虚談 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
全部嘘の話であると書いてある。 ナッちゃんと呼ばれたりしているから、作者とおぼしき主人公が出てくる。 どれも本当のことに思える。 でも、小説って嘘のことを書いてあるのは普通である。 でもリアルがそこはかとなくあるような気がする。 とくに気に入ったのは『クラス』というはなし。 デザイン系の学校のクラスメイトの石垣島出身なのに関西弁の御木さんは主人公より10個くらい年上、相談されて飲みに行く。死んだ妹が会社にいる、なんなら家のなかにもいると言う。しかし御木さんには妹などいないのだった。それは妹ではないと話をする。別の日のイラストレーターの個展でクラスメイトの久米田にあう。そこで御木さんのはなしをする。久米田は御木さんは7年前に死んだという。樹海で首をつったという。電話もしたのに電話番号を書いたメモもない。御木さんの写った写真を探す。入学したときにもらった名簿も見る。そこにも御木という名前はない。御木というひとは存在しないのだ。久米田は存在しないひとの葬式に出たという。 面白くないわけないですよね、このはなしが。 すべて嘘なのか、本当はどこにあるのか。ここにこうやって存在している自分だって本物かどうかなんてどうやって証明できるのか。 考え出したらいちばん好きな感じのはなしだった。
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すべて三文字のカタカナタイトルが付けられた怪談集。 「レシピ」が本書の華麗なる嘘の世界を開く。 スイートポテトにココナッツミルク。 言葉だけの印象では何も怖くない。 そして出てくるおばけも怖いわけではない。 それより怖いのは、どこまで妄想なのか、どこまで真実なのか、そっちの方だ...
すべて三文字のカタカナタイトルが付けられた怪談集。 「レシピ」が本書の華麗なる嘘の世界を開く。 スイートポテトにココナッツミルク。 言葉だけの印象では何も怖くない。 そして出てくるおばけも怖いわけではない。 それより怖いのは、どこまで妄想なのか、どこまで真実なのか、そっちの方だ。 「クラス」も、同じく虚実ない混ぜの物語だ。 妹を失ったクラスメートの話のはずだったのに、そもそもの前提を全てひっくり返される。 「キイロ」も子供の遊びから始まる怪しげな物の存在。 子供の頃はなんとなく見よう見まねで拝んでみたり、あるいは恐れてみたりする。 大人になるに従ってそれが信仰に変わり…ということを考えると、目に見えぬものに対する畏怖という、原始宗教の始まりを思わせる(解説でも同様の指摘がある)。 これは全部嘘ですよ、と言われても、それ自体が嘘なのでは、という迷宮に入るような物語。 著者の語り手としての力を感じられる短編集である。
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題名から「虚」と書かれているので、嘘なんでしょうけど、1話目の最終行に「嘘」と書かれていてあっけにとられました。まんまと物語に嵌っていますが、その不安感を楽しめなかったです。 嘘を主軸にした作品だと分かっていても、整合性のない不安定なお話を、楽しむ技量がなかったです。自分では思...
題名から「虚」と書かれているので、嘘なんでしょうけど、1話目の最終行に「嘘」と書かれていてあっけにとられました。まんまと物語に嵌っていますが、その不安感を楽しめなかったです。 嘘を主軸にした作品だと分かっていても、整合性のない不安定なお話を、楽しむ技量がなかったです。自分では思いつかない視点から繰り出される部分は、面白かったと言えなくもないですが、結局は自分で理解できる範疇のお話が好きなんだなと思いました。ま、そりゃそうか。私には、難しかったってことです。
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「談」シリーズ(と言うのかな…?)は作品ごとに肌に合う合わないの差が私は激しい。 虚談は面白かったなー。 短編集だけど、それぞれは実は連作になっていて、最後の一行で今までの話を覆したり、読者をちょっと不安にさせたりする。 明確な答えを欲して小説を読む人には勧められないけど、ふ...
「談」シリーズ(と言うのかな…?)は作品ごとに肌に合う合わないの差が私は激しい。 虚談は面白かったなー。 短編集だけど、それぞれは実は連作になっていて、最後の一行で今までの話を覆したり、読者をちょっと不安にさせたりする。 明確な答えを欲して小説を読む人には勧められないけど、ふわっとした掴みどころのない話が好きな人は嫌いではない小説だと思う。
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短編の連作、という性質だからかもしれないが、好みの話とそうでない話が混在している印象。怪談として怖い話と怖くない話が混じった百物語を聞いているような感じのまま、読み終えてしまった。 長編シリーズと違うところは、それぞれに繋がりがないから、もやもややしたままになったのかな。個人的に...
短編の連作、という性質だからかもしれないが、好みの話とそうでない話が混在している印象。怪談として怖い話と怖くない話が混じった百物語を聞いているような感じのまま、読み終えてしまった。 長編シリーズと違うところは、それぞれに繋がりがないから、もやもややしたままになったのかな。個人的には、長編の方が好きである。
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