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廃墟の形 の商品レビュー

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2023/01/29

「コロンビアの現代史を舞台に」などと説明すると、ありきたりの小説のようだが、決してそうではない。1914年に起きたウリベ将軍暗殺事件と、1948年に起きた自由党の大物ガイタン暗殺事件と、その両方に存在する「陰謀論」をめぐる小説。 2つの暗殺事件は、労働者層の凶漢による単独犯であ...

「コロンビアの現代史を舞台に」などと説明すると、ありきたりの小説のようだが、決してそうではない。1914年に起きたウリベ将軍暗殺事件と、1948年に起きた自由党の大物ガイタン暗殺事件と、その両方に存在する「陰謀論」をめぐる小説。 2つの暗殺事件は、労働者層の凶漢による単独犯であると、公式なコロンビア史では結論されている。本小説では、そのどちらも真相は別にあると「陰謀論」を偏執的に主張する登場人物が存在し、2つの事件に通底する、ある支配の構造に切り込んでいく。 ウリベ将軍暗殺の真相を追求する目的で書かれた、実際に刊行された本「いったい誰だ?」の内容を引用しながら、小説というよりは歴史書か?と見まごうような本格的な検証を施す作業に、読者は立ち会わされる。 それらを通じて「コロンビア型の支配構造」の底恐ろしさに触れるのだが、この過程はなかなか迫力を伴う。 それら歴史の闇に隠れた「陰謀」の真相が、単に政治闘争の一局面を切り出して見せただけにとどまらないのが、本書のすぐれた小説であるところ。コロンビアがその存在上、孕むことを逃れられない土地と歴史の「魔」のようなもの、その存在のありかを言い当てている、そんな小説であると見える。

Posted byブクログ