『失われた時を求めて』への招待 の商品レビュー
大学で『失われた時を求めて』を読んでから、手に取った。一昨年には読み終えていたのに、なんで感想を書かなかったのか。ぼんやりした自分よ。 出版当初から、話題になっていたけれど、とてもわかり易い入門書だと思う。私は先に講義を受けて、作品を読んで、休暇の楽しみに読んだので、おさらいと...
大学で『失われた時を求めて』を読んでから、手に取った。一昨年には読み終えていたのに、なんで感想を書かなかったのか。ぼんやりした自分よ。 出版当初から、話題になっていたけれど、とてもわかり易い入門書だと思う。私は先に講義を受けて、作品を読んで、休暇の楽しみに読んだので、おさらいとしてはすごく入りやすかった。 『失われた時を求めて』の、とても洗練された訳本も、著者は手がけていらっしゃる。そちらも持っているが、併読するとなお良いだろう。正直プルーストのこの本は、すごく長くて、取り組むのに勇気が要る。そんな時に、この本をガイドになさって、概要を知って、それで挑まれてもいいだろう。迷える旅人の良き杖だ。 全編いきなり読みがつらかったら、最初の『スワン家のほうへ』だけでも取り組まれると良い。おいおい続きが読めるはずだ。個人的には『ゴリオ爺さん』と『失われた~』は、読んでおいて良い、面白い作品だ。フランス文学の本をなにか、きっかけにと言われたらそう勧める。ましてこのような入門書があればなお。 最近の岩波新書の中でも、印象に残る本だった。一気に読んでしまうくらいには、興味深かったのだ。
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”パリの社交界を描いている”という紹介がされることがあるが、なんで現在の自分となんの関係もなさそうなパリの社交界の話なんて読む必要があるんだろうという、当然の疑問に対してちゃんと回答してくれている。”無意識的想起”と”印象”で”時を超えるもの”として”永遠”を描く、というのはわり...
”パリの社交界を描いている”という紹介がされることがあるが、なんで現在の自分となんの関係もなさそうなパリの社交界の話なんて読む必要があるんだろうという、当然の疑問に対してちゃんと回答してくれている。”無意識的想起”と”印象”で”時を超えるもの”として”永遠”を描く、というのはわりあい納得。その他もいろいろ示唆に富んでいて、いままで読んだプルースト入門の中ではいちばん腑に落ちた。
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【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC08016658
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
岩波文庫版の翻訳を手がけた著者による解説書。著者が「失われた時を求めて」を読んだのは19歳の時。以来、研究者として約半世紀にわたって、作品と接してきた。その間、作品の複雑な記述に何度も閉口してきたらしく、「いまだに充分理解できたとは言えない」という。 しかし、翻訳をしたり、訳注をつけたりするなかで、理解が深まっていったらしい。そんな著者が私たちに教えてくれるのは、「プルーストの小説の大きな魅力は、登場人物たちのじつに滑稽な言動にある」という点です。そして、「失われた時を求めて」は確かに読破するのに骨が折れる小説だけれども、慌てずじっくり読み進めれば、じつに面白い小説だ著者は言います。 「失われた時を求めて」を読んでみようかどうか迷っている人たちにとっては、実に心強いアドバイスですね。しかも本書を読むには、何の予備知識もいりません。「失われた時を求めて」を読んだことがなくても、本書を読み進めていけるように、著者の工夫が至るところに施されています。この本をきっかけとして、少しでもプルーストの愛読者が増えることを願っています。
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突然、読書のモチベーションが雲散霧消してしまった。 それを救ってくれたのが、「文學界10月号」に掲載されていた吉川先生の「見出された『失われた時を求めて』初稿」だった。 最初、ちくま文庫の井上究一郎訳を読んでいた僕は、第5巻で頓挫してしまっていた。 その時出会ったのが、立教大学...
突然、読書のモチベーションが雲散霧消してしまった。 それを救ってくれたのが、「文學界10月号」に掲載されていた吉川先生の「見出された『失われた時を求めて』初稿」だった。 最初、ちくま文庫の井上究一郎訳を読んでいた僕は、第5巻で頓挫してしまっていた。 その時出会ったのが、立教大学の公開セミナー「新訳でプルーストを読破する」であり、吉川先生の訳だった。 お陰様で、僕もなんとかプルーストを読破することができた。 僕は、まさに吉川先生によってプルーストに招き入れられたのだ。 だが、文學界の文章を読んで、さらに本書を読み終えた今、自分が一つの無限ループに入り込んでしまっているのを見出す。 本書を読めば、必ずやまたプルーストが読みたくなる。 読みかけの高遠弘美訳、井上訳もあれば、鈴木道彦訳もある。 長い迷路のような回廊のなかへ再び迷い込まずにはいられないだろう。 側から見れば、それはまるでシーシュポスに課された罰のようにも見えるだろうが、僕にとっては、かけがえのない喜びなのだ。
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岩波文庫での『失われた時を求めて』を読みたくなった。 まったく紐解いたことはないけど、分かりやすい文体になっているんじゃないかと期待できそう。この新書で引用される文章からはそう思える。 それくらい本作品では、あの大作の構造がうまく紹介できていると思うけど。
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すでに吉川訳を読了した上で、本書を手に取りました。 同じ著者の『プルーストの世界を読む』よりも濃度は濃くなく、その代わり、扱っているテーマが広くなっています。「招待」の題名にふさわしい。
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