春どきのフレッド伯父さん の商品レビュー
最近のマイブーム、エムズワース卿関連。今回は比較的出番は少ないものの、主な舞台は彼のブランディングス城。そして嫡男ボシャム子爵初登場。父親によく似た脳内お花畑の嫡男だ。ぼんくら次男はビジネスに目覚めてアメリカの義父の元でバリバリやっているのに長子ってのはこうなんだろうな。 ところ...
最近のマイブーム、エムズワース卿関連。今回は比較的出番は少ないものの、主な舞台は彼のブランディングス城。そして嫡男ボシャム子爵初登場。父親によく似た脳内お花畑の嫡男だ。ぼんくら次男はビジネスに目覚めてアメリカの義父の元でバリバリやっているのに長子ってのはこうなんだろうな。 ところで主役のフレッド伯父さんことイッケナム伯爵。ふだんはハンプシャーのカントリーハウスに美人でやりての妻にしっかり手綱を取られているのに、年に5日くらいは妻の手をすり抜けてロンドンで破天荒な大冒険を繰り広げ、甥っ子ポンゴははらはらどきどき。 しかしこの伯父さんのハチャメチャぶりはあっけにとられるほどで、これは天性のトラブルメイカーというか詐欺師の素質あり。頭の回転の早さはとてもついていけない。 いまの世知辛い時代だからこそ、こうしたウッドハウス本て心が休まるな、と、しみじみ。 これでエムズワースもので日本で入手できるものはほぼ読了したので(ボドキン家はまだだが)初心に戻ってジーヴスを最初から読み直そう。
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ブランディングス城を舞台に、エムズワース卿のブタにまつわるトラブル、若いカップルのケンカの仲裁、可愛い甥っ子の借金の解消のため、長身痩躯で粋な伯父さんことイッケナム卿がその頭の回転の速さを駆使して万事解決へとのりだす。 (フレッド伯父さんモノとしては1冊目、ブランディングス城もの...
ブランディングス城を舞台に、エムズワース卿のブタにまつわるトラブル、若いカップルのケンカの仲裁、可愛い甥っ子の借金の解消のため、長身痩躯で粋な伯父さんことイッケナム卿がその頭の回転の速さを駆使して万事解決へとのりだす。 (フレッド伯父さんモノとしては1冊目、ブランディングス城ものとしては5冊目の長編) 今回、主人公たるフレッド伯父さんが頭の回転の速い口先の回る人物なので、他の愉快な登場人物達を上手く手玉にとって翻弄させていく様がお見事。伯父さんのルックス描写が素敵なロマンスグレーに描写されていることも相俟って、ほんと鮮やかな映像で想像できるのが読んでて楽しい。映画を見てるみたい。 いつものウッドハウス作品で、一つの出来事が玉突き事故の様に次から次へと伝播しながら様相を変化させてく様が楽しく、あっというまに読了。
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可哀想なポンゴ.(トウィッスルトン)の奴は、しょっちゅうあいつのフレッド伯父さんの話を僕にしてくるんですが、その時奴の目に涙が浮かんでなかったと言うなら、僕には涙がどんなものか、そいつを見てもわからないってことでしょう。ハンプシャー州イッケナム、イッケナム.ホ-ルのイッケナム伯爵...
可哀想なポンゴ.(トウィッスルトン)の奴は、しょっちゅうあいつのフレッド伯父さんの話を僕にしてくるんですが、その時奴の目に涙が浮かんでなかったと言うなら、僕には涙がどんなものか、そいつを見てもわからないってことでしょう。ハンプシャー州イッケナム、イッケナム.ホ-ルのイッケナム伯爵は、一年の大半はそこの田舎で過ごすんです。 ですが時々いやらしい具合に首輪をすり抜けて逃げ出して、アルバニ-のポンゴのフラットを襲撃するんです。それでその度毎回、あの哀れな青年は何かしらの魂の試練にさらされるんですよ。あの叔父さんの問題っていうのは、御年六十何歳かになってはいるんですが、帝都に到着するやいなや、弱冠二十二歳の若造みたいな気分になっちゃうところなんです。「過剰」って言葉の意味をご存知かどうか分かりませんが、それが田舎から出てきたポンゴのフレッド叔父さんがロンドンにいるとき、必ずしでかすことなんですよ。-本文より。 イギリス貴族はこうだと分かる、気位が高いどころかとんでもなく高慢チキで、高圧的。大金持ちの貴族はほんの一握りだが、その金に群がるのはいかさまペテン師だけでは無い。親族だって負けてはいない。博打には金を惜しまないが、身内の無心には耳を貸さない。徹底している。そんな中、我らがフレッド叔父さんは過剰な愛に溢れる人だ。ゆけゆけフレッド叔父さん、甘美と光明を振りまくために。
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オリジナルは1939年。Uncle Fred in the Springtime 森村さんのウッドハウスは、ジーヴスの5冊目くらいまで読んで、その後10年以上読んでいなかった。 いつのまにかシリーズは完結して、他シリーズも続々刊行されている。 森村さんの仕事量に感服した。 ...
オリジナルは1939年。Uncle Fred in the Springtime 森村さんのウッドハウスは、ジーヴスの5冊目くらいまで読んで、その後10年以上読んでいなかった。 いつのまにかシリーズは完結して、他シリーズも続々刊行されている。 森村さんの仕事量に感服した。 今回はジーヴスものではないので、気持ちも新たに、久々に手に取ってみた。 相変わらずのふわふわした世界と、言葉尽くしのユーモアにニヤニヤさせられる。 シェークスピアやテニスンのパロディが頻出しているようだけど、わかっていて読んだらもっと笑えるだろうなあ。 今回はエムズワース卿(このシリーズも読んでいなかった)も登場するが、主人公?たる、フレッド伯父さん、こと、イッケナム卿がなかなかのキャラクター。 ちょっと読んだだけでも危ういところだらけなのに、自信満々のこの人物をすっかり気に入ってしまった。 エムズワースは喋り方も老人ぽい訳になっていたけど、その少し後輩であるイッケナムは一人称も【俺】で若々しくて可愛い。 ドローンズクラブ、サー・ロデリック・グロソップなど懐かしい名前が登場して、やはりジーヴスやバーティと同じ世界の住人なんだなあと感動。 (語り手のポンゴも、名前だけはバーティシリーズに出ていたらしい) 相変わらずの、優雅でわちゃわちゃした彼らの生活にうっとりした。 ※手元にはお金はないけど、基本は金持ちのお話 3人出てくる老貴族は、甥や息子から見ればみんな狂っているし、女性陣はいつも最強。ウッドハウス節は健在だ。 今回はちょっと登場人物が多すぎた感もあり、最後は突然のハッピーエンドになるけど、読んでいる間はとても楽しかった。 三谷幸喜のコメディなどとも近い笑いだと思う。 イッケナムが貴族年鑑を読むのは、「変な名前を見て笑いたいときだけ」…爆笑。 さすが、アメリカで、長く、普通の人として商売してきただけある。(後書によると、爵位継承位最底辺の育ちだったのに、あれよあれよと爵位を得てしまったという背景あり) イッケナムの、イカれた思考の中にもごく稀に、普通の人らしい感覚があって興味深い。少なくとも表面上は、他の貴族より一枚上手。 同時収録の短編、「ゆけゆけ、フレッド伯父さん」も、読んでいるあいだ、ずっと脳内に吹き替えの笑い声が響いて来るギャグ小説だった。 最後に。 イッケナムってどんなスペルだろうと調べたら↓ あの長い本名はFrederick Altamont Cornwallis Twistleton,5th Earl of Ickenhamでした。写すだけでも大変だ。 名前といえば、さらに、レジナルドのあだ名がどうしてポンゴなんだ?という一点。 かっこいい本名があるのに謎すぎる。
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