。著者は元新聞社勤務だったそうなので、ジャーナリズムに関して関心のある人なら面白く読むと思う。でも記者の人物造形がステレオタイプというか、よくある小説という印象になってしまった。ほんとうにすみません。武田砂鉄さんの解説のほうがおもしろかった。これだけでも読む価値あり。
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「ニュース」という名の悪意に翻弄される記者たち。「誤報」を通じて現代社会の虚と実に迫る、著者会心の報道小説。 「事実が真実とは限らない」という。「事実」は嘘偽りのない本当に起こった事柄、「真実」はその事柄に解釈が加えられる。新聞記事にも当然、新聞社の方針や記者個人の思想が介入して...
「ニュース」という名の悪意に翻弄される記者たち。「誤報」を通じて現代社会の虚と実に迫る、著者会心の報道小説。 「事実が真実とは限らない」という。「事実」は嘘偽りのない本当に起こった事柄、「真実」はその事柄に解釈が加えられる。新聞記事にも当然、新聞社の方針や記者個人の思想が介入していることを知っておかなければならない。
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吉川英治文学新人賞受賞作。地方紙記者の報道を通して現代社会の虚と実に迫る。ジャーナリズムの姿を・・・。ここまで描くとは!
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マスメディアによる<誤報>が題材の連作短編集。著者の【先輩】でもある横山秀夫さんを意識し過ぎたのか、些からしくない作風に思えるものの、旧態依然とした新聞社に視聴率至上主義のテレビ局、PV稼ぎに躍起となるネットメディアなど、マスメディア全方位への警鐘を声高に鳴らす作品である。所謂民...
マスメディアによる<誤報>が題材の連作短編集。著者の【先輩】でもある横山秀夫さんを意識し過ぎたのか、些からしくない作風に思えるものの、旧態依然とした新聞社に視聴率至上主義のテレビ局、PV稼ぎに躍起となるネットメディアなど、マスメディア全方位への警鐘を声高に鳴らす作品である。所謂民間企業になぜ情報を管理する権限があるのかは確かに深く考えたことがなかった。既得権益に甘んずることで、新興勢力に足元を掬われるというのも決して有り得ないことではない。これからは情報の受け手にもより一層のリテラシーが求められる時代だ。
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読書メーター見ても、ブクログ見ても(ブクログまだそんな件数ないですが)賛否両論分かれまくってるのですが、個人的には さすが塩田作品!こうまとめるかー、と圧巻でした。 短編集かな?と思いつつ、少しずつ少しずつ絡み合って最後の章でバシッと繋がる。その爽快感と、後は本当にいい意味でなんですが、 塩田作品によく描かれる、この「救いようもない事実」の連続。そしてそれに救われることないままに立ち向かって生きようとする人々。これが塩田作品の良さだと個人的には感じております。 最初の「黒い依頼」が一番オーソドックス。近畿新報の中島と桐野が市長選とひき逃げ事故の記事で虚報を出していたことが発覚。最後の奥さん(美咲)のシーンで「え?え?やっぱり許せてなかったってこと??」とパニックになりながら、次章へ。 「共犯者」の相賀さんが結局一番いい人なんだ~~。いや、しかし途中で「全て自分の筆跡だった」時は本を閉じて叫びかけた。相賀さんも少なからず加担してしまっていた。同期の自殺の近辺整理から、とんとんとんと繋がっていく様が面白かった。あとこの辺りから、章の最初に描かれてる記事やインタビューの繋がりについても考えるのが面白い。 「ゼロの影」も絶句した~~……。もちろん、夫・新一の姿をビデオに見つけた時ですよ。嘘だろ…って呟いたのは私だけですかね。最初の記事、何だと思ってたら、報じなかった記事の代わりの記事だった!夫に言わなかったの、賛否両論あるとは思いますが、私はあれでよかったと思う。というより言わない方が絶対妻としては辛いわけで、それでも子どもを守りたいという辺りが塩田作品の真骨頂ですよ。(※個人的見解です。笑) 「Dの微笑」はあれよあれよと言う間にストーリーが展開し、TVのバラエティー番組の捏造が発覚するのですがそこからの展開が……。安田にも驚いたが、お前もか、と。 実はこの章まで読むと、全て「ファクトジャーナル」「安大成」には繋がっている。むむむ、というところで最後の章。 「歪んだ波紋」で、安田・桐野、そして他のメンバーも加えたフェイクニュースでメディア崩壊を策略する一派がいたことが発覚。そしてそれに安大成も絡み合っていく。これ、三田園のお母さんの怪我って偶然だったの?たぶん偶然じゃないよね?週刊紙の奴辺りがやったのかなと勝手に推測。 いやそれにしても、何が正しい情報で何を判断して生きていくのか??今生きる者に突きつけられてるメッセージだなと。 報道出身の塩田作品だからこそなせる、 また、救いようもない事実に戦う人々を描く作品。 面白かったです。
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読み始めてから連作短編集だと気付いたけれど、五篇とも虚報や誤報がテーマで、現実にもあり得そうな話だし、結末が気になって一気に読みました。 著者の塩田さんの元新聞記者という経歴もあって、余計リアルに感じたのかも。 最後の「歪んだ波紋」は、ウェブメディアの編集長があんな簡単に言葉だけで信用しちゃうものなの?って違和感が残ったな、、、 記者に限らず、自分で見て考えることを放棄しては駄目だと思いました。
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連作短編集。それぞれが薄くつながっていて、最後に大クライマックスを迎える、という体。やっぱり好きです、こういう系。フェイクニュースに焦点が当てられているけど、背筋が寒くなる内容。こんなの、フィクションの中での話でしょ、と軽く扱いきれない現状を思ってゾッとする。
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