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ようこそ地獄、奇妙な地獄 の商品レビュー

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2021/12/21

時代の移り変わりにより、地獄の受け止め方に大きな違いがある。特に江戸時代になり戦乱が収まったことは、人々の死生観にとってエポックな出来事ではなかったか。

Posted byブクログ

2021/11/07

日本人の中の「文化」としての地獄の話。 仏教の教えの中の地獄をただ解説するのではなく(基礎知識としてもちろんわかりやすく解説されているが)、奈良時代から現在までの日本人にとっての「地獄」がどのように変遷してきたか。それは死生観や世相、現世をどのように受け止めているかの変遷でもあ...

日本人の中の「文化」としての地獄の話。 仏教の教えの中の地獄をただ解説するのではなく(基礎知識としてもちろんわかりやすく解説されているが)、奈良時代から現在までの日本人にとっての「地獄」がどのように変遷してきたか。それは死生観や世相、現世をどのように受け止めているかの変遷でもある。また、日本人はなぜ、長い歴史の中で「地獄」に興味をもっているのだろうーそれは強烈なインパクトや興味ーという変わらないものもあることを締めくくりで筆者は述べる。 ここでいう地獄はインドや中国のそれとは違い、日本で独自の発展を遂げる。例えば日本人の山中他界観から、山に地獄があるという考えなど、仏教以外の影響を受けている。 また、亡者を裁く十王の「十王信仰」も、古代中国で道教の影響を受けながら誕生、発展した。そして「地蔵十王経」は仏典の一つではなく日本で独自に作られたもの。 ほか、説話で、人間が地獄行きを免れるために獄卒に牛を捧げるくだりがあるが、これも仏教以外の民俗信仰も紛れ込んでいると考えられている。 なので「日本人の地獄文化」を学んだ、というのが私の感想。 ちょうど「鬼灯の冷徹」など地獄アニメも流行ったので帯の煽り文句を見てそれを思い出した人多そう。友達と地獄好きと話していたことを思い出し、それは自分含め今も多くのひとを魅了しているのだなあと感慨深い気持ちになった。 ○読んで「へええ!」と思ったこと。 ・親孝行を説く説話。今まで親孝行をしないとあるいは親不孝をすると地獄に落ちる。とそのまま受け取っていたのだが、説話の趣旨としては、「親孝行をすることで極楽往生できるよ」と教えている。一番身近で実践しやすい善行を示しているのだという考え方。 ・法要について。遺族は死者が地獄に行かないよう何度も、しかも時間をかけて供養する。しかし研究者の見方ではこれはむしろ生き残った者たちが法要を行うことにより仏教と深く結び付くようにするためであると。そして死者への思いを深くする機会を創出し、遺族のグリーフケアの役割も担っていると。 ・昔は文字の読み書きできる人が少なかったので、文章よりも絵で訴えかけることに重きを置いた。そのため地獄の絵がたくさん残っている(そして文章の方はあっさり)。 ・閻魔の庁など、あの世の地獄は中国風になる傾向がある。十王や閻魔王は中国の道教を源にしているため。また、「この世」ではない世界を描くとき、地獄だけではなく、浦島太郎の竜宮城なども中国風になっている。日本人にとっては身近な外国が中国であり、日本ではない=異界であることがわかり、かつその情景が想像できる。 ・江戸時代になると「今は辛い世だが死んだら極楽にいきたい」から、この世の暮らしに重きがおかれ、現世利益が強くなる。浄瑠璃や狂言でも、おもしろおかしく描かれるようになり教訓めいたものは減る。それは普段の暮らしに希望が持てる人が増えたのだということ。つまり威厳がなくなったとかいう衰退ではなく良い変化なのだと知った。 ・今、過去を学ぶ意味ー全盛の悪行が現世に、の一例として身体障碍、ハンセン病などが「因果応報」として受け止められてきた。信仰と切り離して、「迷信」をこの先残さないようにすることは、過去と正しい知識を持つ私たちの役割である。

Posted byブクログ