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〈アメリカ映画史〉再構築 の商品レビュー

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2022/02/11
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ロバート・クレイマーの映画二本を生意気にも見に行ったときに、これをどうしたらいいのか、ととまどったものだ。小さな出版社からその足跡をたどる本が出ていたが、店頭でページをめくって断念した。ニューレフトどころか映画の本自体ほとんど読んでいなかった私にはマニアックすぎた。本のタイトルは「ロバート・クレイマー 1964/1975—ヴェトナム戦争時代のニューレフトとラディカルシネマ」。書いたのは本書の作者遠山純生。もう10年も前。 遠山氏はパンフレット、ライナーノーツなどで丁寧な仕事を残してきた。待望の単著なわけだが、、この厚さ、値段は予想外の大作。しかし内容は、とても読みやすく、映画批評にありがちな恫喝も教唆もなく、淡々と細い(と私が思っていた)ある種の映画の水脈をたどっていく。 本書は20-30年代の左派映画人からジョーズ(75)あたりまで貫く一つの軸を見立てて時系列にたどる。といっても15年かけたというだけあって、一息に読むのには難しい。そこで気になったところから読んでいった。 やはり60-70年代が気になった。つまり本のまんなかあたりから読み始めたわけだが。 ただのコント作家だったウディ・アレンに編集を教えたローゼンブラム。朝鮮戦争で来日して小津に感銘を受けたボブ・レイフェルソン、彼と組んでアイドル批評映画をでっちあげたバート・レイノルズのBBS快進撃、そして公民権運動とニューズリールの結成、BBSにならった独立系の興亡と実験映画の終焉。 そこからさかのぼりモンタージュ理論、ストランドなど読み進めると、とても簡潔にまとめられている。例によって作品のショット分析も豊富に収録している。 二段組719Pの大著だが、非常におすすめ。ハリウッド黄金期や赤狩り、またはジャンル映画、実験映画群や作家「だけ」を扱った本は数あれど、縦に貫くその射程と包摂量、読みやすさが素晴らしい。

Posted byブクログ