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左手のための二重奏(5) の商品レビュー

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2021/12/02

1巻ほぼ丸々シュウと灯による演奏会とはこれまた豪華な。作者が作品を始めた時から書きたかったエピソードというだけあり、かなりの力の入れようとなっているね 正式なコンクールなどの演奏会ではないけれど、クリフトン・ラノが主催する時点で立派なリサイタル。それこそ、これに選ばれなかったこ...

1巻ほぼ丸々シュウと灯による演奏会とはこれまた豪華な。作者が作品を始めた時から書きたかったエピソードというだけあり、かなりの力の入れようとなっているね 正式なコンクールなどの演奏会ではないけれど、クリフトン・ラノが主催する時点で立派なリサイタル。それこそ、これに選ばれなかったことを残念に思う奥村の存在が判りやすい だからこそ、シュウの存在は浮いてしまうわけだね。シュウは自分がこの舞台に選ばれるに相応しい人間と思っていないし、客を満足させられる人間とも思っていない。そもそも左手に宿る灯に追いつけたとも思えない シュウにとっては、この舞台を通して自分の音楽を確かめる点がメインとなる機会となるわけだね グレゴリオがシュウに叩き込んだ自身の音。それを御影に感じさせただけでもシュウはある程度の成果を収めたと言える。でも、それを支える灯の音はシュウより遥か高みに居るんだよね。それが客に伝わってしまうし、シュウ自身理解させられるから演奏が楽しいものにならない。迷宮の中に迷い込んでしまう ある意味、これは予見された未来。この時点では失敗と言っていい出来かもしれない でも、ラノは「…そうだ それでいい」と囁くんだよね。足掻き、揺れるシュウの演奏を肯定する。なら、シュウが目指すのは左手と同じくらいの完璧な演奏ではなく、藻掻き続ける演奏になる 灯の音を目指して追いつこうとしていたから差が見えた。そうではなく、灯の音を再現するつもりで、灯の音に近づくつもりで。シュウが目指すべきは完璧な演奏ではなく、人と人を繋げる演奏になるわけか そうして藻掻き続けて、達するべき場所まで達したから新たな境地を鳴らせるということか シュウと灯、右手と左手。二人による二重奏は遂に聴衆から拍手を貰えるものになったようで まだまだ完璧には程遠いだろうけど、シュウが演奏者として一つの何かを達成した意味では充分と言える結果だろうね そして、御影の演奏、今後の進路。次巻は新章というだけ有って、新たな物語が始まるきっかけが描かれそうだ

Posted byブクログ