マン・レイと女性たち の商品レビュー
シュルレアリスム研究で有名な巌谷國士氏だが、本書の解説文は学術的な知識に基づくというよりもフィーリングで書かれたような文章が多く、一家言を持つ素人のツイート感想文のようなまとまりの無い印象を受けた。マン・レイは女性を対等な他者としてリスペクトした、という序文を読んだ時から少し嫌な...
シュルレアリスム研究で有名な巌谷國士氏だが、本書の解説文は学術的な知識に基づくというよりもフィーリングで書かれたような文章が多く、一家言を持つ素人のツイート感想文のようなまとまりの無い印象を受けた。マン・レイは女性を対等な他者としてリスペクトした、という序文を読んだ時から少し嫌な予感がしたが、予想通り多くの女性を作品の題材にしたマン・レイの「公私で女性を大切にしたフェミニスト」のイメージを守るポジティブなエピソードばかりで埋め尽くされている。けれども実際にはマン・レイが写真技法solarizationを発見した元パートナーのリー・ミラーの功績と名誉を搾取しているにも関わらず、巌谷氏はその点をぼやかすだけで批判をしていない。確かにマン・レイはピカソなどの同世代の作家と比べたら女性に対するリスペクトがある男性だったのかもしれないが、元々は弟子志望で歳の離れたミラーを結果的に恋人にしたマン・レイの行動は、自身の優位な立場と年少者の敬慕をアドバンテージとして利用したグルーミングであると言えるだろう。女性にフォーカスを充てた展覧会と出版企画であるが故にマン・レイの女性関係に見られるアンバランスな力関係について触れていないのは些かな不誠実で残念だったし、折角なら女性キュレーターに執筆して欲しかったなと思った。
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あらゆる芸術の領域を自在に横断した「万能の芸術家」マン・レイの人生と仕事について、様々なミューズたちとの交遊を軸にまとめられた一冊です。
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