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病い、内なる破局 の商品レビュー

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2022/04/01

第1章から第5章までは、タイトル通り、病いによって、自分がいかに内側から破局し、自らの現実を受容できない状態にあるのかが描かれる。冬のような凍てつきさえ感じる。第6章に至って、新たな芽吹きを見る。病いを得た人が、新しいセルフイメージを持って、もう一度生き始める様子が語られる。読者...

第1章から第5章までは、タイトル通り、病いによって、自分がいかに内側から破局し、自らの現実を受容できない状態にあるのかが描かれる。冬のような凍てつきさえ感じる。第6章に至って、新たな芽吹きを見る。病いを得た人が、新しいセルフイメージを持って、もう一度生き始める様子が語られる。読者がもし、ちょうど今、病いの見えないトンネルの中にあるならば、救いとなる、この章から読むのが良いかもしれない。

Posted byブクログ

2022/03/26

自己免疫性疾患で苦しんだことのある哲学者による、病いと治療における自己同一性のお話。 医療はもはやエビデンスベースが主流で、病気にフォーカスをあてた行為が行われる。 だが患者は人である。教科書通りにはいかないし、苦悩する。 この世には患者が抱える病気のデータはあっても、その患者...

自己免疫性疾患で苦しんだことのある哲学者による、病いと治療における自己同一性のお話。 医療はもはやエビデンスベースが主流で、病気にフォーカスをあてた行為が行われる。 だが患者は人である。教科書通りにはいかないし、苦悩する。 この世には患者が抱える病気のデータはあっても、その患者自身のデータはない。 患者は病いによって自己同一性の破局を経験し、苦悩する。 医療者はその苦悩にフォーカスする必要がある。 治療においては、一方的に治療行為を行っていくパターナリズムになってはいけない。その患者が自分自身で破局を克服していけるように、きめ細やかに目と心を配り、それを手助けすることが重要なのである。 本書を読んでそのように感じた。 また本書は、病気に限らず 大きな自己を揺るがすイベントがあったときに、私たちはどう対応するのか? 自分を自分足らしめるのは何なのか? ということも考えることができる。 ボリュームはコンパクトで、文章も比較的にわかりやすいが、充実した一冊である。 哲学に慣れていない方、病気がない方にも、おすすめします。

Posted byブクログ