長い一日 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日本人の作家をチェックする感度が鈍っており、発売日に即買いする作家はもう著者だけになってしまった。昨年読んだアイオワ日記がかなり好きだったので今回も楽しみにして読んだら、当然めちゃくちゃオモシロくて最高が更新されていた。物語で描かれるのは実質2日のことで劇的な展開もない。けれど、そこには誰もが経験する生活、人生の豊かさや苦悩が詰まっている。 ある夫婦がメインの登場人物で彼らを中心に話は進んでいく。夫の職業が小説家であるゆえに私小説の印象を強く受けた。2人が引っ越しに至るまでと、友人たちとのホームパーティーに起因する出来事の数々。前者では夫婦の家に対する価値観の違いや引っ越しすることになるまでの感情の揺れ動きが信じられないく細かく描かれていて、それがめっぽうオモシロい。特に階下に住む大家さんとの関係はなんとも言えない切なさがあった。日々は同じことの繰り返しだとしても、それが生活を構築しているのであり、一度それが終わっていく方向に振れるとあっけなく終わる。残されるのは一抹の寂寞…みたいな。ちょうど自分自身も引っ越しをしたばかりで、しかも前に住んでいた部屋が大家のはおばあさんの家のちょうど真上で、みたいな個人的記憶がビンビン刺激された。あと家周辺のスーパーは大切、という人生で大事なことだけど、そこまで語られないことを延々と話しているところも最高だった。 タイトルになっている「長い一日」という章を読むと、一見淡白に見える日々だとしても脳内はそうとも限らないわけで妄想なども含めると毎日とてつもなく長い時間を過ごしているのかもしれない。そんなことを考えさせてくれるのがオモシロいし、その一日の伸縮性を機能性の高いズボンと重ね合わせているところにニヤリとさせられた。大きなテーマとして時間(特に過去)の揺らぎ、不確かさがあると思っていて、そういったことに関するパンチラインが何発も放たれていた。あとは得意な人称チェンジも健在でもはや名人芸と言えるだろう。芥川賞を受賞した「死んでいないもの」を読んだときのあのシームレスなワンカットを見たような感動を久しぶりに体験できて嬉しかった。かなり分厚いのだけども、サイズはコンパクトで手に馴染みやすいし、クーラー効いた部屋でダラダラ読むのにピッタリな1冊。
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これまで読んだ茄子の輝きや高架線と異なり、設定としては私小説のように見える。夫妻の人称の使い方が独特で語り部が途切れずに移っていく感じ。この作者の小説はいつも、自分にもこの感じあるなぁというのが感じられ、今回も伸縮素材のズボンを履く友人の夏目君などにそういうものを感じた。
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日々のこと、過去のこと、先のこと、少しの妄想。 頭のなかを文章にできたのならこんな感じかな。できないから作家さんをひたすら尊敬して読み終わる。
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エッセイというか、私小説? 小説家の夫と装丁家の妻。その周りの人々の生活で起こる出来事を淡々と描いた作品。 YouTubeで自分より歳下の工場勤務の男の子が淡々と飯を食ったり、給料日にちょっと贅沢をしたり、彼女とデートしたりする様を配信しているんだけど、何故だか気になって視聴...
エッセイというか、私小説? 小説家の夫と装丁家の妻。その周りの人々の生活で起こる出来事を淡々と描いた作品。 YouTubeで自分より歳下の工場勤務の男の子が淡々と飯を食ったり、給料日にちょっと贅沢をしたり、彼女とデートしたりする様を配信しているんだけど、何故だか気になって視聴してしまうんだよなー。 可愛らしい女の子が小綺麗にパッケージした所謂vlogと呼ばれるものよりも淡々とした日々の営みを定点観察できるような映像に惹かれる。 この本もそんな感じで山もなけりゃあ谷もないので、オチとか盛り上がりを求める人が読んだら駄作だと感じるだろうし、あまり万人には薦められないです。 秋の夜長にボケーっとと読んで、なんだかフワッとした気持ちになりたいなーって人におすすめ。 「愛着を語る事の本質的な愛おしさは、その愛着を失ってからしか語り得ない本質的な愚かさかもしれない。」 この一節が凄くよかった。
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ちょっといま読む本が溜まっちゃってることもあって、斜め読みしてしまいました。ごめんなさい。 ブクログユーザ様のコメントも比較的ポジティブだし、じっくり読んだら面白いのかもしれませんが。。
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小説を借りてきたつもりだったが、作家そのものが登場人物として出てきて、これはエッセイだったのか?と思いきやそうでもないらしい。ジャンルとしては私小説と呼ぶのだろうか。 それはさておき私は好きな一冊となった。何かドラマチックなことが起きるわけではないけど、日常ってこういうものだと...
小説を借りてきたつもりだったが、作家そのものが登場人物として出てきて、これはエッセイだったのか?と思いきやそうでもないらしい。ジャンルとしては私小説と呼ぶのだろうか。 それはさておき私は好きな一冊となった。何かドラマチックなことが起きるわけではないけど、日常ってこういうものだと思う。頭の中でぐるぐる考えていることが99%以上で、1%も言葉に出来ていないんじゃないかと思うこともある。生きていれば誰かと繋がって、誰かの中に誰かがいるけど、その人の気持ちをそっくりそのままわかることなんて絶対にない。そこにはすれ違いも間違いも思い込みあるのだけど、例えそうだとしても、誰かに形作られた自分がどこかにいるというのはなんだか幸せだと思った。
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“気のせいかもしれないけれど、それは自分の気なのだから無視しようがないじゃないか。”(p.52) “ほんとに、なんだかわかんないけど、忙しいんですよ、家事するのも。”(p.246)
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引っ越しをしようと思っている小説家と妻の日常だが、確かにこんなふうに毎日は流れていくんだなぁとゆるゆると読める一冊。
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人様の日記が好物なので、夜寝床で読むにはすごい良い本だと思う。いい意味で、読んでいるともわーんと眠くなって実際四日ほどかけて読み進めました。自分も結婚前の3年間、夫婦ではなく同居してたからなんとなく思い出したり、フフ
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いったい何についての本を読まされているのだろうと思うような内容、それでもこんな長編でも今日は何が書かれているかな?とちょっと楽しみな思いで読み進める、そんな本。 スーパー、オオゼキに対する夫の並々ならぬ思いは私も同じでちょっと怖くなるぐらい。 東京に住んでいるからこの小説はとても...
いったい何についての本を読まされているのだろうと思うような内容、それでもこんな長編でも今日は何が書かれているかな?とちょっと楽しみな思いで読み進める、そんな本。 スーパー、オオゼキに対する夫の並々ならぬ思いは私も同じでちょっと怖くなるぐらい。 東京に住んでいるからこの小説はとても楽しく読めたのだけど東京にまるで縁のない人にはどうであろうか、事件も起こらないし勧める人が極めて限られる本。
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