生命海流 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
生物学者かつロマンチスト(I think)の福岡伸一が、永年の夢であったガラパゴス諸島のダーウィンと同コースでの探索を実現した記録。島の生業や独特な生物が群生している所以を解き明かす。実は小生も25年前に同島を旅し、人を全く恐れない動物達を目の当たりにしているので、大変興味深かった。 ロゴスとピュシス。ここはピュシスの世界。 星空を見上げながら、ピュシスの実相を感じた。 生き物はすべて、時期が来れば生まれ、季節がめぐれば交わり、そのときが至れば去る。 去ることによって次のものに場所を譲る。 なぜなら私もまた誰かに譲られた場所にいたのだから 生と死。それは利他的なもの。。 有限性。それは相補的なもの。 これが本来の生命のありかた。 ガラパゴスのすべてのいのちはこの原則にしたがって、今を生きている。 今だけを生きている。
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誰にでも憧れの地があるだろう。生物学者福岡伸一が実現した夢、ガラパゴス航海記。 「生物と無生物のあいだ」ほか動的平衡理論で著名な生物学者の福岡伸一氏、子供の頃から長年の夢だったガラパゴスを訪問した紀行。 ガラパゴスは言わずと知れたダーウィンが著名な「進化論」の着想を得た地。南...
誰にでも憧れの地があるだろう。生物学者福岡伸一が実現した夢、ガラパゴス航海記。 「生物と無生物のあいだ」ほか動的平衡理論で著名な生物学者の福岡伸一氏、子供の頃から長年の夢だったガラパゴスを訪問した紀行。 ガラパゴスは言わずと知れたダーウィンが著名な「進化論」の着想を得た地。南米の大陸から1 1000キロ離れた火山島。数万年の時はリクガメやイグアナなどが漂着する偶然を生み出す。天敵も競争相手もいない島。漂着したごく一部の種の動植物は独自の進化を遂げる。 本書の紀行は少しでもダーウィンの搭乗したビーグル号の辿った諸島巡りの経路を再現する。同じ火山島でも誕生した時期により地質や生物相は大きく異なる。 筆者は憧れの島で一つ一つの風景に大いに感動する。抑えられた筆致が逆に筆者の感動を守り立てる。 印象的だったのはガラパゴスの生物がヒトを恐れないところ。ヒトを恐れるのは獲得形質が遺伝しないとすれば本能のはず。だがその原理は未だはっきりは解明されていない。 生き物好きだった子供の頃から憧れた島。筆者の新たな著作の源泉となる事だろう。 編集者と作家の関係に言及した部分も秀逸でした。
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どこか行きたい! そんな思いのまま、ガラパゴスを旅してきた。 ダーウィンのビーグル号での航海のままに、 ガラバゴスを旅する福岡先生と共に。 「生物は自発的に利他的なのだ」・・・ 旧世界は、ぎゅう詰めのニッチの中で生きているから こんなに息苦しいのか・・・ 美しい写真・・・何よ...
どこか行きたい! そんな思いのまま、ガラパゴスを旅してきた。 ダーウィンのビーグル号での航海のままに、 ガラバゴスを旅する福岡先生と共に。 「生物は自発的に利他的なのだ」・・・ 旧世界は、ぎゅう詰めのニッチの中で生きているから こんなに息苦しいのか・・・ 美しい写真・・・何よりシェフ・ジョージの 料理は、海外に出ると、こういうゴハンなんだよね~ というのを思い出させてくれて ひとときの旅気分。 それも、めちゃくちゃ深い旅。
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生命海流という題名が、私の好きな海洋大循環を連想したので読んでみました。(元々福岡伸一先生の本は好きです。)難しい文体が無くてすいすい読めました。また写真やガラパゴス諸島の島民の登場でガラパゴスの雰囲気が伝わってきました。コロナ禍のため、異国の雰囲気を感じて海外にますます行きたく...
生命海流という題名が、私の好きな海洋大循環を連想したので読んでみました。(元々福岡伸一先生の本は好きです。)難しい文体が無くてすいすい読めました。また写真やガラパゴス諸島の島民の登場でガラパゴスの雰囲気が伝わってきました。コロナ禍のため、異国の雰囲気を感じて海外にますます行きたくなりました。 ガラパゴスの動物に警戒心がない理由が福岡先生の推察の通りであればどれだけ長い間何かに怯えることがない平和な世界があったんですかね。そんな場所がこの地球上にあるのか、と不思議な気分です。
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文学的とも言える高い文章表現力を持つ著者が、長年の夢であったガラパゴス諸島をダーウィンとおなじ海路で辿り、多数のユニークな生物や自然との出会いを描いたルポルタージュ。 冒頭の70ページでは、なぜにガラパゴスなのか、という著者の長年の思いがずっと綴られるというかなり変わった構成に...
文学的とも言える高い文章表現力を持つ著者が、長年の夢であったガラパゴス諸島をダーウィンとおなじ海路で辿り、多数のユニークな生物や自然との出会いを描いたルポルタージュ。 冒頭の70ページでは、なぜにガラパゴスなのか、という著者の長年の思いがずっと綴られるというかなり変わった構成になっている。本題の旅行記がなかなか始まらないという点でやきもきしつつも、このパートがあることによって、テクノロジーをはじめとする”ロゴス”の世界に日々溺れている現代人が、その対極にある”ピュリス”(≒生々しく荒々しい自然)を見ることの意義が徐々に掴めてくる。 本題のガラパゴスへの船旅は、ゾウガメやイグアナなど独特の動物たちの様相が文章や豊富な写真で収められており、名前は誰しもが知りつつも実態についてはよくわからないガラパゴスの生態系を追体験できる。 最も印象に残っているのは、我々がよく用いる”ガラパゴス”という言葉のリアルとの乖離である。”ガラパゴスケータイ”という言葉に代表されるように、日本において”ガラパゴス”という言葉は、そこそこの市場規模があるが故に、日本のみのニッチなニーズに適応しすぎ、グローバルでの競争力を失ったモノ・サービスを揶揄するのに使われている。一方で、リアルな”ガラパゴス”は、そもそも地形の成り立ち自体が大陸と比べると非常に新しく、悠久の時間軸の中で考えれば最新型ともいえる。外敵の襲来(もちろんそこには自然を荒らす最大の外敵である人間を含む)を避けて、過酷な環境下で生物種同士が利他的に振る舞うことで、独特の生物相が生まれた”ガラパゴス”。 生命や進化の面白さに触れつつ、非常に高い文章力によって旅行記としても面白い、著者のセンスが遺憾無く発揮された一冊。また、書籍には収まりきらなかった写真などをnoteで発表しているのもありがたい。どうしても紙書籍は印刷・製本コストの関係から写真の利用には制限が出てしまうため、このような紙媒体とオンラインのハイブリッド型の書籍がもっと増えてほしいところ。
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ガラパゴスのピュシスが味わえる快著である。赤道直下、春分の日。太陽は真東の水平線を垂直に昇り、頭の真上を通った後、真西の水平線を垂直に沈む。暑くないはずがないけれど、クロムウェル海流のおかげで過ごしやすい気候。全く人を警戒しない生物たち。タコを丸のみする姿を見せてくれたコバネウ。...
ガラパゴスのピュシスが味わえる快著である。赤道直下、春分の日。太陽は真東の水平線を垂直に昇り、頭の真上を通った後、真西の水平線を垂直に沈む。暑くないはずがないけれど、クロムウェル海流のおかげで過ごしやすい気候。全く人を警戒しない生物たち。タコを丸のみする姿を見せてくれたコバネウ。赤道を通過する際はグンカンドリが祝ってくれる。そして何よりも美しいのはジョージがつくってくれた食事の数々。幸せな1週間だったことだろう。しかし、ピュシスには光もあれば闇もある。マーベル号のトイレ事情。これはつらい。気持ちよく排泄できないのはつらい。出なければ、おいしい食事ものどを通らないだろう。島に上がってトイレを我慢するのもつらい。そこは自然とはみなしてもらえないのか? そう言えば、スギメに乗った人々は海に入って用を足していた。それから、蚊。私もこれは苦手だ。この小さな1匹が存在するだけで、最悪の夜となる。まあ、でもそれがピュシス。受け入れていくしかない。実を言うと、本書でもっともわくわくしたのは、ガラパゴスに行く前の件。著者が朝日出版社を持ち上げるあたり。私も学生のころにはおもしろい出版社だと思っていた。そこにはユニークな編集者の姿があったわけだ。私が知っているのは第二次エピステーメーだ。「自己組織化」の特集が特に刺激的で、「これおもしろいで」と卒業生に貸してしまった。それが返却されずじまい。「探偵」にでもお願いしようか。まあ、美しい写真といっしょだったので、これはかさばる単行本だったけれど、買って正解でした。いつか書店でもしたら、面出しして飾っておきたい一品。
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