『新青年』名作コレクション の商品レビュー
大衆娯楽雑誌なら、誌面に世相が反映されるのはなおさらのこと。各章末の編集後記にあたる記事にも如実に表れている。戦時中に掲載された作品群を読めば、当時の大衆読者のニーズの一端を窺うことができて面白い。『新青年』といえば探偵小説だから、かえって純粋な探偵小説ではない作品が印象に残った...
大衆娯楽雑誌なら、誌面に世相が反映されるのはなおさらのこと。各章末の編集後記にあたる記事にも如実に表れている。戦時中に掲載された作品群を読めば、当時の大衆読者のニーズの一端を窺うことができて面白い。『新青年』といえば探偵小説だから、かえって純粋な探偵小説ではない作品が印象に残った。『聖汗山の悲歌』(1940年)や『放浪の歌』(1950年)が。
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「未来望遠鏡」「印字電信機」は、約100年前に未来=現代のテレワーク・通信教育を予見している。新聞もネットの即時性に負けている様子、大学の講義がネット配信など的中している。古さより、他にも、文章に勢いが感じられる。「新青年」の名作アンソロジーである。
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『新青年』は、出版界の雄博文館から1920年に創刊され、1950年まで存続した雑誌である。 探偵小説ファンであれば、乱歩や甲賀三郎が登場して日本人作家による探偵小説の隆盛を招き、その後も夢野久作、小栗虫太郎、久生十蘭といった作家を輩出したことは良く知られていることだろう。 ...
『新青年』は、出版界の雄博文館から1920年に創刊され、1950年まで存続した雑誌である。 探偵小説ファンであれば、乱歩や甲賀三郎が登場して日本人作家による探偵小説の隆盛を招き、その後も夢野久作、小栗虫太郎、久生十蘭といった作家を輩出したことは良く知られていることだろう。 そうしたことに加え近年は、都会的マガジンとしてモダニズムの発信源となった点に光が当てられており、そうした方向に先導した、編集者としての森下雨村、横溝正史、水谷準等にも関心が寄せられている。 本書は、そうした『新青年』の多面的な魅力に関する研究を行なってきた『新青年』研究会により編まれたアンソロジーである。 30年に渡る歴史を横断的に通して、各時代の特徴的な作品が紹介されている。時局の推移により逼塞した作家の転身とみなされてきた(実際そうしたことはあったのだろうが)戦争もの、時代もの、冒険・秘境小説は、今回初めて知った作品がほとんどだったし、意外に面白く読めた。 本書の刊行時期に、神奈川近代文学館で『永遠に「新青年」なるもの』と題した展示会が開かれていたので見に行ってきた。各作家の自筆原稿や葉書・手紙のやり取り、挿絵画家の作品などがメインの展示物だが、圧巻は創刊号から最終号まで400冊に上る雑誌表紙をずらっと面展開した展示であった。もともと地方青年向けの雑誌として出発したことを窺わせる表紙デザインが女性の顔に、さらにスタイリッシュなものに、戦争の足音が近くなると軍事関係のものにと、時代の変化を如実に示している。 本書を出発点に、気に入った作家の他の作品群に分け入るのも良し、雑誌と時代との歴史的関係を考察するのも良し、いろいろな楽しみ方ができると思う。
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気にはなるが、中味がわからなくては、どうにも決められない、そう考える方々のために、目次のすべてを載せる。 今はまだ、私もぱらぱら見ただけだが、断言しよう。 これは必見、充実のコレクションである。 目次 はじめに――『新青年』研究と本書の編集方針 1章 探偵小説壇の成立...
気にはなるが、中味がわからなくては、どうにも決められない、そう考える方々のために、目次のすべてを載せる。 今はまだ、私もぱらぱら見ただけだが、断言しよう。 これは必見、充実のコレクションである。 目次 はじめに――『新青年』研究と本書の編集方針 1章 探偵小説壇の成立 誌面ギャラリー 1920~1926 田中支隊全滅の光景 ・・・・・・・・・・・・田所成恭 決闘家倶楽部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・エル・ジェイ・ビーストン、横溝正史訳 ニッケルの文鎮 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・甲賀三郎 代表作家選集? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・久山秀子 神ぞ知食す ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・城昌幸 毒及毒殺の研究 より ・・・・・・・・・・・・小酒井不木 編輯局より 2章 花開くモダニズム 誌面ギャラリー 1927~1932 白い襟をした渡り鳥 ・・・・・・・・・・・・谷譲次 追いかけられた男の話 ・・・・・・・・・水谷準 降誕祭 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・渡辺温 黄昏の告白 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・浜尾四郎 空を飛ぶパラソル ・・・・・・・・・・・・夢野久作 未来望遠鏡 より ・・・・・・・・・・・・平林初之輔、ムサシ・ジロウ 戸崎町より 3章 探偵小説の新展開 誌面ギャラリー 1933~1938 地獄横町 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・渡辺啓助 妄想の原理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木々高太郎 軍用鮫 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・丘丘十郎(海野十三) エメラルドの女主人 ・・・・・・・・・・・・蘭郁二郎 阿呆宮一千一夜譚 より ・・・・・・乾信一郎 編輯だより 4章 戦時のロマンティシズム 誌面ギャラリー 1939~1945 祖国は炎えてあり ・・・・・・・・・・・・・・・摂津茂和 聖汗山の悲歌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・中村美与子 クレモナの秘密 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・立川賢 血と砂 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小栗虫太郎 奇妙な佳人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木下宇陀児、茂田井武、久生十蘭、石黒敬七、橘外男 編輯さろん 5章 新時代の夢 誌面ギャラリー 1946~1950 山茶花帖 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・山本周五郎 不思議な帰宅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・稲村九郎(三橋一夫) 放浪の歌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木徹男 揚場町だより 補章 『新青年』ナビ 『新青年』の翻訳 『新青年』の科学記事 『新青年』の挿絵 執筆者紹介 --------------------------------------------------------------------- 誌面ギャラリーの図版は、県立神奈川近代文学館からの提供とある。 2021年3月20日~5月16日の会期でこの展示があるので、あわせれば、より『新青年』をたのしめるにちがいない。 『創刊101年記念展 永遠に「新青年」なるもの――ミステリー・ファッション・スポーツ――』 https://www.kanabun.or.jp/exhibition/13484/
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『新青年』創刊101年。 この雑誌の持つイメージは探偵小説と切っても切り離せないものがありますが、1920年(大正9)創刊から1950年(昭和25)まで、それぞれの時代に沿った「総合娯楽雑誌」としての『新青年』の姿が体験できるアンソロジー。 (ですので、新青年に掲載された名作探偵...
『新青年』創刊101年。 この雑誌の持つイメージは探偵小説と切っても切り離せないものがありますが、1920年(大正9)創刊から1950年(昭和25)まで、それぞれの時代に沿った「総合娯楽雑誌」としての『新青年』の姿が体験できるアンソロジー。 (ですので、新青年に掲載された名作探偵小説&海外ミステリ翻訳名作選・・・みたいな物を期待されると、そういう編集方針ではないのでご注意を) テーマ別コラムも充実、掲載作品はどれも面白く、さらに一つ一つに解説がついていて至れり尽くせりの一冊でした。
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