写真集 ぼくは独り暮らしの老人の家に弁当を運ぶ の商品レビュー
1ページ1ページめくるたびに、心にぐっと何かが押し寄せてくる。そして涙。 他人事ではなく自分事。 どう生きるか、自分の理想とする生き方を改めて考えさせられた。
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この写真集に写っている老人たちを「被写体」と呼ぶのでしょうか?一枚一枚は一人暮らしの高齢者の食事という日常ですが、シャッターを押す側に与えるものすごい圧力が、漂ってきます。写真だけじゃなく著者(?)が自分が弁当を配達している老人の姿や暮らしにカメラを向けるまでの葛藤を綴る文章が、...
この写真集に写っている老人たちを「被写体」と呼ぶのでしょうか?一枚一枚は一人暮らしの高齢者の食事という日常ですが、シャッターを押す側に与えるものすごい圧力が、漂ってきます。写真だけじゃなく著者(?)が自分が弁当を配達している老人の姿や暮らしにカメラを向けるまでの葛藤を綴る文章が、それぞれの写真を繋ぐ縦糸となります。そして「きっと国が守ってくれる。きっと五体満足で生きていける。きっと痴呆にはならない。いつかきっとぽっくり逝くことができるだろう…。世の中や自分自身をあきれるほど都合よくしか見ることができないでいる僕の手元で、L版プリントは容赦なく写真で在り続けていた。」という述懐に至ります。ここにきて老人たちからの圧は、福島あつしを通して、自分の心もかき乱れるのです。この写真はコロナ前のものだそうですが、今回の災厄において家の中と孤独と食事に向き合っていることは年齢だけの問題ではなくなっています。だからこそ、この写真集に登場する普通の一人暮らしの老人に「悲惨さ」を感じるのではなく「生きる」強さを感じるセンサーが働いているのかもしれません。
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