鉄道無常 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
鉄道は、「線路とダイヤグラムによって二重に拘束される運命にあるが、鉄道好き達はその拘束の中でどのように自分の意思を貫くかを考えるところに、悦びを感じるのだ」。笑、それそれ。 二人の、鐵道に対する向き合い方の違いや、変わらない線路、電化されまたは廃線になり変わりゆく路線と、止まらない人生との間の無常をさくさくした筆致で読ませてくれる。 内田百閒のそのままな鉄道好きと、宮脇俊三というナチュラルボーンセレブ鉄の含羞を含んだ鉄道愛が読んでいて楽しい。 一日駅長をしたとき、内田百閒は出発の合図をした列車のデッキに乗ってそのままいってしまった。一方宮脇は、駅長の制服で平日の酔客を起こすことを楽しみにし達成感を得た…。両方、子供の心のままに鉄道好きを体現してるのが面白い。 (宮脇はその後、廃線や、新幹線ができて廃れた駅などをみると、大人の視線で無常を感じる。) 用もないのに列車に乗りたくなる。 気候もいいし大回り乗車でもしようかな。
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内田百閒と宮脇俊三という鉄道文学の二台巨頭の生き様が複々線のように並走したり、交差したり……2人の鉄道愛、人生観、そしてそこから浮かび上がる社会の変化を酒井順子さんの小気味のいいトーンで感じることができ、とても楽しめた。その背景にはご家族にも深く取材した形跡もうかがえた。 そし...
内田百閒と宮脇俊三という鉄道文学の二台巨頭の生き様が複々線のように並走したり、交差したり……2人の鉄道愛、人生観、そしてそこから浮かび上がる社会の変化を酒井順子さんの小気味のいいトーンで感じることができ、とても楽しめた。その背景にはご家族にも深く取材した形跡もうかがえた。 そしてタイトルがまた秀逸。大規模インフラである鉄道は本来なら「常」に存在し、地方都市と東京を結んでいた。それは地方の住民の希望でもあった。しかし、それは内田百閒の時代まで。宮脇俊三のころには新幹線が全国に伸びる半面、国鉄が赤字ローカル線の廃線に踏み切った。もはや「無常」なるものになっている。JRになってからもその傾向は続く。 仏教の無常観にもつながるエンディングが悲しくもあり、次の未来が少し見えるようでもある。鉄道を深く愛した2人を通じて様々なものが可視化されてくる名著でした。
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サブタイトル通り「内田百閒と宮脇俊三を読む」一冊。時代は違えど、二大巨頭ともいえる二人の旅に想いを馳せ、時に二人の違いを、時に二人の共通点をあぶりだす。「鉄」をテーマにしながらも著者らしく視点で、鉄道紀行が文学に昇華したような、そんな思いも抱きました。
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「もっと上手に縛ってくれ。そしてもっと気持ちよくさせてくれ」 文学に鉄道を引き込んだオーソリティ・内田百閒と、ナチュラルボーン鉄にして鉄エリートそして鉄セレブである宮脇俊三の鉄道文学…と言うか、鉄愛について語った一冊。 酒井さんの始終透徹した文体が余計におかしみを誘う、鉄道哀歌...
「もっと上手に縛ってくれ。そしてもっと気持ちよくさせてくれ」 文学に鉄道を引き込んだオーソリティ・内田百閒と、ナチュラルボーン鉄にして鉄エリートそして鉄セレブである宮脇俊三の鉄道文学…と言うか、鉄愛について語った一冊。 酒井さんの始終透徹した文体が余計におかしみを誘う、鉄道哀歌とも。 鉄の人も、そうでない人も楽しめるし、読了後は恐らく、何か電車に乗りたくなると思いますw
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目的なく列車に乗ることを楽しむ「阿房列車」シリー ズで知られる内田百閒と、約四半世紀後、『時刻表2万 キロ』でデビューした宮脇俊三。鉄道紀行界の巨星二 人の「軌道」を追った評伝。著者も『女流阿房列車』等の 著作のある鉄道好きだけあって、二人の行動と心情を よく読み解いています。
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ヒャッケン先生と宮脇さんの 鉄道に関する著作を並行に語って それぞれの時代背景や 思い入れの部分の違いを楽しみ 鉄道紀行を味わう本…かな。 ヒャッケン先生自身の書いた鉄文も大好き。 でも、こうして他の人のチョイスで 取り上げられた文を読んでも なんだかとても愛しさを感じるのです...
ヒャッケン先生と宮脇さんの 鉄道に関する著作を並行に語って それぞれの時代背景や 思い入れの部分の違いを楽しみ 鉄道紀行を味わう本…かな。 ヒャッケン先生自身の書いた鉄文も大好き。 でも、こうして他の人のチョイスで 取り上げられた文を読んでも なんだかとても愛しさを感じるのです。
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女子鉄で知られる酒井順子、鉄道紀行界の巨星内田百閒と宮脇俊三について考察する。 鉄道の紀行では右に出るもののない二人をテーマに。自身も「女流阿房列車」ほか紀行作もある酒井順子の一冊。いつもの独特のですます調ではないので、他の作品とは一味違う。 酒井順子は晩年の宮脇俊三と車中対...
女子鉄で知られる酒井順子、鉄道紀行界の巨星内田百閒と宮脇俊三について考察する。 鉄道の紀行では右に出るもののない二人をテーマに。自身も「女流阿房列車」ほか紀行作もある酒井順子の一冊。いつもの独特のですます調ではないので、他の作品とは一味違う。 酒井順子は晩年の宮脇俊三と車中対談したことがあるという。中学の頃父の本棚の「時刻表2万キロ」を読み鉄道に目覚めた筆者には感慨も一塩だっただろう。 抑制の聞いた語りが良い。上質な評論。
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