進化でわかる人間行動の事典 の商品レビュー
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凄い本だ。 2段書きの論文を索引にそって解説していくのだが、これはもうタイトルの通り「辞書」である。なので、一見、読みにくそう。書き手も、名古屋工業大学、九州大学、東京大学、慶應義塾大学などの研究者たちであり、文体も堅そう・・。で食わず嫌いを起こしそうだが、読み始めてみると、こ...
凄い本だ。 2段書きの論文を索引にそって解説していくのだが、これはもうタイトルの通り「辞書」である。なので、一見、読みにくそう。書き手も、名古屋工業大学、九州大学、東京大学、慶應義塾大学などの研究者たちであり、文体も堅そう・・。で食わず嫌いを起こしそうだが、読み始めてみると、これが物凄い面白いのである。 人間の行動を「食べる」とか「考える」「だます」「結婚する」「遊ぶ」など、細かく分解し、その一つ一つの進化論的な意味を探る。その際に、他の動物だったらどうか、人間は何故そんなことをするのかなど研究結果に基づいての解説なので説得力もあり、グイグイ読んでしまう。 例えば、遊びの意義。動物の子供も遊びをするが、この目的は、恐怖制御仮説、練習仮説、不測事態訓練仮説、紐帯維持機能仮説など、諸説あるようだ。社会的遊びを幼少期に行ったペアが、他の個体と親和的関係を構築しやすいと言う観察結果より紐帯維持機能仮説が有力と考えられているという話。確かに、子犬がじゃれ合ったりするのを見るが、犬に限らず、大人がじゃれ合うのは比較的少ない(人間は、大人も時々じゃれ合っているが)。 遺跡で発見されたネアンデルタール人の人骨には、多数傷がついていて、争いが想像されるが、相手を食べるために争って殺害したと言う可能性も含む、骨髄を吸い出すために骨を割っていた可能性も指摘されている。別に読んだ本だと、これが古代人の野蛮の象徴、あるいは、人類は温厚に進化してきたという文脈で用いられるが、単に「お互いを食料にしていた」説、というのは興味深い。今の人類が、牛肉を見て美味しそうと思うが、牛そのものを見て食指が動かぬという点から考えても、有りえなくはないのかもしれない。だからこそ、餌と思われぬ敵と味方の区別や、人間関係の形成が重要だったのだろうか。 人の2足歩行とチンパンジーの4足歩行(ナックルウォーキング)のエネルギー効率を比較すると、2足歩行の移動コストはチンパンジーの4分の1で大幅に小さいことがわかる。しかしこれは人間の場合で、チンパンジーでは、2足も4足も移動コストは変わらない。これも『Born to RUN』で読んだが、それ裏付ける内容というか、同じ論拠なのかもしれない。人間は走る事、その持久力で獲物を捕まえていたという説。 ペットを飼う事は、托卵と同じように、ペット側が人の養育行動を引き出している可能性があると言う説。これも自己家畜化の別の本でも読んだ。 つまり、研究者の論文は、引用の原典であり、一次情報であるので(論文内での引用も当然あるが)、その分、伝言ゲームや他者の解釈による認知の減耗を経ないため、迫力がある。事典風にしない方が、広く読まれて良かったかもしれない。事典を一から読むことには、抵抗があるだろうから。
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