1,800円以上の注文で送料無料

魂を撮ろう の商品レビュー

4.8

12件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2022/09/15

尾道の図書館で読む。 ジョニー・デップ主演映画「MINAMATA」鑑賞時、ネットで背景を確認して入浴図が遺族の意向により公開が停止されていることを知った。本書では遺族の言葉を引用して詳しく書かれているのだが、映画にはなぜ使われたのか、そのあたりははっきりしない。 土門拳の被爆者を...

尾道の図書館で読む。 ジョニー・デップ主演映画「MINAMATA」鑑賞時、ネットで背景を確認して入浴図が遺族の意向により公開が停止されていることを知った。本書では遺族の言葉を引用して詳しく書かれているのだが、映画にはなぜ使われたのか、そのあたりははっきりしない。 土門拳の被爆者を撮影した写真の被写体となったひとたちも、土門が数年後に再撮影を求めたときには拒否したときく。土門はそうした被害者たちの姿勢に怒ったらしい。 本書によると撮影した写真家に著作権があり、被写体にはなんの権利もないと書かれている。

Posted byブクログ

2024/05/25

本書で描かれているのは、戦争ジャーナリストとして有名な写真家ユージン・スミスとその妻アイリーンの物語である。彼らは、1971年から三年間に渡って日本で水俣病の報道写真を撮り続けた。狂気を孕むほどに写真にのめり込むユージンはもちろんのこと、もう一人の主人公アイリーンも出自含めてとて...

本書で描かれているのは、戦争ジャーナリストとして有名な写真家ユージン・スミスとその妻アイリーンの物語である。彼らは、1971年から三年間に渡って日本で水俣病の報道写真を撮り続けた。狂気を孕むほどに写真にのめり込むユージンはもちろんのこと、もう一人の主人公アイリーンも出自含めてとても興味深い人物である。水俣は三十以上も歳が離れた二人を結びつけ、そして水俣プロジェクトの終了とともにその関係は終了させた。その中で残された写真は米ライフ誌に掲載され、水俣の悲劇を世界に知らしめるとともに、環境問題の注目の高まりを後押しした。 ユージンはジャーナリズムに関して次のように語っていたという。それは、ジャーナリズムだけではなく、広くプロフェッショナルにも通じる精神ではないかと感じた。 「ユージンはジャーナリストには二つの責任がある、と、よく語っていたという。一つは写真を見る人たちへの責任、もう一つは被写体への責任である、と。この二つの責任を果たせば、自ずと出版社や編集者への責任は果たされる、とも。だから、編集者の言うことに惑わされてはいけない。そのために、出版社と闘い、自分の理想を貫かなくてはいけない。目指すものを撮る。自分の思う、いい作品を。それをすれば、結局は編集者や出版社への責任も果たせることになる、というのがユージンの考え方だった」 「客観なんてない。人間は主観でしか物を見られない。だからジャーナリストが目指すべきことは、客観的であろうとするのではなく、自分に責任を持つことだ」 著者は『女帝 小池百合子』を書いた石井妙子。よく取材されていて、とても読みやすく過去のドラマに没入できた。ユージンを決して善人ではなく、問題を抱えた人物として描いている。水俣における住民の葛藤や、高度成長に水を差すことにもなりかねない決定をできなかった通産省やチッソの行動もよく説明されている。お薦め。 ---- この本を読んですぐに昨年度公開されていた『MINAMATA』を観た。ジョニー・デップ主演で、真田広之や浅野忠信もキャスティングされた作品だが、あまり話題にはならなかったかもしれない。遺族の意志を尊重したアイリーンがその使用を封印した「入浴する智子と母」を事前に遺族に相談することなく映画での使用を許諾したことがどこかで取り上げられていたことを思い出した。 映画は悪くはないが、それだけでは住民の苦悩や葛藤、ユージンとアイリーンの背景などが伝わりきらないと感じた。それは枝葉ではなく、このプロジェクトの核でもあったであろう。 映画を観た人にこそ読んでもらいたい本。そして、ぜひとも『苦海浄土』を読んでほしい。いつかまた『苦海浄土』を読まなくてはと感じた。 ---- 『苦海浄土』(石牟礼道子)のレビュー https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062748150 『女帝 小池百合子』(石井妙子)のレビュー https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B0873YLSWN

Posted byブクログ

2022/05/13

熊本県水俣市 チッソの工場排水により水俣病が起きた チッソが責任を認めずそれと闘う患者達 患者達をカメラで撮影したアメリカ人夫婦の話 歴史的事実程度の認識しかない自分を恥じた。この人達がいるから今安全に暮らしているのだと思う。アメリカ人夫婦の数奇な巡り合せも加わり、一気に読んで...

熊本県水俣市 チッソの工場排水により水俣病が起きた チッソが責任を認めずそれと闘う患者達 患者達をカメラで撮影したアメリカ人夫婦の話 歴史的事実程度の認識しかない自分を恥じた。この人達がいるから今安全に暮らしているのだと思う。アメリカ人夫婦の数奇な巡り合せも加わり、一気に読んでしまった。 ユージン スミス 入浴する智子と母 JNCの水俣病関連支出額 4000億円 水俣病被害者 7万人

Posted byブクログ

2022/04/15

読み終えたあと しばし放心してしまう 優れたノンフィクションに出逢ったときに 経験する そんな一冊です 単なる固有名詞としてしか知らなかった ユージン・スミスさん アイリーンさん ミナマタ チッソ 有機水銀中毒 水俣闘争 それらの単語が 次から次へと 有機的につながっていく そ...

読み終えたあと しばし放心してしまう 優れたノンフィクションに出逢ったときに 経験する そんな一冊です 単なる固有名詞としてしか知らなかった ユージン・スミスさん アイリーンさん ミナマタ チッソ 有機水銀中毒 水俣闘争 それらの単語が 次から次へと 有機的につながっていく それも密接な関連性を持ってつながっていく 石牟礼道子さん 渡辺京二さんの 著書の時とは また違った感動を 持つことができた ユージン・スミスさんの一枚 アイリーン・スミスさんの一枚 石牟礼道子さんの著書に 出逢うたびに 思い起こす一冊になりそうです

Posted byブクログ

2022/02/13

映画『MINAMATA』関連の記事で知り気になって読み始めたら…さすが『女帝』の著者石井妙子さん、序章からぐいぐい一気読み。 時系列を遡って見えてくる偶然や必然の出会いには人間の愚かさと同時に底力も感じるが、水俣に対する仕打ちには(特定の信仰は持たないが)巡り合せた神仏を怨みたく...

映画『MINAMATA』関連の記事で知り気になって読み始めたら…さすが『女帝』の著者石井妙子さん、序章からぐいぐい一気読み。 時系列を遡って見えてくる偶然や必然の出会いには人間の愚かさと同時に底力も感じるが、水俣に対する仕打ちには(特定の信仰は持たないが)巡り合せた神仏を怨みたくなる。私自身は裁判を報じるニュースや同時期のビッグニュースを微かに記憶している世代。伝えていかなければ。

Posted byブクログ

2022/02/02

映画『MINAMATA』をきっかけに読んだ。映画より本のほうがあとに書かれているが、取材は14年以上前まで遡る。アイリーンとユージン、それぞれの個人史や水俣病前史まで、映画の時間軸よりずっと長く書かれている。アイリーンの家族の歴史もかなり遡って掘り下げられていて、それだけで一遍の...

映画『MINAMATA』をきっかけに読んだ。映画より本のほうがあとに書かれているが、取材は14年以上前まで遡る。アイリーンとユージン、それぞれの個人史や水俣病前史まで、映画の時間軸よりずっと長く書かれている。アイリーンの家族の歴史もかなり遡って掘り下げられていて、それだけで一遍の映画ができそうだ。 映画がどこを脚色しているかも、ある程度わかる。アイリーンとユージンの結婚までのいきさつはほぼフィクション。暗室の火事もたぶんフィクション。一方で、ユージンがチッソで受けた暴行は、映像より実際のほうが過酷だ。少しショックだったのは“水俣のピエタ”と呼ばれた有名な写真は、被写体家族の意思に反して使われたということ。アイリーンは長く封印していた使用許可を、この映画には出した。俳優による映像の再現度もかなり高かったから、実物を使わない選択もあったと思う。 水俣病の発見から認定、保障の闘争も、詳しく、しかし手際よくまとめられていて、改めてその苦闘を思い知らされる。これを読むと、水俣市が映画上映を後援しなかった事情、一方でつなぎ美術館は上映した事情もおぼろげに見えてくる。 読みやすく心をつかまれるノンフィクションで、映画を観て水俣に改めて関心を持った人には一読を勧めたい。そしてもう一本の映画『水俣曼荼羅』も観たくなった。

Posted byブクログ

2022/01/22

水俣被害がこんなにも複雑な事件だったなんて まったく知らなかった 高度経済成長期の真っ只中、国は未来を担う企業としてチッソを擁護、チッソは廃水のことを知りながらも廃水を流し続ける、地域住民は仕事を失うことを恐れ病を隠したり被害者を差別した者も数多くいた 負のスパイラルがすべてを飲...

水俣被害がこんなにも複雑な事件だったなんて まったく知らなかった 高度経済成長期の真っ只中、国は未来を担う企業としてチッソを擁護、チッソは廃水のことを知りながらも廃水を流し続ける、地域住民は仕事を失うことを恐れ病を隠したり被害者を差別した者も数多くいた 負のスパイラルがすべてを飲み込み、未曾有の惨劇となった 本書は“水俣被害”を中心に、報道カメラマン ユージン・スミスと水俣によって人生の扉を開いたアイリーンの3つが重なり合う ユージンの生い立ちから第二次大戦で戦場カメラマンとしての功績とその後の苦悩、ハーフに負い目を感じていたアイリーンがアイデンティティを確立する過程が描かれ、すべてが水俣に集結する 水俣闘争はあまりにも深く悲惨な事件 たしかにユージンの写真はものすごいインパクトがあり、一瞬にして公害の恐ろしさが伝わる ユージンが撮った水俣被害の写真は世界的に有名になった、けれどその影で辛い思いをしている人たちも少なからずいる 被写体になった水俣の人たちはいつまでも悲惨な姿を写した写真を見せたいだろうか 公害は恐ろしい、こんなことあってはならない 世界はSDGsな社会を目指している、SDGs自体には賛成だけど過去を見過ごしての未来はあり得ないと思う 水俣被害の闘争はまだ続いている

Posted byブクログ

2022/01/03

見て、感じて、そして、自分で考えてくれ、というユージン・スミスのメッセージはそのままこの本にも当てはまる。 水俣病のことは一通り習ったはずだが、ユージン&アイリーンのこの問題への関わり方を通して改めて考え直す事ができた。

Posted byブクログ

2021/12/07

日本の高度経済成長の背景で、水俣病などの公害被害があったことを忘れてはならないと思う。そして、この公害問題の複雑さ。被害に遭われた方同士でも確執があり、また、住民が労働の場として、チッソの恩恵にあっているのも事実。何かの繁栄の背景には、誰かの犠牲があるのかもしれない。本当に複雑な...

日本の高度経済成長の背景で、水俣病などの公害被害があったことを忘れてはならないと思う。そして、この公害問題の複雑さ。被害に遭われた方同士でも確執があり、また、住民が労働の場として、チッソの恩恵にあっているのも事実。何かの繁栄の背景には、誰かの犠牲があるのかもしれない。本当に複雑な問題だと思う。 

Posted byブクログ

2021/10/21

“MINAMATA ”を観たあと読みました。映画の疑問点が色々と補完できて、一つの映画作品として仕上げるために舞台を変えたり加減したところも確認できました。 企業と公害被害者という関係だけでなく、国策、マスコミ、様々な問題が、その辛い状況の上に幾重にも積み重なる。特に地域の人間関...

“MINAMATA ”を観たあと読みました。映画の疑問点が色々と補完できて、一つの映画作品として仕上げるために舞台を変えたり加減したところも確認できました。 企業と公害被害者という関係だけでなく、国策、マスコミ、様々な問題が、その辛い状況の上に幾重にも積み重なる。特に地域の人間関係が壊れる様子はあまりに辛く哀しい。 そして国の対応には憤怒の炎が立ち上がる。 ユージンの作品はいつかこの目で見てみたい。

Posted byブクログ