ヒーローはイエスマン の商品レビュー

羽泉伊織(著者)

2021/09/18

どんな理不尽な要求も、不条理な指示も、
断って面倒な軋轢を生むくらいなら、
ともかく頷いてやってしまう。
そんなことを繰り返しているうち、
他者に命令されればどんなこともできる
特殊能力を得てしまった！
それがイエスマン！！

まさかそんなことありえないでしょ的喜劇だ。
でも勝利至上主義の学校の部活やブラック企業
といった閉ざされたコミュニティ内では、
時に信じられないようなことが起きうる。
先輩は絶対、問答無用の上下関係、
意味のない形骸化した慣習。
今まさに、そうした環境下にいる人にとっては、
笑えない上演中の悲劇かもしれない。

そこまで酷くなくても、
コミュニケーションの摩擦を恐れ、
本意でないのに頷いて
やり過ごした経験は誰にでもあるかもしれない。
自己主張して関係性に傷が入るよりは、
表面的円滑が好まれる現代では、
そうした処世がメジャーでもある。
悩ましいことだ。

主人公は能力に目覚めたイエスマン。
ヒーローになり、
自身の弱さに悩む者たちを救い出す。
弱者として同じく弱く者を助ける。
”弱さ”からひっくり返し現代を鋭く撃つ物語。