実践 アクションリサーチ の商品レビュー
組織に働きかけながら、そこで生じることをリサーチして、研究としてまとめる、というのが、アクション・リサーチということなのかな? 「組織を変えるのが、理解するために良い方法だ」みたいなことをクルト・レヴィンが言っていたと思うが、まさにそれを形にしたのが、アクション・リサーチという...
組織に働きかけながら、そこで生じることをリサーチして、研究としてまとめる、というのが、アクション・リサーチということなのかな? 「組織を変えるのが、理解するために良い方法だ」みたいなことをクルト・レヴィンが言っていたと思うが、まさにそれを形にしたのが、アクション・リサーチということか。 そして、この本では、内部者自分の組織に働きかけ、そしてそれをリサーチとして研究論文にしていくことについてのガイドブック。 わたしは、組織の変革は、外部のコンサルの手助けがいるかもしれないが、内部者がやらないとうまくいかないと思っている。なぜなら、ワークショップはうまく行っても、それが終わった後で、現実にどう結びつけていくための働きかけのほうが大切だと思うので。 システム論的にも、問題となっているシステムを変えるのは、そのシステムの中にいる人が自分の行動を変えるということが必要なわけで、それは外部者よりも圧倒的に内部者の行動が大切。 さて、そうなると、それをリサーチにつなげると、どうなるんだろう?という問いに応えるのが、本書。 といっても、わたしは、当面、そういうリサーチをやる予定はないので、この本を読むのは、主として組織への関わり方の部分。 内容的には、いわゆる経験学習や組織開発的な話し、そして、センゲなどのシステム思考を含む学習する組織の話しで、そんなに新しいものがあるわけではないのだが、それをリサーチを同時に行うという視点で見直すと、いろいろと新たな気づきがあった。 たとえば、ダブル・ループ学習という概念の活用とか、ファーストオーダーとセカンドオーダーの違いとか。 とくに面白かったのは、社内政治に関与することの大切さ。この話しはとても大切なことだと思っているのだが、組織開発の文献では、あまりこうした政治とか、権力の話しはでてこない。結局のところ、好むと好まないにかかわらず、社内政治にはかならず巻き込まれるのだ。そこをどうにかマネージすることが、内部者にとって、最大のポイントなのだ。どういう形で対処するかは別として、内部者は政治的なレベルで働きかける必要がある。 この辺のところを明確に概念化してあることが、とてもよかった。これも多分、内部者が組織開発にかかわりつつ、それをリサーチとして論文化していく、という文脈があったからこそ、明確に浮かび上がってきた論点であると思った。 そして、この辺りが言語化されることで明確になったのは、ある組織に関わろうとすると、その組織の内部と外部における権力関係に意識的にならなければならない、ということ。そして、関わる人は、政治的に中立ではありえず、なんらかのポジションをとったうえで、関わるということがむしろ望ましいということ。さらには、こうした権力関係は、フーコーの知識/権力論とつながる方向性であること。 組織開発においても、社会構成主義的なアプローチが増えているが、ダイアローグ的なものだけではないなにかが必要としている気がしていた。それは、多分、知/権力ということだったんだろう、と今さらながら、気づいた。
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第1章 アクションリサーチ入門 自分自身の組織を探究する アクションリサーチ概説 三つの聴衆、声、実践 アクションリサーチ・サイクルを回す アクションリサーチ・サイクル 準備ステップ:コンテクストと目的 メインステップ メタ学習 アクションリサーチの質と厳密性 第2章 アクショ...
第1章 アクションリサーチ入門 自分自身の組織を探究する アクションリサーチ概説 三つの聴衆、声、実践 アクションリサーチ・サイクルを回す アクションリサーチ・サイクル 準備ステップ:コンテクストと目的 メインステップ メタ学習 アクションリサーチの質と厳密性 第2章 アクションの中で知る 知ることと学ぶこと 経験に即した認識法 真生性 一人称プラクティスとしてのアクション・サイエンスと協働的・発達的アクション・インクワイアリー ジャーナリングを通した一人称スキルの発達 二人称のスキル 第3章 アクションリサーチを理解する 実践知としてのアクションリサーチ アクションリサーチの土台 アクションリサーチの哲学 内面(interiority) アクションリサーチのモード(modalities) アクションリサーチを通した組織開発 第4章 内部組織のプロジェクトを構築・選択する アクションリサーチ・プロジェクトを構築する アクションリサーチ・プロジェクトを選択する 内部者アクションリサーチの計画書を書く さらなるアクションリサーチのために 第5章 アクションリサーチ・プロジェクトをデザインし実行する 計画による変化のプロセス アクションリサーチを通しての計画による変化 学習メカニズム 介入としてのデータ生成 テクノロジーの役割 やめ時をどのように知ればよいか? 第6章 内部者アクションリサーチのレベル間ダイナミックス変化のレベル間ダイナミックス 戦略のレベル間ダイナミックス アクションリサーチにおける分析のレベル 第7章 アクションの中で組織を研究するフレームワーク 組織診断 システム思考と実践 変化と学習 第8章 自分自身の組織を研究する 研究者と(対象)システムの焦点 第1象限 第2象限 第3象限 第4象限 住宅でのアクションリサーチ 第9章 事前理解、役割の二重性とアクセス 事前理解 役割の二重性:組織での役割と研究者としての役割 アクセス 第10章 倫理と組織政治をマネージする 倫理 関係の質 価値づけのための二人称の共同探究 手続きと倫理委員会 内部者アクションリサーチと倫理 政治 自分自身の組織を研究することの政治 政治的関係をマネージする 役割と政治、倫理を統合する 統合の事例 第11章 内部者アクションリサーチを書き上げる アクションリサーチの学位論文 博士論文の課題構築と執筆 研究の目的と合理性 コンテクスト 方法論と探究の方法 質について議論する ストーリーと成果 アクションリサーチャーの自己省察と学習 経験と理論の光に照らされたストーリーの省察 広いコンテクストへの拡張と利用可能な知識の明瞭化
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