父の暦 の商品レビュー

谷口ジロー(著者)

2021/11/28

2017年に亡くなった谷口ジローの作品を、A4厚手の豪華版でリマスターしたコレクションシリーズの第1弾。

実は谷口ジロー自身のマンガを読むのは初めてだったのだが、あまりにも緻密すぎて細密画を思わせるタッチ、そして痛切なストーリーに心を奪われてしまった。

本作、『父の暦』は長らく疎遠であった父の死によって故郷である鳥取に戻り葬儀を迎えた主人公が、親戚などとの対話から父が母と離婚した理由、父が自身に向けて寄せていた長年の愛情を知り、疎遠であった自身の行動を悔やむ、というストーリーである。父と子、刺激の少ない故郷と東京、という関係性の中で、誰しもにとって共感できる部分がある、そんな優れた作品であり、何度でもページを開きたくなって読み返したくなるような魅力に溢れている。

値段は安くはないが、永久保存版として間違いなくずっと手元に残すだろうし、そう考えればその価値は十分にあるコレクションシリーズ。以降の刊行も非常に楽しみである。