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田邊元の政治哲学 の商品レビュー

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2022/10/21

「懺悔道」を経て戦後にあたらしい哲学的な立場から日本のゆくえを論じた田辺の思索について、『政治哲学の急務』を中心に読み解く試みです。 佐藤優の『学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む』(2017年、新潮社)では、田辺の戦中の講演である『歴史的現実』のテクストを読み...

「懺悔道」を経て戦後にあたらしい哲学的な立場から日本のゆくえを論じた田辺の思索について、『政治哲学の急務』を中心に読み解く試みです。 佐藤優の『学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む』(2017年、新潮社)では、田辺の戦中の講演である『歴史的現実』のテクストを読み解き、彼がどのようなロジックで学生たちを戦地に送り込んだのかということが批判的に追及されています。佐藤はその後の田辺の「懺悔道」の立場についても、機を見るに敏な田辺は戦況が不利な状況にあることを知って転身を図ったものと見ており、田辺の無責任さを糾弾しています。 これに対して本書では、もう一歩田辺の思想に踏み込んだ立場から、彼の戦後の政治哲学について考察をおこなっています。著者は、やはり戦争を転機として正反対の思想的立場に移った森瀧市郎や、その師で皇国主義の哲学者として戦前・戦中には西田幾多郎にならぶ令名を誇った西晋一郎などの思想にも触れつつ、田辺の思想の転換の内実を明らかにしています。 田辺は、弁証法にもとづく「他力的行信」が「友愛」を可能にするという立場に立ち、そうした哲学的な立場から社会民主主義の実現をめざすべきだと主張し、さらに天皇のありかたについてもみずからの考えを語っています。本書では、そうした田辺の思想の哲学的・政治的な意義について考察をおこなっています。

Posted byブクログ