関係人口の社会学 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
人口減少が進む地域では、住民の「誇りの空洞化」や「あきらめ」に起因する主体性の欠如が見られる。(=心の過疎化) 関係人口とは、「特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者」である。 すなわち、企業や返礼品目当てのふるさと納税など、利己的な欲は含まず、また自発性に意義を置き、関心を軽視するボランティアも含まない。 今まで、地域・よそ者の双方が主体となる相互作用の形成はなかったが、これからはこれが求められ、双方の信頼関係が重視される。関係人口は、この主体を形成する作用としてのキーパーソンである。 地域再生とは、地域再生主体が多層的に形成され、地域課題が解決され続けるという連続的過程であり、地域の存続とイコールではない。 関係人口の創出・拡大はあくまで地域再生を目指す上での「手段」であって、「目的」ではない。
Posted by
第1部が理論編で概念規定を行う。関係人口とは「特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者」と定義する。 第二部で島根県海士町、島根県江津市、香川県満濃町の3つの事例を取り上げた後、そこでの事例に基づいて第三部で地域再生との関係について論ずるという構成。 事例を見ると、関係人口を...
第1部が理論編で概念規定を行う。関係人口とは「特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者」と定義する。 第二部で島根県海士町、島根県江津市、香川県満濃町の3つの事例を取り上げた後、そこでの事例に基づいて第三部で地域再生との関係について論ずるという構成。 事例を見ると、関係人口を、遠くにいて関わりを持ち続ける人と言うよりは、よそ者として現地に入って一定の活動した後、その地を去る人をイメージしている。 私自身の関心は、現地からは離れた場所から現代的なテクノロジーを通じて地域と関係を持ち続ける人と言うイメージであったので、そこは少しスコープの違いがあった。
Posted by
地域再生の主体として、最近取りざたされている「関係人口」。「定住人口」でもなく、「交流人口」でもない。本書では「特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者」と定義、その群像と地域再生に果たした役割を3つの事例から紹介する。 一つは島根県海士町における島前(どうぜん)高校を復活さ...
地域再生の主体として、最近取りざたされている「関係人口」。「定住人口」でもなく、「交流人口」でもない。本書では「特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者」と定義、その群像と地域再生に果たした役割を3つの事例から紹介する。 一つは島根県海士町における島前(どうぜん)高校を復活させた高校魅力化プロジェクト。中心人物は東京都からIターンしてきた岩本悠氏。彼と地元の役場職員や教員がコラボして、都会ではできない経験や進路を実現しやすい環境という打ち出しで、島留学を増やし、廃校寸前の高校を蘇らせた。 二つ目は島根県江津市で起業人材を呼び込むビジネスプランコンテストをきっかけにシャッター通り商店街が蘇った事例。ここでは、地域住民がコンテストを立ち上げ、それに応募した田中理恵氏が移住、NPO法人の設立に関わった。その動きが駅前の空き店舗活性化につながった。 三つ目の事例は香川県まんのう町の最奥に位置する旧琴南町川奥地区における限界集落対策。ここでは、徳島大学の准教授・田口太郎氏発案の転出子の懇談会が発端となり、彼らのネットワークを通じて災害時の安否確認がシステム化されるなど、高齢者が安心して暮らせる環境づくりが整いつつある。 それぞれの事例を集約すると①関係人口が地域課題の解決に動き出す②関係人口と地域住民の間に信頼関係ができる③地域住民が地域課題の解決に動き出すというステップを踏んでいることがわかる。 また、①地域において解決すべき課題が顕在化する②地域課題と自身の関心が一致する地域外の主体つまり関係人口がその解決に関わる③関係人口の影響を受け地域住民が新たに地域再生主体として形成されていく④顕在化した地域課題が創発的に解決されるという地域再生のプロセスが見えてくる。 さらに、本書では関係人口がもたらす効果として、①地域の再発見効果②誇りの涵養効果③知識移転効果④地域の変容促進⑤しがらみのない立場からの問題解決を挙げ、これらを3つの事例の中で分析している。 学術書ではあるが、事例はわかりやすく、関係人口も地域住民もお互い地域課題に直面して悩みもがき、ぶつかり合いながら学び変容していく人間ドラマとして読める要素もあった。 読み終えて、地元関係者がいかに地域課題に気づくか、適任となる関係人口とのマッチングができるか、参画して学び変容できる地域住民がいるか、このあたりが地域再生のキーポイントであるような気がしている。
Posted by
関係人口界隈ではお名前をよく拝見する山陰のジャーナリスト田中輝美さんが大阪大大学院での研究を著書にされている。 これまでの関係人口の流れや、それぞれの方がどういった分類やフレームワークを形成されたのかが分かり面白く読ませていただいた。 特に面白かったのは、具体的な事例として紹介さ...
関係人口界隈ではお名前をよく拝見する山陰のジャーナリスト田中輝美さんが大阪大大学院での研究を著書にされている。 これまでの関係人口の流れや、それぞれの方がどういった分類やフレームワークを形成されたのかが分かり面白く読ませていただいた。 特に面白かったのは、具体的な事例として紹介されている3つのうちの1つ、香川県まんのう町の話。いわゆる地方創生成功モデルのきらきらした話ではなく、集落の終わりも見すえながら、しかし残った人たちをどう支えるか、という観点で転出した子供たちのネットワークを活用して体制を作っていくという話は多くの地域で参考になる事例だと感じた。検索してもあまり出てこないのは、やはりキラキラ事例ではないからかと思うが、日本全体が人口減少している中ではまさにこういった「限界まで元気な地域・集落づくり」が求められてきているのだと思う。
Posted by
- 1