聖母の美術全史 の商品レビュー
・聖母マリアが普遍性を持ち得たのは、それが当初から曖昧な存在であったためでもある。世紀末のフランスの作家ユイスマンスは、『大聖堂』で、「マリアの顔立ちがはっきりしないのは、それぞれの人が、もっとも好きなマリアを思い浮かべて理想のマリア像を作ることができるためだ」と書いたが、聖母は...
・聖母マリアが普遍性を持ち得たのは、それが当初から曖昧な存在であったためでもある。世紀末のフランスの作家ユイスマンスは、『大聖堂』で、「マリアの顔立ちがはっきりしないのは、それぞれの人が、もっとも好きなマリアを思い浮かべて理想のマリア像を作ることができるためだ」と書いたが、聖母は誰にとっても理想の女性イメージを投影できる大きな器であった。わずかな情報しか残っていなかったために、かえっていかなる虚飾も捏造も何でも容易に受け入れてしまったのだ。
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