時代はさらに資本論 の商品レビュー
最近、必要があって「資本論」に関する書籍を何冊か読んだ。それを読むまでは、「資本論」という本の内容について、大きく誤解していた。プロレタリア革命、プロレタリア独裁、永続革命論、前衛党、ブルジョアジーといった言葉を思い浮かべ、それは、「革命の書」であるのだと思っていた。実際にはそう...
最近、必要があって「資本論」に関する書籍を何冊か読んだ。それを読むまでは、「資本論」という本の内容について、大きく誤解していた。プロレタリア革命、プロレタリア独裁、永続革命論、前衛党、ブルジョアジーといった言葉を思い浮かべ、それは、「革命の書」であるのだと思っていた。実際にはそういうものではなく、イギリスの産業革命を経て実現した資本主義社会のメカニズムについての批判的な研究書であると理解した。 「資本論」は3部構成になっている。第1部が発行されたのは1867年。第2部の発行は1885年、第3部の発行は1894年である。マルクス自身は1883年に亡くなっているので、第2部と第3部は、マルクスの死後にエンゲルスによって編集、発行されたものだ。ロシア革命が1917年であり、社会主義革命の理論的根拠である「マルクス・レーニン主義」は、更にレーニンの死後にスターリンが1924年の講演で提唱したものである。要するに1883年に亡くなっているマルクスは、革命理論である「マルクス・レーニン主義」には全く関わっていないのだ。 さて、本書「時代はさらに資本論」は、「資本論」を学ぶためのものであり、現代の日本の、主として雇用や労働に関しての状況を、「資本論」に則して説明しようと試みている。多くの学者の共著であり、読むのは少し骨が折れる。私は大学は経済学科を出ている。40年以上前のことであるが、私の大学には、マルクス経済学の講座はほとんどなく、私自身が学んだ経済学は、いわゆる「近代経済学」と呼ばれるものであった。従って、「資本論」について(もちろん書名は知っていても)、内容についてはほとんど何も理解しておらず、読むのに骨は折れるが、あらためて「資本論」を学ぶには良い本であったと思う。 「貨幣を増やすことが企業活動の目的であり、資本主義経済の原動力。貨幣増加の欲求は限度がないため、資本家はあらゆる手段を使って、貨幣を増やそうとする。資本蓄積のためには、資本(生産手段)と労働が必要であるが、労働が多ければ多いほど、資本蓄積は進む。労働が多いというのは、結局は、労働時間を長くすることであり、資本家は社会的な制約(法律等)がない限り、労働時間を無限に増やそうとする」といったことが、マルクスの見た資本主義社会の姿である。マルクスは、産業革命以降のイギリスの状況を見て、そのように書いており、実際のところ、当時のイギリスはそれがあてはまる状況だったのである。 資本主義は暴走する。雇用や労働時間についてのみではなく、地球環境への配慮のない開発を行うため、地球温暖化等が深刻な状況になっているという主張も多い。だからSDGsという考え方が生まれてきたということでもある。「資本論」のマルクスの主張は、今でも当たっている部分があるのだ。 問題は、ではどうするのか?ということである。 斎藤幸平は「人新生の"資本論"」で、「経済成長をあきらめるべき」と主張している。これまでは、資本主義の暴走は、ビジネスローで縛ろうという考え方が主流だった。どこまで縛るかという程度に関しては、新自由主義的な考え方から、北欧の高福祉社会の考え方まで幅は広い。 本書を含む「資本論」の解説書を読むと、そういったことを考えさせられる。
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