キャンドルフォード の商品レビュー
読んでいてとても気持ち良いなと思った。ラークライズの家を離れキャンドルフォードで生活するローラの成長は『赤毛のアン』ほどの賑やかさはないけれど穏やかにゆっくり流れている。読んでいる間は自分の時間も穏やかに過ぎていた。
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第十九章 近所の人々 大工の店 郵便局のグリーンを挟んだほとんど真向かいに簡素な民家があったが、そこは表が大工の店になっていた。どんな天気のときも、ニ枚開きの重い扉は開け放してあって、中では足首が隠れるほどの白いエプロンをかけた男たちが、台の上で鋸をかけたり、型どりをしているのが...
第十九章 近所の人々 大工の店 郵便局のグリーンを挟んだほとんど真向かいに簡素な民家があったが、そこは表が大工の店になっていた。どんな天気のときも、ニ枚開きの重い扉は開け放してあって、中では足首が隠れるほどの白いエプロンをかけた男たちが、台の上で鋸をかけたり、型どりをしているのが見えた。 そこに住んでいるのは三人のウィリアムだった。父親と息子、孫息子だ。通いの職人にも手伝ってもらいながら、三人は大工仕事の他に、その辺りの建具の仕事を一手に引き受けていた。 ドアもマントルピースも窓枠も、出来上がった既製品はなかったので、彼らが作っていた。家具の製作や修理もした。亡くなった人のための棺も作った。村にここに代わる店はなかった。 三人のウィリアムの中で一番若いウィリーが一番先にボ-ア戦争で死んだ。そしてまもなく、二番目のウィリアムが仕事をしながら倒れた。その父は翌年の冬に死んだ。 こうして大工の店はとりこわされ、その後建設会社のショ-ルームになった。 教会のオルガンと、村の家々に残る美しい家具が、三人のウィリアムの形見だった。 ...時代はどんどんと移り変わり、古いものや、習慣や、行事は見向きもされなくなって行った。 時間もお金もかかる、職人の作る技術の粋を集めた確かなものより、安くて見栄えが良く、取り敢えずの役に立つものが何かと持てはやされた。 現代の私たちの暮らしはどうだろう。相変わらず量産品に囲まれてはいるが、手作りや、職人の高い技術によるものも、時には見直されたり、尊ばれたりしているのかも知れない。
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