ジャック・リゴー遺稿集 の商品レビュー

ジャック・リゴー(著者),松本完治(訳者),亀井薫(訳者)

2022/04/08

大衆受けはしないだろうが、良い作品群。ほとんどが発表を予期されていなかった作品のため、つまらないといえばつまらない。しかし、彼の言葉には赫奕と輝く何かがある。それは世界の徹底的な意味からの脱落である。そんな世界と無意味という意味を齎してしまう私の乖離、更にはそんな私と自らのアイデンティティとなるパチョグ卿との乖離が甚だしい。
彼はアルコールとヘロインの依存症になっていたらしいが、この行為を誘起したのは彼のアイデンティティ（の象徴）、即ちパチョグ卿だろう。そして、そこに眩暈のように食らいつく無意味を連呼する私と、打ちひしがれる余地もない世界の有様に、彼は混濁し、そのために明晰さ、純粋さを保っていたのではないだろうか。