書物と貨幣の五千年史 の商品レビュー
「書物と貨幣の五千年史」とあるが、タイトル通りの書物や貨幣についての歴史の本ではない。 著者はブラックボックス(不可視化されたもの)について一冊を通して歴史をたどり説明していて、その代表として書物や貨幣を挙げている。 経済、社会、文学、マンガ、物理などさまざまな分野から人類史と...
「書物と貨幣の五千年史」とあるが、タイトル通りの書物や貨幣についての歴史の本ではない。 著者はブラックボックス(不可視化されたもの)について一冊を通して歴史をたどり説明していて、その代表として書物や貨幣を挙げている。 経済、社会、文学、マンガ、物理などさまざまな分野から人類史とブラックボックスについて語られている本書は本論がわかりにくく理解する難易度はかなり高いと感じた。 個人的に情報(書物やデータなど)はものごとを可視化してわかりやすくするものという認識だったが、そもそも「数」や「文字」がブラックボックスでありそれによって表されるものもブラックボックス(=不可視)になっていると筆者は主張している。 その意味では不可視化という表現も分かりにくいように思い、文字や数などを通すことで本質的に理解できなくなる、という意味で捉えた。 本文ではiPhoneを例に挙げ、iPhoneのメモ機能で原稿を書いているしiPhoneの機能はある程度知っているが、端末としてどんな構造になっているかわからないという意味でiPhoneもブラックボックスである、と記載されていた。 もしかしたら戦争で地図の上から兵器で街を破壊する(一緒に多くの人を葬る)ことが簡単にできてしまうことも地図がブラックボックスだからこそできてしまうことなのかもしれない。 結局この本の内容について理解できたとは思えなかったが、先述した通り本論が分かりにくくなっている構造は書物がブラックボックスである(不可視化)ということを表現していて、本人から離れた言葉(書物)を本人の意図通りに理解することはできないということを示している、という点だけは理解できたと思う。 情報の氾濫するこの時代に、たくさんの情報を得ているからといってなんでも知った気になることの奇妙さを強く意識付けられた。
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電子決済は現金のやり取りを、電子書籍の普及は書店で本を買うという行為を不可視化しました。現代に至るまで、技術の進歩は多くのことをブラックボックス(BB)化してきました。BB化した社会をどのように捉えて生きていくかということを論じた(哲学的な)本です。 BBを逆に辿って解体してい...
電子決済は現金のやり取りを、電子書籍の普及は書店で本を買うという行為を不可視化しました。現代に至るまで、技術の進歩は多くのことをブラックボックス(BB)化してきました。BB化した社会をどのように捉えて生きていくかということを論じた(哲学的な)本です。 BBを逆に辿って解体していき(リバースエンジニアリングの手法)起源を解き明かしていく態度が正しいのか、BB化され便利になった環境をそのまま受け入れて生きていくのがいいのか、正解はわかりませんし正解はあるのでしょうか。 超大企業の中で働いているけど自分の労働の理由がわからずクソ仕事だと思って仕方なく働いている(=ブルシットジョブの)人たちがBBを考えることは、よりよく生きる助けになると思いました。 そして巻末の引用文献を一通り眺めると現代思想の最前線が掴めるような感じです。 カズオ・イシグロ、フィリップ・K・ディック、ボルヘス、ユク・ホイなど…
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現代人の行動や身の回りの物や手続きがブラックボックスと化していることを考察している一冊。 書名にある書物や貨幣はブラックボックスについての取っ掛かりとして電子書籍と電子決済を例に扱われ、その後はブラックボックス全体の話に移り変わっていきます。 書物と貨幣の歴史書かと思い手に取りま...
現代人の行動や身の回りの物や手続きがブラックボックスと化していることを考察している一冊。 書名にある書物や貨幣はブラックボックスについての取っ掛かりとして電子書籍と電子決済を例に扱われ、その後はブラックボックス全体の話に移り変わっていきます。 書物と貨幣の歴史書かと思い手に取りましたが、内容の趣向が違っていたようです。 前半は歴史的変遷を、後半はSF小説や漫画・アニメを取り上げて話を進めていきます。 現代社会の仕組み全体は、大きなブラックボックスと小さなブラックボックスによる入れ子構造となっています。 ブラックボックス一つを構成している組織や個人は複雑で、どこかでエラーや欠損が起きた場合の修復は極めて困難であると感じました。
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他著書だが書物は「人類と哲学」、貨幣は「未来に先回りする思考法」で興味をもち、これら合わせたテーマなので読んでみた。
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