となりの代理人 フットボール・エージェント(2) の商品レビュー
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外様からはなかなか見えてこない、サッカーの代理人業を描いたシリーズ二巻目である。 今巻はシーズンオフに起こる移籍模様が描かれていて、まさにこれこそ代理人業の本題とも言うべき内容が目白押しである。 主人公が推薦した監督によって降格が決定したドサンコーレ札幌。 監督の留任が決まりつつも、こちらも同じく主人公の事務所に所属するチームの中心選手・佐藤大和の動向もまたこの巻前半のトピックになっている。 代表選手にとって二部に落ちたチームは難しい部分が多いし、別のチームに移るのは珍しいことではない。 ただ、その背景にある、ファンには見えてこない実情が垣間見える「CASE:7【思い出アルバム】」は非常に読み応えのあるエピソードであった。 別の代理人からの横やりなどもリアルだなと。 代理人を変更する類も往々にして耳にするし、こうした横槍は日常茶飯事なのだろう。 また、このエピソードで興味深いのは日本型の違約金システムの紹介だ。 欧州型では普通「契約解除金」という形で設定されているのだが(メガクラブの主力では往々にして1億ユーロを超える)、日本型では「契約残り年数×年俸」となるらしい。 複数年契約が一般的でなかった時代を思うと、そこから生まれてきた独自文化なのかなと思われるが、興味深い違いである。 後半では、1巻でも登場した田丸選手の移籍の他、ドサンコーレから依頼されたエースの穴埋め移籍である英国人ポール・カーティスの移籍や、幕張イーリスで長期離脱後にモチベを落としていた宮倉健介選手のケアなどなど。 様々なケースに携わりながら、例えば「地方クラブへの移籍は奥さんの出身地が関係している」だとか。 あるいは移籍専用サイト「byscout」の話だとか。(なんと55万人の選手が登録されているプレー動画を中心にした選手情報サイトだそうで) サッカー選手のキャリアの転換点(33歳というベテラン年代)の話だとか。 選手が経験しやすい「関節ねずみ」の除去手術の話だとか。 興味深い話が目白押しになっている。 選手の移籍という感情のせめぎ合いをテーマにしつつも、触れられている周辺情報もまた非常に面白い。 とにかく一話一話が濃く、サッカーに対する知見を一段高めてくれる良質なエピソードばかりである。 このシリーズはおそらくずっとそうだろう。文句なしに星五つで評価したい。
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