ことばの「省略」とは何か の商品レビュー

尹盛熙(著者)

2022/04/23

『言語学バーリ・トゥード』からの本書。たまたまなのですが、なんか最近、言語学づいてます。しかし、川添愛の本は気軽な読み物でしたが、ユンソンヒのこの本はめちゃくちゃ論文っぽく読むのに苦労しました。しかし、ことばの「省略」を、経済性と表現力というシンプルな原則で追い込んでいく展開は、結構スリリングでした。取り上げられる事例の面白さや、章ごとに挟み込まれるコラムも含め、ページをめくる推進力は落ちませんでした。「官房長官最終兵器説」などは電車の中で笑ってしまったし。さらに第四章からの多言語との比較で、韓国語が取り上げられた時にやっと著者の名前を確認して、彼女の言語能力に驚愕した次第です。それまで日本人の著者と疑わずに読み進めていたのです。ついつい、言語がテーマになると日本語という閉じた世界の中の話に終始しがちですが、「省略」という切り口で韓国語、日本語を比較するなんて、それだけでこの本の存在価値は大きいと思います。