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遊女と遊郭の色世界 の商品レビュー

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2021/11/14

・博学こだわり倶楽部編「遊女と遊郭の色世界」(KAWADE夢文庫)を読んだ。かういふ類の書で遊郭と言へば吉原である。吉原は遊郭を代表する。だから吉原関係の書は多くある。研究書から文庫まで、その内容も多岐にわたり、その気になつて調べれば吉原のほとんどすべてが分かるのではないかと思ふ...

・博学こだわり倶楽部編「遊女と遊郭の色世界」(KAWADE夢文庫)を読んだ。かういふ類の書で遊郭と言へば吉原である。吉原は遊郭を代表する。だから吉原関係の書は多くある。研究書から文庫まで、その内容も多岐にわたり、その気になつて調べれば吉原のほとんどすべてが分かるのではないかと思ふ。ただし、それほど多くあるからには、どこに何が書いてあるかを知らずに調べるのは容易ではない。結局、分からずに終わるといふことも多い。本書の最後に参考文献が出てゐる。三谷一馬から始まる。三谷の図聚は有名で、見てゐるだけで楽しい。しかし、疑問を解消してくれるかとなると甚だ心許ない。さういふ書ではないから当然であるが、かういふ図聚だけでは分からないことが多いのである。他の書も同様、その著者の専門領域は詳しいが、他のことはちよつとといふ感じで、いづれも帯に短したすきに長しである。その点と言へるかどうか、本書は様々なことがごく簡単に書いてある。 これ1冊でかなりのことが分かる。見開き1頁にはなつてゐないものの、それに近い項目が大部分である。物足りない点はあるが、これはしかたない。ごく簡単に大雑把に吉原を知ることができる。これまでにも類書があつたかもしれない。しかし、さういふ点で、現状ではこれが最も手頃なものかもしれない。 ・例へば「岡場所で検挙された遊女は『吉原送り』の刑に」といふ項がある。取り締まりは何度もあつたのだから捕まる遊女も多かつた。彼女達はどうなつたか。「岡場所は取り潰され、そこで働いていた遊女は江戸から追放されるか、『吉原送り』にされた。」 (78頁)といふ。この「吉原送り」は「非公認で売春した罰として、吉原で5年間(のちに3年間に短縮された)、遊女としてのタダ働きを強制すること。」(同前)である。彼女達は入札で妓楼に引き取られた。そんな1人に勝山がゐた。「【勝山】江戸のファッションリーダーは、湯女から太夫へと華麗に変身」とある項で採り上げられてゐる。この勝山の着た「広袖の派手な綿入れ」(212 頁)が丹前で、「武家風の髪形」(同前)が勝山髷である。いづれも彼女のトレードマークであり、江戸で大流行した。湯女の時代のことである。さうして捕らへられて吉原送りとなるが、彼女は「吉原でもたちまち人気を獲得して太夫まで上り詰める」(213 頁)。遊女は多かつたから、中にはこんな成功を収める者もゐた。ところが彼女は「人気絶頂であったにもかかわらず、突如吉原を引退。その後の行方は不明である。」(同前)波瀾万丈の生涯を送つたかもしれない勝山だが、遊女のその後は、「『年季明け(年明 き)』まで勤め上げるか、死んで投げ込み寺に捨てられるか、客に身請けしてもらうか」(141頁)の3つしかなかつたといふ。勝山の行方不明はどれになるのであらうか。死んで捨てられたか、人知れず身請けされたか、これが分からない。もしかしたら「足抜け」(144頁)かとも思ふのだが、これに成功するのは至難の業であつた。何しろ吉原からの脱走である。監視の目は厳しい。心中かとも思ふが、心中なら噂にならう。かういふ遊女もいたといふことですませたくはないのだが、書いてないからには分からない。他の書でも分からないのであらう。子細に見ていけばかういふことは他にもあらう。しかし、簡単に吉原を知るには役に立つ。足抜け失敗の折檻の具体的な様は、例へば新内「明烏」の浦里雪責めの段を聞けば良い。本書は吉原の書である。当然、ここには書きにくいことも書いてある。第五章は「これぞ、プロの悦ばせ方」である。所謂手練手管、かなり具体的である。御一読あれ。

Posted byブクログ