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水中で口笛 の商品レビュー

4.2

18件のお客様レビュー

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2024/11/30
  • ネタバレ

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積んでた歌集、やっと読めたー。 歌集の感想として楽しかったというのは変なのかな。 それでもやっぱり、楽しかった~! のびのびと自由で、可愛らしく素直で、時に無邪気に、時に切なく、時に艶っぽくて。 帯に「読み心地を例えるなら、ジェットコースターより銀河鉄道です」との文言があったけど、本当にそんな感じだった。 この歌集、大好きだ。 幾つかの歌をご紹介。 (たまらず私の勝手な解釈も添えて) 「夕暮れを先に喩えたひとが負けなのに負けたいひとばかりいる」 勝ち負けにしちゃってるところが青春だな~って。 ○○した方が負けね♪って発想は、若くないと出来ない気がする。 どんな喩えにも及ばないほど美しい夕暮れだったんだろうな。 それでもみんなが口々に言葉にしてしまうほどに。 「ガーベラもダリアも花と呼ぶきみがコスモスだけはコスモスと呼ぶ」 “きみ”にとってコスモスの花には思い出があるんだろうか? それとも、コスモスだけは覚えやすかっただけ? こんな些細な事に気付いてしまうほど、“きみ”の事が気になるんだろうな。 「まっさきに夏野原きて投げキッスの飛距離を伸ばす練習をする」 これ、可愛い。 それに爽やか。 まっさきに走って来たんだろうな。 「死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星形に出る国に生まれた」 平和な国だからこそ、星形に出そうなんて発想が浮かぶもの。 こんなところから程遠い国も沢山ある。 シビアな歌なのにどこかファンタジックに感じてしまうのは“星形”という言葉のパワーかしら。 「ほにほにと訛るわたしを東京のあなたは「かわいい呪文」と笑う」 かわいい呪文と表現した“あなた”って、素敵な人だなぁ。 「手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗」 お茶目な中にも、“あなた”への深い優しさや愛を感じる。 こういう表現、たまらんな~。 「いちご縦に切った断面ぬれていてちいさな炎の模様 せつない」 これもまたたまらない。 どう閉じるのかと思ったら、“せつない”ですって! くぅ~っ。 思い描いたこちらも、いちごの断面を見る度に切なく感じてしまいそう。 「まっすぐに歩ける蟹のものまねできみがこちらへまっすぐに来る」 笑った。 “きみ”がとってもキモ可愛い。 「中指とひとさし指を歩かせて背骨を山の名前で呼んだ」 これ、色っぽいしドキリとさせられたんだけど、この解釈で合ってるのかな。。。 貴方の裸の背中を中指とひとさし指でトコトコトコ…。 そういう深い間柄なのに、「○○さん」って名字で呼んだってことかしら。 「またいつか狂うのかもね押し花になっていらない栞の四つ葉」 どう読み込んだらいいのだろう…と思いながらドキリともする。 狂っていた頃もある恋愛の歌? それも、四ツ葉のクローバーの栞はもういらないと言う。 いらないといいながらも、“またいつか狂う”かもねって、ちょっと怖い。 仲がこじれちゃってるんだろうか。 はぁ...どれもこれもたまんないな~。 ご紹介させて頂きたい歌ばかりでキリがない。 沢山の短歌を並べてしてしまってゴメンナサイ 汗

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2024/06/20

ひとつひとつじっくりと、と言うよりは、サクサクと読み進めていたら、たまにドキリとするのに出会って立ち止まる、みたいなのの繰り返し

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2024/01/31

工藤さんの編み出す短歌からは、言葉の力をずんと感じる。クスッと笑ってしまうものもあれば、懐かしい景色が目に浮かぶものもあり。 あとがきを読んで、やはりこの方の文章が好きなのだと自覚した。 以下、特に好きだった歌。 死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星形に出る国に生まれた 工藤...

工藤さんの編み出す短歌からは、言葉の力をずんと感じる。クスッと笑ってしまうものもあれば、懐かしい景色が目に浮かぶものもあり。 あとがきを読んで、やはりこの方の文章が好きなのだと自覚した。 以下、特に好きだった歌。 死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星形に出る国に生まれた 工藤家の長女 はらぺこあおむしでいちばん好きなページはサラミ ほにほにと訛るわたしを東京のあなたは「かわいい呪文」と笑う 手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗 教科書の隅の63までも寒波に背中丸めています やわらかに四月の雲を膨らますこの口笛はみずいろの糸

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2023/11/11
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くどうれいんさんの歌集。エッセイも読んでいたので買ってみた。爽やかと言うには生々しい感じもあり、ほっこりと言うには卑屈な感じもして何と表現していいか分からない。そういう詠み手自身の感情や暮らしを(たぶん)飾らずにそのまま切り取っているところが魅力なのかもしれない。私は、「タンクローリーにシチューを詰め込んできみの家まで国道でゆく」が好き。

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2023/07/03
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高校時代から今までの短歌をまんべんなく収めたとのあとがきを読み、若くて眩しい短歌が多いことに納得した。光景が目に浮かび、姪っ子を眺めてきた叔母の気分になった。歌集より、 「火星人が金星人を口説くのを盗聴できた聴力検査」 「不老不死なんていやねとほほ笑んで祖母が漬けたる大きな梅干」 「それぞれの恋の写真のときおりにひらめいた顔しているわたし」 「働けば働くほどにうれしくてレモンジュースにレモン汁足す」 「納豆がわたしのために置いてあり食べずに仕舞う実家暮らしは」

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2023/04/28
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お気に入り5選 2023.4.28 ・ガーベラもダリアも花と呼ぶきみがコスモスだけはコスモスと呼ぶ(p15) ・かき氷だったピンクの水を飲み全部殴って解決したい(p22) ・首都直下地震がきたらおわりだねおわりだろうねあっふきのとう(p37) ・前髪から摘まみ取られる桜蘂わたしを選び続けてほしい(p84) ・発作のごとくあなたは海へ行くとしてその原因のおんなでいたい(p127) 特にp127はこの本を買うきっかけになった歌。

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2022/10/01

工藤さんの、10代の頃から歌い続けてきた歌を厳選して収録した歌集。 この歌はこんな時に歌われたんだろうな、と思いを馳せながら読んでも楽しい。 ユーモラスで、かわいらしくて、郷土愛と雪と海に囲まれて、時折どきりとする、でもこうして歌ってくれてありがとうと思える励まされる歌もあったり...

工藤さんの、10代の頃から歌い続けてきた歌を厳選して収録した歌集。 この歌はこんな時に歌われたんだろうな、と思いを馳せながら読んでも楽しい。 ユーモラスで、かわいらしくて、郷土愛と雪と海に囲まれて、時折どきりとする、でもこうして歌ってくれてありがとうと思える励まされる歌もあったりして。 どの歌も心地よかった。 たくさん備忘録かねて紹介したいなと思う歌はたくさんあるけれど、あんまり紹介しすぎるとこれから楽しむ人の楽しみを奪いそうなのでいっとう好きなのをいくつかだけ。 「雪降れば口を開け待つ 一生をながい動画と思って生きる」 「円グラフのその他のうすい灰色を見つめてしまう 燃えていたんだね」 「すごい角度で刺さったスイカだけ食べて季節からパフェ救ってあげる」 「地上に暮らすわたしのために地上だけ走ってくれる銀河鉄道」 「にんげんは二頁の本ひらかれるため閉じ閉じるためひらかれる」 「銭湯の富士山はじめてみてうれしい 岩手山だと思ってしまう」 「日々はゆくたとえばシャープペンシルの芯出すようにかちりかちりと」

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2022/08/05
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同郷の歌人、石川啄木の享年とおなじ26歳で初の歌集を出したいと願い、その願いを叶えた工藤玲音(くどうれいん)さん。 彼女の学生時代から社会人になった今までの厳選短歌を収録。 学生時代の短歌には校庭の埃っぽさや、昼間の教室のひかりに満ちているのに淀んでいる空気を思い出すような、普遍性ある懐かしさを感じる。おんなじ経験したわけじゃ決してないのにね。 だんだんと項をめくってゆくと、まるで若い女性の十年日記を内緒で読んでいるような、そんな気持ちになる。 恋の歌は初々しいものから生々しさ、烈しさを感じるものまであって、どきどきした。短歌ってエロいです。 工藤さんは上記したように啄木とおなじ岩手県盛岡市出身で、東日本大震災のことも詠っている。 ここからは気に入った短歌と感想です。トンチンカンな感想かもしれません。 夕暮れを先に喩えたひとが負けなのに負けたいひとばかりいる →どんな言葉も、本物の夕暮れに敵わないのにね。 夜の海 すこしあかるい黒が夜 暗くて濡れている黒が海 →比べてわかる黒色の世界。世界には同じ黒はひとつとしてない。 ガーベラもダリアも花と呼ぶきみがコスモスだけはコスモスと呼ぶ →どこでその花の名前を覚えたの?たぶん、好きだから気づく、私のあの人。 ふと見遣る運転席のきみの耳の穴底抜けに暗くて狭い →耳の穴とか鼻の穴とか口の穴とか、すべての穴はブラックホールに通じてる気がする。 ベランダに初夏を一匹飼っています ひかりのリードでひかりの小屋で →初夏のひかりはとにかく眩しい。ベランダの陽光で夏の訪れを知る。 ATMから大小の貝殻じゃらじゃらと出てきて困りたい →思わず、ほっこりとした笑いが漏れる。このATMが縄文時代の貝塚に通じていたらいいな。 ゴミ袋の中にぎっしり詰められてイチョウはついに光源となる →学校の校庭の大掃除でしょうか。ゴミとして捨てられ、焼かれる運命のイチョウの最後の輝き。 死はずっと遠くわたしはマヨネーズが星型に出る国に生まれた →マヨネーズが星型に出てくる不思議。平和でないと、その発想はないかもしれない。 無言でもいいよ、ずっと 東北に休符のような雪ふりつもる →なんて優しく、東北を想った短歌なんでしょう。無言でもいいよ、って一回言われたい。 南天が見当たらなくて盲目のまま窓際にいるうさぎ。 →難を転じる、という意味がある南天。うさぎの眼が開かれるのはいつになるのか。でも、日が当たってくれば溶けてしまうのね。 手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗 →居酒屋で好きな人の悩み事を相談されていたのでしょうか。こんなこと言ってくれると、泣いちゃうよね。 渋谷駅で降りるひとびとなんとなく冴えない顔でどこかうれしい →わたしだけじゃないんだね。心にモヤモヤを抱えているのは。 音楽はかたちなきものわたくしはかたちはあれど何もないひと →真ん中のひらがなが生きている。ほんと、わたしは自分て何もない人だなあ、と思う。 もっともーっとあるけれど、キリがないのでここまで。 最後に今のベストオブベスト短歌。 またいつか狂うのかもね押し花になっていらない栞の四つ葉 →恋は狂った状態なのですね。過去の苛烈な恋はカラカラに乾き、思い出になっている。ドライさが何とも言えず好きな一首です。

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2022/05/03

"訛ってないじゃんと言われて無理矢理に訛るときこのいらだちは何"(p.114) "二両目に乗ると三駅目で桑の実と葉が窓のすぐそばに来る"(p.120) "青森で不良になるのはむずかしい電車の吊り輪もりんごのかたち"(...

"訛ってないじゃんと言われて無理矢理に訛るときこのいらだちは何"(p.114) "二両目に乗ると三駅目で桑の実と葉が窓のすぐそばに来る"(p.120) "青森で不良になるのはむずかしい電車の吊り輪もりんごのかたち"(p.169)

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2022/04/10

2022,08(下京図書館) 著者をなんとなく40代くらいと思ってたけど読み進めてるうちに感性や表現がもっと若く同世代では?と思って調べたら1つ歳下やった 同世代歌人の詠む短歌かなり、好きかも

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