リバーサイド・チルドレン の商品レビュー
人間になりたかった少年の話。 カンボジアを旅する、ということで、買ったわけですが、舞台カンボジア、だけで選ぶのはなかなかリスキーですね。 とはいえ、純粋に読んだ感想としては、「この作家は何を目指してるんだろうか、と、他の作品も読んでみたくなるね」でした。 とはいえ、急な旅人...
人間になりたかった少年の話。 カンボジアを旅する、ということで、買ったわけですが、舞台カンボジア、だけで選ぶのはなかなかリスキーですね。 とはいえ、純粋に読んだ感想としては、「この作家は何を目指してるんだろうか、と、他の作品も読んでみたくなるね」でした。 とはいえ、急な旅人の参入、推理の唐突さ、など、推理パートは要らなかったんじゃないかな的な急な軽さを見せる残念さを持ちながらも、根底にあるストリートチルドレンへの眼差し的なものは、読み応えがありました。 ——— ゴミ捨て場を山と呼び、ゴミ拾いを狩りと称する。天敵である警官には黒と名付ける。暗号めいた呼び名は、現実をうまく隠すためのオブラートなのだ。直接口にするには重たくて生々しい現実を、別の言葉に置き換えて和らげる。それは、この世界で生きるための、他愛のない、けれど切実な術のひとつだった。
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3回か4回目かな。 実際にカンボジアに行ってから読んでみるとまたかなり視点が変わる。 結構分厚い本だし、大筋は覚えていたけど細かい部分は覚えていなかったから何度でも楽しめる。 読むたびに新しい発見が増えるとても素敵な本。
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デビュー作の『叫びと祈り』では砂漠をいくキャラバンに始まり、果ては病気が蔓延した未開の原住民の集落という設定でもミステリを成立させた梓崎優さん。 その著者の第一長編の舞台がカンボジア。さらにストリートチルドレンが主人公のミステリーと、またとない設定にそれだけで強い興味を惹かれまし...
デビュー作の『叫びと祈り』では砂漠をいくキャラバンに始まり、果ては病気が蔓延した未開の原住民の集落という設定でもミステリを成立させた梓崎優さん。 その著者の第一長編の舞台がカンボジア。さらにストリートチルドレンが主人公のミステリーと、またとない設定にそれだけで強い興味を惹かれました。 前半で描かれるのはストリートチルドレンの日常。社会や大人、そして警察につまはじきにされながらも仲間たちで助け合い、日々を精一杯過ごす子どもたち。しかしその日常も暗転。 仲間の一人が警官に殺されてから、穏やかな日常は崩壊。混乱と不安、そして絶望のなか一人、また一人と子供たちは殺され、そして崩壊していくコミュニティ。社会から顧みられない子供たちの絶望が、強く心に突き刺さります。 前作の『叫びと祈り』でも特殊な設定を成立させる描写力にも感嘆しましたが、このリバーサイド・チルドレンでもその描写力は健在。ごみを拾い生計を立てる子供たちの生活。子どもたちを追い込む社会や大人の闇。天候や自然の描写。 それらが複合して高いレベルを保っているので、慣れない設定でも自然と入ってくるし、子どもたちが追い込まれていく様子もより切実に胸に迫ってきます。 そういった描写のなかにときおり挟まれる、少しセンチメンタルな抒情を誘う文章がいいアクセントになります。 社会から顧みられない子供たちが死んでも、本来なら誰も気にしない。しかし死体には過剰な装飾が施されたり不明な点も多くあります。そもそもなぜ子供たちは殺されなければならなかったのか。そのあまりにも異様な動機は、いまそれなりに保障された生活を送っている自分には理解しがたいものでした。 しかしその理解しがたさ、狂気を放出しなければならなかった理由に思いをはせると、この殺人劇以上に世界は残酷で、そして理不尽にあふれていることに気づかされます。どうしようもない現実に目をそむけたくなる。 そうした展開の果てに待つ祈りに満ちた物語の結末。特殊な設定にも臆せず挑む著者だからこそ描けた救いのない事件。そして透明感に満ちた祈りの文章を書けることができる著者だから描けた終着点。 梓崎さんだから描けた世界や子供たちに向けた、祈りに満ちたミステリーだったと思います。
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読み終えるまで、だいぶ時間がかかってしまった。カンボジアのストリートチルドレンが主役となる本格ミステリ。題材が重く、理不尽な状況に心が折れそうになる上に、中盤まで読み進めないと事件が起こらない。なぜストリートチルドレンの中で殺人が起こってしまったのか、この物語の根幹とも言える謎の...
読み終えるまで、だいぶ時間がかかってしまった。カンボジアのストリートチルドレンが主役となる本格ミステリ。題材が重く、理不尽な状況に心が折れそうになる上に、中盤まで読み進めないと事件が起こらない。なぜストリートチルドレンの中で殺人が起こってしまったのか、この物語の根幹とも言える謎の解明は梓崎優氏の真骨頂ではあるだろう。ただ、物語の展開の遅さ、探偵役の唐突さはマイナス点といえる。
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『叫びと祈り』が最高だったので、続けて買ってしまった。主人公のミサキがカンボジアでストリートチルドレンとなった経緯や、ストリートチルドレンの日常や周囲からの認識を、かなり細かく書かれていて胸が苦しくなる場面も結構あった。精緻に書かれたそれらの描写によって、事件の真相を知った時、読...
『叫びと祈り』が最高だったので、続けて買ってしまった。主人公のミサキがカンボジアでストリートチルドレンとなった経緯や、ストリートチルドレンの日常や周囲からの認識を、かなり細かく書かれていて胸が苦しくなる場面も結構あった。精緻に書かれたそれらの描写によって、事件の真相を知った時、読み手は異国の論理を受け入れることが可能になっている。構成が丁寧なので、事件が始まるまでのやや長い前フリを超えれば、もうノンストップで続きが読みたくて仕方なくなるのではないか。 殺意は避けられぬ衝動(叫び)であり、その殺意に対して理解を試みることが祈りなんだなと解釈していて、この『リバーサイド・チルドレン』でも主人公の心の動きが祈りへと向かうシーンで、軽く泣きそうになった。理解しようと抗う姿は尊い。『叫びと祈り』の登場人物と少しリンクする場面があるので、先に『叫びと祈り』を読むことを推奨します。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
昔日のプロレタリア文学的な意図を感じさせる、ストリート・チルドレンの告発的な描写に、無意味な殺人と奇妙な死体装飾の目的を探るホワイダニットを組み合わせたミステリー。『叫びと祈り』もあまりといえばあんまりな殺人の動機がメインのホワイダニットだったから、このへんのが作者の得意なフィールドなんだろう。ただミステリとして見た場合、動機が無茶すぎるのは確か。この動機の無茶さを物語として成立させたかったのは分かるから、否定はしないが。それより主人公が過剰にダメダメくんに見えるのをなんとかしてもらいたい。普通にリアリズムで描けばそうなってしまうのだろうが、だからこそ踏みとどまって欲しい。この手の作者が主人公をいじめて喜んでるように見える描写と社会派リアリズムの組み合わせって最悪に思えるんだが。
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ミステリーとしての完成度は高くありません ストリートチルドレンとなった日本人少年の成長物語として面白いと思う
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