「知の商人」たちのヨーロッパ近代史 の商品レビュー
どんなに素晴らしい思想であっても、それが多くの人に伝わるためには、印刷・出版という形態が必要であった。そして印刷出版業者にとっては、例えその内容に強い思い入れがあったとしても、出版物はあくまで商品であり、そのことによって思想が、思想家にとっても商品とならざるを得ない。 本書は...
どんなに素晴らしい思想であっても、それが多くの人に伝わるためには、印刷・出版という形態が必要であった。そして印刷出版業者にとっては、例えその内容に強い思い入れがあったとしても、出版物はあくまで商品であり、そのことによって思想が、思想家にとっても商品とならざるを得ない。 本書は、「印刷・出版業」の視座から、16世紀から20世紀の近代ヨーロッパ思想の伝達・受容過程を、多彩なエピソードにより描いたもの。 出版される側については、ボルテール、ホッブス、アダム・スミス、スコットランド啓蒙思想、ウェーバー、マルクス主義系著者など有名な顔触れが多く大体は分かるが、出版する側については外国のことでもあり、ほとんど知った出版社もなくあまり興味を持てなかったのがちょっと残念。 ただ、30編以上収録されているので、「これは面白い」と興味を惹かれる話があるだろうと思います。
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元々経済学全集の月報に掲載された文章をまとめたもののようで、その手の学問的知識をもっているひとにとっては、いろいろ学ぶことの多い有益な本だとは推察しますが、前提知識がない私は、あまり楽しめませんでした。【2023年8月5日読了】
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一般的読者が読んでも、歴史的事実を知ること以外に得られるものは多くないとの印象。ある事実に対して歴史の中の位置付けを考察するような記述はあまり見当たらない。 一方でおそらく西欧諸言語で書かれているであろう圧倒的量の原典に臨んでいることは明白であり、そのファクトに対する弛まざる努力...
一般的読者が読んでも、歴史的事実を知ること以外に得られるものは多くないとの印象。ある事実に対して歴史の中の位置付けを考察するような記述はあまり見当たらない。 一方でおそらく西欧諸言語で書かれているであろう圧倒的量の原典に臨んでいることは明白であり、そのファクトに対する弛まざる努力とリスペクトは見習いたい。 扱う時代が下るにつれ、知的生産物とイデオロギーの関連が多くなり興味深い内容が増える。 19世紀末の象徴派詩人と印象派画家とで社会への態度、そして社会からのフィードバックが異なり、したがって両者に思想的分化が生じた。さらには印象派の中でも分解が生じて、一方は芸術を左翼的思想の喧伝に用いたようである。
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