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ハプスブルク帝国1809-1918 の商品レビュー

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2021/08/15

 ヨーロッパ列強の一角を成していたオーストリアについては、ウィーン会議を主導したタレーラン、48年革命、普墺戦争の敗北によるドイツからの切り離し、長期に君臨したフランツ・ヨーゼフ一世、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエボ事件、そして敗戦による帝国の終焉など、ヨーロッパ史におけ...

 ヨーロッパ列強の一角を成していたオーストリアについては、ウィーン会議を主導したタレーラン、48年革命、普墺戦争の敗北によるドイツからの切り離し、長期に君臨したフランツ・ヨーゼフ一世、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエボ事件、そして敗戦による帝国の終焉など、ヨーロッパ史における重要事項に関して断片的な知識があるだけだった。そもそもどういった国家だったのか、帝国として多民族に対してどのような統治を行っていたのか、なぜオーストリア・ハンガリー二重帝国という形態を取ったのか、などについて系統だったことは、ほとんど知らない状態だった。  今回、『第二次世界大戦の起源』等で名高いA.J.P.テイラーの著作が文庫化されたので、勉強の思いで読むことにした。  歴史的な経緯で、ハンガリーが他の民族とは異なる取扱いを受けており、内政面ではウィーンの支配は及んでいなかったこと、ボヘミアにおけるチェコ人とドイツ人の関係、ポーランドと小ロシア、クロアチアの位置、トリエステとイタリア問題等、今までどうしてこういったことが問題だったのか、良く分かっていなかったことについて、背景事情に関する知識を得ることができた。  本書を通読していると、皇帝と大臣の関係、議会制度の仕組みや権限、民族構成と選挙区制度、官僚制、マグナート(大地主)、ジェントリー、農民の関係とそれぞれの政治意識、都市と農村、ドイツ、ロシア、イタリアとの関係といった点がハプスブルク帝国の歴史を語る上でとても重要なことは分かってきたのだが、それらについて基礎的な前提知識がないので、次々と展開する叙述を追いかけるのに精一杯になってしまい、なかなか焦点を合わせることができなくなってしまった。  ただ、随所に挟み込まれる著者テイラーの評価、コメントは、とても面白く感じた。    印象に残ったこと。"帝国は、ルーマニア、セルビア、イタリアの領土を切断されてもそれに耐えて生き残れたかもしれなかった。だがボヘミアの独立は、帝国を殺すことであった"と著者は言う。マサリックによって「チェコスロヴァキア」という新たな国家が創られたことは、すごい飛躍だった訳だ。そしてそれは20年後にヒトラーがやろうとしたことの種がまかれたことにもなった。

Posted byブクログ