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ブート・バザールの少年探偵 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2024/02/11

読み終えるのにとても時間を要した。 インドの固有名詞などになかなか慣れないせいもあるかもしれない。 内容は、少年(子供)たちが活躍する話しかと思ったら、なかなか重い、インドの社会問題を描いたものだった。 インドという国に漠然と抱いていた印象以上に、現実は恐ろしいようだ。

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2023/05/06

恵まれた多くの人間は、世の中の悲惨さと向き合う責任があると考えています。これは現代インドにおけるひとつの悲惨さが詰め込まれた一冊。 自分の生活との乖離にこれが”現代”であることを認識するのが難しかった。 大部分は九歳の少年の目から描かれているため全体的にはポップな印象だが、要所要...

恵まれた多くの人間は、世の中の悲惨さと向き合う責任があると考えています。これは現代インドにおけるひとつの悲惨さが詰め込まれた一冊。 自分の生活との乖離にこれが”現代”であることを認識するのが難しかった。 大部分は九歳の少年の目から描かれているため全体的にはポップな印象だが、要所要所で純真だからこそ切れ味の鋭い訴えが読者の心をつかんで離さない。 2021年度エドガー賞最優秀長編賞受賞作。

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2022/11/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトルと表紙はかわいらしく、一見学生も読めそうな本、 しかしインド社会の闇をテーマに取り扱った、バリバリの社会派小説。 日本人からすると信じられないような、インドの子供達が直面するさまざま問題や堕落した警察事情が衝撃的。

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2022/09/19

スラムに住む9歳の少年・ジャイ。クラスメイトが行方不明になる事件が起こり、彼は友人と探偵団を結成して調査に乗り出すことに。しかし次々に新たな失踪者が増え、殺伐とした空気になっていくスラム。当てにならない警察、ヒンドゥーとムスリムの争い、そして格差社会。どうしようもない暗く淀んだ社...

スラムに住む9歳の少年・ジャイ。クラスメイトが行方不明になる事件が起こり、彼は友人と探偵団を結成して調査に乗り出すことに。しかし次々に新たな失踪者が増え、殺伐とした空気になっていくスラム。当てにならない警察、ヒンドゥーとムスリムの争い、そして格差社会。どうしようもない暗く淀んだ社会の中で、それでも前向きに行動する少年の姿を描いたミステリ。 少年探偵団もののようなどこかしらゆるくてほのぼのとした物語を思い描いていたら、まったく違いました。まず、インドのスラムの暮らしがひどい。衛生環境のひどさ、貧困、差別、何から何までまるで別世界です。そしてそのような貧困層の子供たちが行方不明になったところで、警察はまともに捜査もしてくれないという酷さ。日本では思いもよらないことだけれど、これが現実なのでしょうね。 ただし、そんな環境で暮らすジャイたちが不幸なのかというと、決してそんなこともなく。彼にとってはそれが当たり前の環境で、楽しいことや幸せがきちんとあって、大切な人たちもいる。「可哀相に」という目で見てしまうのは失礼ですよね。とはいえ彼もいつかは自分の環境の過酷さと、違う世界との格差を知ってしまう時が来るのだろう、と思えば、とても切ない気はしました。 物語自体は楽しいものではありません。随所に挿入された「この物語はきみの命を救うだろう」と冠された寓話のような断片が本当にわずかな救いとしか思えません。それでもジャイの視点から見た物語だからこそ、まだしも重くなりすぎずに済んでいるのかも。大人目線ではこれ、耐えられませんよ……。

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2022/02/18

インドのスラム街を舞台とした少年探偵ミステリー。インドのお話をきちんと読んだの初めてだったのですごい色々びっくりした。衛生状態めちゃくちゃ悪い。治安も悪い。とにかくひどい。このことを知れただけでも貴重な本 9歳の少年ジャイの目線で物語が進むんだけど、合間に入る三人称の物語がキツ...

インドのスラム街を舞台とした少年探偵ミステリー。インドのお話をきちんと読んだの初めてだったのですごい色々びっくりした。衛生状態めちゃくちゃ悪い。治安も悪い。とにかくひどい。このことを知れただけでも貴重な本 9歳の少年ジャイの目線で物語が進むんだけど、合間に入る三人称の物語がキツい。訳者さんのあとがきでもあるけど、作者のジャーナリストとしての視線がすごい反映されていて読んでいて苦しくなる。 でも、ジャイの視点は明るくて元気で、なんかまたそれがキツいよなぁ。 いやぁ、すごい物語だわ。

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2022/02/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ハヤカワミステリー文庫から出版されていること、エドガー賞の候補作、タイトル…それでもあえて先に言っておく重要な感想は、この小説は所謂ミステリー小説ではないってこと。そこを大きく期待してしまうと「で、オチは?」とのたまう無粋関西人のような感想を持ってしまうと思う。 既定のジャンル枠にとらわれず、現代インドのスラムの闇も病みも汚れをも、子供目線で照らしつける小説とだけ頭の隅に置いて読めば、この本にどっぷり嵌れると思う。 行方不明となった同級生を探す、無邪気な少年探偵団たちが次第に自信を失い、世界の無情にさらされ、ついには「僕はもう探偵じゃないから…」と言わせてしまう、なんともニヒルな成長譚。 描かれる背景には、カースト制度、宗教対立、貧困格差、衛生問題。スラム街のトイレは共同で(駅じゃなく各戸にトイレがない)朝は行列ができ、その待ち時間に人々はスマホを観る。そんな今のインド風景のリアルさ。 別世界のことだと思えるかも知れないが、日本だって1日に数人の子供が行方不明になっていて、トイレで飯を食う子がいたり、公衆トイレで不倫する芸能人の話題で視聴率が稼げる、そんな貧しさもすぐ目の前にある。もっと直視しないといけないと思う。 スラムであっても、大人たちが暗い世情を嘆いても、物語の中の子供たちは明るくしたたかに生きている。それが救いで読める本作。日本にもこんな子供たちがいれば未来はきっと明るいんだろうけど…この国って少子やねんなぁ。

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2022/01/21

スラムで起こった子供の連続失踪事件の真相を追い求めるべくテレビの探偵の真似事をする9歳の男の子の目線でインドの暗部が描かれています。といっても主人公は常に活発で腕白で、生き生きとした物語。ジャーナリストとして長年インドの貧困層の子供をとりまく教育問題などを取材していたというインド...

スラムで起こった子供の連続失踪事件の真相を追い求めるべくテレビの探偵の真似事をする9歳の男の子の目線でインドの暗部が描かれています。といっても主人公は常に活発で腕白で、生き生きとした物語。ジャーナリストとして長年インドの貧困層の子供をとりまく教育問題などを取材していたというインド出身の作者による作品です。ミステリーというより9歳の男の子の冒険譚と言った方が良く、謎解きやサスペンスを求める人には物足りないと思いますが、インドのリアルを描く書き物として素晴らしい一作。 本筋とは関係ないが、多数の食べ物の名前が出てくる。画像検索しながら読み進めていったらインド料理屋に駆け込みたくなること間違いなし。

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2021/12/04

ミステリーという枠ではないことだけはまず。 インドのスラムに生きる子供視点で描かれる、リアリティーのある話。毎日180人もの子供が消えるインドの、日常とも言える話。ただただ悲しく、やるせない。 日本に住んでいては想像もできないような生活がこの本には詰まっている。あとがきにもあった...

ミステリーという枠ではないことだけはまず。 インドのスラムに生きる子供視点で描かれる、リアリティーのある話。毎日180人もの子供が消えるインドの、日常とも言える話。ただただ悲しく、やるせない。 日本に住んでいては想像もできないような生活がこの本には詰まっている。あとがきにもあったが、そういった問題提起としての意味合いが強い。ニュースで出る数字の裏には、人の顔がある。まさにそういうことなのだ。 作品としては、子供視点なので思考、内容、セリフ回しに慣れるまではちょっと読みにくいかもしれない。最初からその姿勢でいけば問題ないだろう。

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2021/09/08

インドでは毎日180人もの子どもが行方不明になる。年間ではない。月間でもない。毎日である。その衝撃的な事実を基に、元ジャーナリストである著者が書いたのが本作。 雑多で混沌に満ちたインドのスラム社会を、探偵に憧れる少年ジャイの視点からリアルに、時にコミカルに描いた話題の作品である...

インドでは毎日180人もの子どもが行方不明になる。年間ではない。月間でもない。毎日である。その衝撃的な事実を基に、元ジャーナリストである著者が書いたのが本作。 雑多で混沌に満ちたインドのスラム社会を、探偵に憧れる少年ジャイの視点からリアルに、時にコミカルに描いた話題の作品である。作家の深緑野分さんがTwitterでべた褒めしているのを見て手にした。 主人公ジャイをはじめ、優等生の女の子パリやムスリムの少年ファイズなど、スラムに生きる本作の子どもは皆したたかで、たくましい。貧困問題、女性差別、宗教問題、そして誘拐事件…扱うテーマは複雑で重いが、暗くなり過ぎないのは、登場人物の彼らが希望を捨てていないからだろう。 とはいえ作中でジャイは少しずつ変わっていく。物語冒頭で持っていた根拠のない自信は、現実には何もできない自分を知ることで徐々に崩れる。大人になる過程で誰もが通る道筋だが、ジャイはかなりハードなステップを踏むことになる。 描かれるインド社会の現実も、物語の展開も、すべてが想像を超えていた。2021年のエドガー賞受賞作品。

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2021/08/31

あとがきにあった作者が伝えたかったものは、子どもたちの日常描写からよく伝わってきた。宗教上の対立、リンチ、誘拐、貧困など社会の様々な問題が子どもの視点を通して語られる。元気でちょっと生意気な子どもたち自身も、ときに無意識に差別をしてしまっていることも。 最終的にミステリーの謎が解...

あとがきにあった作者が伝えたかったものは、子どもたちの日常描写からよく伝わってきた。宗教上の対立、リンチ、誘拐、貧困など社会の様々な問題が子どもの視点を通して語られる。元気でちょっと生意気な子どもたち自身も、ときに無意識に差別をしてしまっていることも。 最終的にミステリーの謎が解けるのかと思っていたけど、解けないままなのが現実逃避をさせない感じだった。実際に警察が本気で捜査を全うするまで、毎日消える180人の子どもたちの行方はわからないままなんだと思う。 最近は早川書房の海外文学を通して英米以外の国の人々を描いた作品に触れることで、自分が知らなかった世界について知ることができて勉強になってる。

Posted byブクログ