1,800円以上の注文で送料無料

テムズ川の娘 の商品レビュー

4

2件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2021/11/28

持ち歩くのが大変な700頁で、開く手も痛いぐらい。読了に丸1週間かかりましたが、余韻も大きい。 心臓が止まっていたはずなのに生き返った少女。彼女のことを行方不明だった家族だと言い募る3組。ある者は自分の娘、ある者は自分の孫、ある者は自分の妹だと。 彼女が運び込まれた酒場では物...

持ち歩くのが大変な700頁で、開く手も痛いぐらい。読了に丸1週間かかりましたが、余韻も大きい。 心臓が止まっていたはずなのに生き返った少女。彼女のことを行方不明だった家族だと言い募る3組。ある者は自分の娘、ある者は自分の孫、ある者は自分の妹だと。 彼女が運び込まれた酒場では物語を紡ぐ人が重宝がられ、その様子がとても面白い。上手い話は時に美味い物よりも良い酒の肴になるものなのですね。 各人の話に心を奪われて最後まで。特に王子と奴隷の間に生まれたと噂される彼の話は、それだけでじゅうぶんひとつの話として語れそうです。

Posted byブクログ

2021/10/03

Amazonでおすすめに出てきたので、何の気なしに、試し読みをしてみた。 魅了されてしまった! 舞台は19世紀のイギリス、テムズ川のほとりである。 冒頭で語られるのは、白鳥亭なる店のなりたち、常連客の面々、女将と夫のなれそめなどである。 もとの文がよいのか、翻訳がよいのか、つまり...

Amazonでおすすめに出てきたので、何の気なしに、試し読みをしてみた。 魅了されてしまった! 舞台は19世紀のイギリス、テムズ川のほとりである。 冒頭で語られるのは、白鳥亭なる店のなりたち、常連客の面々、女将と夫のなれそめなどである。 もとの文がよいのか、翻訳がよいのか、つまり両方がよいのだろう、物語るとはこういうことかと、嬉しくなるような文章だった。 まあ、一度読んでみてほしい。パソコンからなら試し読みができる。 集まる客の色合いは店それぞれだが、白鳥亭の客は皆「語り聞かせ好き」である。 ろうそくの灯とエールビールに助けられて、クレソン栽培者も、土砂採取人も、自分の見た話、聞いた話を語り出す。 その冬至の夜もそうだった。 そこに、大男が現れた。 醜悪な顔をして、雄叫びを上げたその男はふらふらとよろめいて倒れる。 彼の抱えていた人形を受け止めたのは、白鳥亭の末息子ジョナサン。 ずっしり重いその人形は――人形ではなく、死んだ少女だった。 二人の躰が奥の部屋に運ばれ、信頼の厚い看護師が呼ばれる。 大男は治療され、少女の死亡は確認され――されたはずなのに、少女の目が開いた。 そのうえ、胸が上下している。呼吸しているのだ。 生き返った! 動く少女を目の当たりにした面々は皆驚いた。 驚いて、そして――それを、物語にしはじめた。 蘇りという"奇蹟"の物語は口々に語られ、聞いた者がまた誰かに話し、一帯に広められた。 すると、うちの娘ではあるまいかという人が現れたのだ。 しかも、3人。 『テムズ川の娘』は、犯罪小説ではない。 殺人事件、探偵登場、「あなたが犯人です!」という話ではない。 しかしミステリーではある。解くべき謎はあるのだ。 この子は誰なのか。 この子になにがあったのか。 これをテーマに話は進んでいく。 これが、まったく退屈しない。面白くてたまらない。 出てくる人々が皆物語を持っているのだ。 白鳥亭の女将夫婦はもちろん、その末息子、常連の面々、農場主、その家族、看護師、実業家、牧師、家政婦、写真家etc.etc.etc...... 皆、なにかしらの過去を、事情を、秘密を抱えて、今、ここにいる。 だから、出てくる人々は、哀しみに沈んでいてさえ、生き生きとして見える。 一人一人の物語が寄り集まってできる物語に、引き込まれずにはいられない。 実際、テムズ川にラドコット橋は存在する。 すぐ近くには、白鳥の名を冠する宿とパブがある。 その店の女将がマーゴットの名を継いでいるのか、物語好きの客が集うのかは知らない。 ただ、老舗のその店が、舞台となった1880年代にもそこにあったのは間違いない。 作者ダイアン・セッターフィールドの語り口に、すっかり魅了されてしまった。 日本で紹介されているのは、この『テムズ川の少女』と、デビュー作の『13番目の物語』だけである。 もう一冊あるという既刊のものでもいい、新しいものでもいい、彼女の他の物語もぜひ読んでみたい。 翻訳を心待ちにしている。

Posted byブクログ