春のウサギ の商品レビュー
とても繊細でこまやかな物語。 1999年の春休み、12歳のアミーリアは、ほんとうはフロリダに行きたかったのに、英文学教授の父がちっとも話に乗ってくれないので、つまらない思いをしながらも、近所の陶芸教室にかよいます。 アミーリアは2歳のときに母を亡くしていて、しかもいちばんの親友...
とても繊細でこまやかな物語。 1999年の春休み、12歳のアミーリアは、ほんとうはフロリダに行きたかったのに、英文学教授の父がちっとも話に乗ってくれないので、つまらない思いをしながらも、近所の陶芸教室にかよいます。 アミーリアは2歳のときに母を亡くしていて、しかもいちばんの親友がフランスへひっこしてしまったばかり。ゆううつな気持ちでいたとき、陶芸教室で新しい友だちと出会い、また不器用な父の愛情をたしかめることになる出来事に遭遇します。 陶芸教室の粘土の感触が伝わってくるような。たよれるものが何もなくなってしまったアミーリアの生活のなかで、粘土をこねてウサギを作るというのは、目の前の世界とのたしかなつながりを表しているみたい。 作品中には「イースター」という言葉はたしか出てこなかったと思うけれど、やはりこの春の時期でウサギといえばイースター。家族の再生の物語を象徴しているように思えます。 アミーリアにとって、もうひとつたしかな、たよれる存在は、物心つかないころから通いでめんどうを見てくれているオブライエンさん。近所の家の女性なのですが、もう家族のよう。 そうなると、物語の展開上、オブライエンさんの今後も気になってしまうのでした。年齢が書いていないからなあ。これからもお手伝いさんとして通ってくれるのかな。
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フロリダに連れていってくれないお父さんにも、「かわいそうね」という言葉にも、むしゃくしゃしたアミーリアは陶芸工房に出かけた。 粘土を触って何かを作り上げることが大好きなのだ。 ところが癒やしの空間に今日は見知らぬ男の子ぎいる。陶芸の先生の甥っ子さんなのだという。 ぎこちなかった二...
フロリダに連れていってくれないお父さんにも、「かわいそうね」という言葉にも、むしゃくしゃしたアミーリアは陶芸工房に出かけた。 粘土を触って何かを作り上げることが大好きなのだ。 ところが癒やしの空間に今日は見知らぬ男の子ぎいる。陶芸の先生の甥っ子さんなのだという。 ぎこちなかった二人ですが、お昼にカフェで道行く人に名前と物語を考えるゲームを通して仲良くなります。 〇親との死別、離婚、再婚。その子を大切に一人前の人間として扱い、そのことを言葉にしてくれる大人の存在。 〇物語は緩急をつけて進んでいく。こうなったらいいなという読者の淡い期待を裏切りながらも、この子たちはきちんと大人たちに大切にされて成長していくんだろうなあという安心感があった。
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アミーリア12歳。 春休みには、クラスのみんなみたいにフロリダへ遊びに行きたいと思っていた。 英文学教授のお父さんは、旅行なんて苦手で、いつも憂鬱で悲しそう。 お母さんはアミーリアが2歳の時に死んだので、とくに思い出もない。でも、オブライエンさんという女性がいつもそばにいて、最高...
アミーリア12歳。 春休みには、クラスのみんなみたいにフロリダへ遊びに行きたいと思っていた。 英文学教授のお父さんは、旅行なんて苦手で、いつも憂鬱で悲しそう。 お母さんはアミーリアが2歳の時に死んだので、とくに思い出もない。でも、オブライエンさんという女性がいつもそばにいて、最高のマフィンを焼いてくれる(お母さんの妹だ) 結局春休みはいつも通っている近所の陶芸教室で過ごすことになるのだが、そこに遊びに来ていた男の子、ケイシーと心を交わしていく。彼もどこか傷を抱えていて、普通の人みたいにアミーリアのことを「かわいそうに。」とは言わない。そしてケイシーとの遊びのうちに、お母さんの幻影のような人に出会ってしまう。その人は実は… 物語の合間に、素敵なエミリ・ディキンソンの詩の引用があったり、オブライエンさんの作ってくれる匂い立つようなマフィンやケーキの描写、陶芸教室で作るウサギの置物や、登場人物の着ている服まで、作者が絵本作家でもあるせいか、とっても彩やかに描かれ、目に浮かぶよう。 結局エイミーの春休みは、フロリダなんかに行くよりも、忘れられない素晴らしいものになる。 なかなかチャーミングな作品でした。中学生くらいの子たちにぜひおすすめしたいです。 面白かったのが、舞台背景が1999年だってこと。ケイシーは2000年問題をとても気にしているんです。 それから、パリやエッフェル塔も素敵なお話のエッセンスになって登場します
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