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時間の解体新書 の商品レビュー

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2022/04/10
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メディアで手話を目にする機会が増えているなと感じていた。日本でもようやく教育言語として承認されたというのが、結構最近の話で驚く。なぜ日本国内では手話よりも口話が長らく基本言語とされてきたのか、帝国主義的な側面、ナショナリズム(国歌斉唱)的な側面から取り上げている。このことは一般的なのだろうか。幾分資料に不足を感じるが、口話の優位性が戦後もずっと続いてきたことも含めて、興味深い側面だ。 本書は「時間」における「現在」という概念を手話における視点や出産という事象を手掛かりに解明しようとする。手話は口話(少なくとも日本語)においては規定できない「現在」を揺さぶる機能を有している。まさに口話の優位性を揺さぶるわけである。 出産を手掛かりとした第3部の議論が特にそうなのだが、全体的に材料の必然性がどうにも薄く感じられる点が気になる。それでも面白い議論だった。 メディアの選択肢が増えつつも、視覚的な媒体の隆盛が気になるところで、これもまた技術の刷新が消費へと回収されていく様相とも捉えられる。口話も手話も相対化できるとするならば、コミュニケーション手段の相対化によって社会が逆照射され、例えば手話がもっと一般的になるように、多様な社会へと変化する契機になるとも考えさせられる。

Posted byブクログ