気候安全保障 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「自由で開かれたインド太平洋」は日本政府の制作概念でもありますが、 本書では、この地域での気候変動に関連する安全保障に焦点を当てて書かれています。 それぞれの筆者が各章を担当され、独立して読めるので、 私は特に太平洋島嶼国の気候安全保障に注目して読み進めました。 気候安全保障とは、安全保障とは、といった理論・概念的な議論が前半にあり、 後半は気候安全保障の諸課題、という章があるように、実際の枠組みや取組について紹介があります。 環境や気候の変化が従来の安全保障の脅威となる、という視点から、 気候変動による脅威は従来の安全保障に加え、重要課題となっている、という、安全保障の概念自体を刷新する形での捉え方も含めて、 国防の視点、援助の視点、移住大国間関係(日米、米中など)、幅広く書かれています。 具体的なコミュニティレベルでの議論はあまりなかったかなという印象です。 太平洋島嶼国について詳しく書かれていた論稿は、今回特に興味深く読みました。 島嶼性、アンバランス性、パラドックス、などと、この地域のユニークさをあらためて学ぶことができました。 マグロ漁業権での収入は、5つの太平洋諸国の政府収入の45~60%。 しかし、気候変動で将来的にマグロの群れが東方に移動すると予想され、ライセンス料なしの公海での漁獲に移る部分が増える。 現在太平洋の30億ドル以上の価値を持つとされる漁業権であるが、これにより、該当域の太平洋諸国8か国は2050年までに総政府収入か年間最大15%減少する恐れがあるという。 など、大変興味深い構造と予測される構造の変化が印象的でした。
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